崎山蒼志の未知との遭遇 第29回:初海外ツアーにて 崎山蒼志の未知との遭遇 第29回:初海外ツアーにて

崎山蒼志の未知との遭遇
第29回:初海外ツアーにて

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

新たな視点が芽生えた気がします。

 年始に初めて、台湾、香港と、計2ヵ所の海外ツアーを回りました。スリー・ピース編成で、ベースはマーティ・ホロベックさん、ドラムはGOTOさんです。個人的には初海外だったこともあり、現地のムードや観に来て下さった方々との交流は、刺激に溢れた、かけがえのない経験となりました。

 台湾のどこか渇いた質感と、湿った空気、温かい人々。スクーターで街を移動する人のたくさんの数、夜市の雑多で楽しげな空気感。美味しいフード(牛肉麺、サツマイモの葉っぱの炒め物、肉まん、タピオカ……選びきれません)もたくさん食べました。会場だったTaiwan The Wallにて、どんな反応をしてくれるんだろうと、少しの不安と緊張があったものの、皆さん温かく迎えてくれて、反応がめちゃくちゃ良くホッとしましたし、心底胸アツでした。お客さんと話すと、アニメに書き下ろした「燈」をきっかけに知って下さった人もいれば、随分前から知って下さっていた人もいてびっくりしました。

 香港ももちろん初めてで、まず建物の高さと、その密集度に驚愕しました。日本では見られないような建築だったり、古さと新しさが混合していて、様々な時間が同時に流れているような都市だなと感じました。夜になるとギラついてくる街の様子も、まるでネットフリックスのドラマの世界みたいで素敵でした。

 香港もアテンド、ブッキングして下さった方々が連れて行ってくれたフードがめちゃくちゃ美味しくて、個人的に海老の小籠包は特に絶品でした。また、たまたま訪れたローカルな定食屋さんの、そこに集まる人々の朗らかな会話の様子。きっと集まる人々にとって憩いの場なんだろうなと、自分がよく行きつけている近所のラーメン屋なんかを想起しました。そういった場所に行けたことも良かったです。お客さんの反応も熱く、「燈」や「嘘じゃない」などのアニメ曲もそうですが、台湾同様に、バンド形態でよく演奏している「pale pink」や「プレデター」という曲のライブ・バージョンで盛り上がってくれたことも、凄く凄く嬉しかったです。

 ざっくりとした感想ですが、様々なことを感じ、自分の中に新たな視点が芽生えた気がします。本当に楽しいツアーでした。この経験を、言葉で細分化しすぎずに、ひとつひとつこぼさぬように、感覚に落とし込んでいけたらなと思います。関わって下さった皆さまに感謝です。

 初海外でしたので、120V以上の電圧でのアンプというものを、台湾と香港で初めて体感しました。特に香港は200V以上で、会場で借りていたのは現行のツイン・リバーブだったのですが、明らかに出音が太く、特に歪ませた音などわかりやすくリッチに聴こえました。エレキのメインで使用しているスクワイアのストラトのリアも、普段よりマイルドに心地よく鳴ってくれて、ギターのポテンシャルを垣間見た気がします。電圧以外は日本で行なったリハと同じ設定だったので(鳴りによる影響でアンプのツマミは多少変えていますが)、差がわかりやすかったです。フロントだと太すぎるぐらい。おもにセンターを使用していました。鳴らしていて気持ちが良かったです。未知との遭遇でした。

 また台湾と香港に行きたいですし、観光でも、それこそライブでも、ほかの国に行ってみたい気持ちが高まりました。タイ、イギリス、アメリカ、フィンランド、ブラジル……。行けたら幸せです。あと、いつか海外でレコーディングもしてみたいです。行けるように頑張ります。苦手だった飛行機も今回のツアーで少し慣れることができた気がします。とはいっても、少し時間が経ったらまた怖く思ってしまうかもしれません。怖くてどうしようもない時は、ゴスペルだったりR&Bの安定感がおすすめです。

現在のライブのメイン・エレキであるスクワイア製ストラトキャスター(SST-30)。83年製です。

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

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