カッサヴ『カッサヴNo.3』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ|第25回 カッサヴ『カッサヴNo.3』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ|第25回

カッサヴ『カッサヴNo.3』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ|第25回

現代の音楽シーンにおける最重要ギタリストの1人、クルアンビンのマーク・スピアーが、世界中の“此処ではない何処か”を表現した快楽音楽を毎回1枚ずつ紹介していく連載。

今回の1枚は、カリブ海の島=マルティニーク、グアドループ出身のバンド、カッサヴの3rdアルバム。マークが夢中だと語るギタリスト、ジェイコブ・デヴァイユー(g)のディスコでファンキーなプレイが冴えまくる1枚。

文=マーク・スピアー、ギター・マガジン編集部(アルバム解説) 翻訳=トミー・モリー 写真=鬼澤礼門 デザイン=MdN
*この記事はギター・マガジン2023年5月号より転載したものです。

カッサヴ
『カッサヴNo.3』/1981年

太陽の下で歓喜する
フレンチ・カリビアン・ディスコ

79年に結成されたフレンチ・カリビアンのバンド、カッサヴの3rdアルバム。カリブ海に浮かぶフランスの海外県=グアドループやマルティニークで発祥の音楽“ズーク”を信条とし、現地の伝統音楽と欧米のポップスが融合した作風。アフリカンでとにかく陽気、かつディスコティックでファンキー! 80年代的なギター・サウンドのカッティングやソロも楽しめる。

このバンドのジェイコブ・デヴァイユー(g)に僕は夢中さ。

 彼らはグアドループとマルティニークという、カリブ海に浮かぶフランス領地のミュージシャンたちによって作られたバンドだね。

 ズーク(Zouk)というジャンルがあるんだけど、それは彼らが生み出したと言っていいと思う。まだこのジャンルが定まっていない頃から、彼らはこのご機嫌な音楽を模索して作り続けてきた。それがゆえに、このアルバムはたくさんの音楽からの影響を感じ取ることができるよ。その「ごった煮感」が魅力かな。

 簡単に説明するなら、“カリビアンなディスコ/ダンス・ミュージック”って感じ。カリブ海特有の明るいムードを持ちつつ、ディスコ/ファンク的に楽しむこともできるんだ。さらにジャズ/フュージョン的なエッセンスが混じってきたりもする。

 あと、演奏面でも学ぶべきところが多いよ。ベース・ラインなんかは凄く独特で、アメリカ的なスタイルの枠に囚われていないんだ。驚きの発見がいくつもあるけど、僕はいまだにどうやったらあんなものが弾けるのかわからないな。そして、ジェイコブ・デヴァイユーのリズム・ギターが素晴らしいし、ジャズ的なものも弾けるリード・プレイのセンスも見事だ。

 サウンドメイクの面でもアメイジングで、80年代っぽい香りがありつつ、グッド・サウンドをきちんと狙っている感じがするんだよね。彼は真っ先にフェイバリット・ギタリストに挙げてもいいほどの存在だね……あ、あとカッサヴはボーカル・メロディも普通に素晴らしいよ! まぁ、僕らは彼らに夢中ってことさ(笑)。

マーク・スピアー(Mark Speer) プロフィール

マーク・スピアー(Mark Speer) 

テキサス州ヒューストン出身のトリオ、クルアンビンのギタリスト。タイ音楽を始めとする数多のワールド・ミュージックとアメリカ的なソウル/ファンクの要素に現代のヒップホップ的解釈を混ぜ、ドラム、ベース、ギターの最小単位で独自のサウンドを作り上げる。得意技はペンタトニックを中心にしたエスニックなリード・ギターやルーズなカッティングなど。愛器はフェンダー・ストラトキャスター。好きな邦楽は寺内タケシ。