Live Report|BUMP OF CHICKEN  TOUR 2023 be there  2023年5月28日@さいたまスーパーアリーナ Live Report|BUMP OF CHICKEN  TOUR 2023 be there  2023年5月28日@さいたまスーパーアリーナ

Live Report|BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there  
2023年5月28日@さいたまスーパーアリーナ

全国11ヵ所を周ったBUMP OF CHICKENのアリーナ・ツアー“BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there”のラスト公演が、2023年5月28日にさいたまスーパーアリーナで開催された。今回は、そこで彼らが見せた熱くエモーショナルなステージの模様をお届けしよう。

文=伊藤雅景 写真=太田好治、立脇卓、横山マサト

綿密に組み上げた“バンプ流”のツイン・ギター・アレンジ

 開演予定時刻を少し過ぎた頃にオープニングSEが流れ、メンバーが会場中央に位置するサブ・ステージに登場。藤原基央(vo,g)が自身のアイコンでもあるTVイエローのギブソン・レス・ポール・スペシャルを高々と掲げると、歓声が沸き起こった。

 ライブの1曲目を飾ったのは、アリーナ・ツアーでは欠かさず演奏されてきた「アカシア」だ。幻想的なブルーの照明が会場を照らす中、増川弘明(g)がサンバーストのレス・ポールでクランチのアルペジオ・イントロを弾き始める。

 増川のハムバッカー・サウンドは、分厚さを持ちながらもシングルコイルのような透明感もある音色。聴感上は空間系エフェクトがほぼかかっていない、極めてドライな音色だったのだが、1音目からとてつもない存在感を放っていた。

 2曲目に演奏されたのは『jupiter』(2002年)収録の「ダンデライオン」で、カントリー調のスピーディなメイン・リフが楽曲を牽引していく。藤原が黄色のスペシャル、増川がサンバーストのレス・ポール……という同じ見た目の別モデルに持ち替えた影響か、ミドルがカラッとした『jupiter』や『ユグドラシル』(2004年)の頃を彷彿させる傾向のサウンドに。

左から藤原基央(vo,g)、増川弘明(g)。
写真は5月27日公演のもので、増川はフェンダー・カスタムショップ製のジャガーを手にしている。
左から藤原基央(vo,g)、増川弘明(g)。
写真は5月27日公演のもので、増川はフェンダー・カスタムショップ製のジャガーを手にしている。

 「ダンデライオン」で軽快なバンド・アンサンブルをくり広げたのち、増川がフィードバックを鳴らし始めた。“もしや……?”と思ったのも束の間、代表曲「天体観測」のイントロ・リフが刻まれる。

 面白かったのは、サビでのピッキング・スタイルが藤原と増川で異なっていたこと。この曲は基本的に藤原がコード・バッキング、増川がリード・プレイというギター・アレンジなのだが、サビでは2人がともにコード・ストロークを弾く。その際のピッキングが“藤原がアップ&ダウン”、“増川はすべてダウン”という分け方になっており、藤原のオルタネイトでのストロークで広がりやコード感を、増川のダウン・ストロークで“ドライブ感”や“スピード感”を担っているように感じた。

 ここで最初のMCタイムへ。話の中で“今弾いたフレーズは、今日はもう弾くことはないんだなあ”という増川の言葉があった。「天体観測」での細かなアレンジの作り込みに感心していたところ、1つ1つのギター・フレーズへの愛を感じてまたさらにグッときた。

ライブならではのアレンジで魅せたバラード

 そこからは「なないろ」、「透明飛行船」と続き、6曲目の「クロノスタシス」では2人がストラトキャスターに持ち替える。そこからのミドル・チューンを中心としたセクションでは、これまでと一転した煌びやかなクリーン・サウンドを響かせた。

 増川はボリュームやトーン・ノブ類を演奏中にもたびたび調節しており、ギター本体側の発音も細かく意識しているようだった。また、次曲の「Small world」では、なんと直井由文(b)がアコギを持ち、指でアルぺジオを爪弾くというサプライズも。

 ライブ中盤の8曲目に披露されたのは、暖かなアコースティック・サウンドが主体のバラード「魔法の料理 ~君から君へ~」。音源はアコギのアルペジオをメインに展開していくアレンジなのだが、ライブではエレキ2本体制で演奏。

 サビでの藤原のコード・ストロークは想像以上にガッツリ歪んでおり、増川はところどころでブルージィなリックを差し込みまくる……など、かなりロックな印象にリアレンジされていた。しかしそれでもなお、楽曲そのものの世界観や暖かさは一切失っていないところがさすがだ。良い意味で想像を裏切る、感動のパワー・バラードに“大化け”していた。 

増川弘明(g)。写真は5月27日公演のもの。
増川弘明(g)。写真は5月27日公演のもの。

 その空気感を引き継ぐように、『present from you』(2008年)のラストを飾るバラード「プレゼント」へと続く。この楽曲でもライブならではの細かいリアレンジが施されていたが、特筆したいのはギター・ソロ。

 もともとは2本のリード・ギターが掛け合いながら絡み合うソロなのだが、ライブでは増川がそのパートを1人で弾きまくるという“漢”なアレンジに。音源の左側から聴こえるパートが7、右側が3くらいの割合だったと記憶しているが、次にライブで聴ける機会があれば、さらに正確に分析してみたいところだ。

ファンとの絆を確かめ合ったエモーショナルなフィナーレ

 ツアーを振り返るMCを挟み、オーディエンスとの一体感を生んだ「新世界」、カッティグ・リフが印象的な新曲「SOUVENIR」が演奏された。続く「Gravity」は、増川によるストラトキャスターでのバッキングが印象的だった。ハーフ・トーンのようなクリアなサウンドがリバービーなストリングスと溶け合い、幻想的な音空間を作り出す。

 そこからは「窓の中から」、「月虹」、「HAPPY」とテイストの違う楽曲で緩急をつけながら、本編のラストに向かってボルテージを上げていき、ダンサブルな四つ打ちの「ray」で盛り上がりは最高潮に。ソロでは増川がセンター・ステージのど真ん中で弾きまくり、ギター・ヒーローっぷりが炸裂! ラストはバンプ屈指のバラード「supernova」を演奏。1音1音噛み締めるように歌う藤原のボーカルに観客のシンガロングが合わさり、ツアー・ファイナルにふさわしい全17曲の本編が終了した。

BUMP OF CHICKEN。左から升秀夫(d)、増川弘明(g)、直井由文(b)、藤原基央(vo,g)。
BUMP OF CHICKEN。左から升秀夫(d)、増川弘明(g)、直井由文(b)、藤原基央(vo,g)。

 アンコールでは「embrace」、インディーズ時代からの楽曲「ガラスのブルース」を披露。藤原はイントロとアウトロ以外はギターを弾かずに、マイクに魂を乗せアグレッシブに観客を煽りまくり、観客もそれに呼応するように歌声をステージに届ける。

 そこで増川、直井、升が退場し終了したかと思われたライブだったが、藤原が“もう1曲付き合ってもらえる?”と客席に呼びかけ、おもむろに「宇宙飛行士の手紙」を歌い出す。

 ほかのメンバーが急いでステージへ駆け戻り、藤原のメロディに続いていく。藤原が“行け増川!”と煽ると、スリリングなギター・ソロを披露。最後には増川がステージでへたり込むほどの、最高にエモーショナルなアンサンブルを聴かせてくれた。

 ファンへの感謝と、新曲のリリースを約束しライブは終了。結成から27年、メンバーが変わることなく活動を続けてきた彼らだからこそ生まれるバンド感と、4人それぞれの音楽にかける情熱が伝わる1日だった。