イエスタデイズ・ニュー・クインテット 『アングルズ・ウィズアウト・エッジズ』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ|第34回 イエスタデイズ・ニュー・クインテット 『アングルズ・ウィズアウト・エッジズ』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ|第34回

イエスタデイズ・ニュー・クインテット 『アングルズ・ウィズアウト・エッジズ』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ|第34回

現代の音楽シーンにおける最重要ギタリストの1人、クルアンビンのマーク・スピアーが、世界中の“此処ではない何処か”を表現した快楽音楽を毎回1枚ずつ紹介していく連載。

今回の1枚は、マッドリブ(MADLIB)のプロジェクト、イエスタデイズ・ニュー・クインテットのインスト作、 『アングルズ・ウィズアウト・エッジズ』。マーク曰く“ファンキーかつヒップホップな感覚”という1枚。ちなみに、ギターはほとんど入っていない。

文=マーク・スピアー、ギター・マガジン編集部(アルバム解説) 翻訳=トミー・モリー デザイン=MdN
*この記事はギター・マガジン2024年2月号より転載したものです。

イエスタデイズ・ニュー・クインテット 『アングルズ・ウィズアウト・エッジズ』
/2001年

アシッド・ジャズとヒップホップを
融合させた小洒落インスト作

アメリカのアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンを代表するプロデューサー、マッドリブ(MADLIB)が“イエスタデイズ・ニュー・クインテット”名義でリリースしたインストゥルメンタル・アルバム。アシッド・ジャズとヒップホップを融合させたような小洒落た作風で、ラウンジのBGMのように聴けるとっつきやすさが魅力。

ファンキーでミステリアスなヴァイブ。僕もこういうバンドをやっていたよ。

 これは確かプロデューサーのマッドリブがやっているプロジェクトだよね。彼がほとんど1人ですべてのパートをプレイしているんだ。ちなみにギターはほとんど入っていない。もうあまり気にしないでおくれ。

 このアルバムにはブラジルのリズムによる影響があり、それと同時にアシッド・ジャズのカルテットのような印象も受ける。夜のラウンジでかかっていそうだよね。

 僕は地元のヒューストンで昔、友人のミュージシャンたちとこういったサウンドのバンドをやっていて、まさしくラウンジでプレイしていたことがあったんだ。サウンドもこのアルバムに近かった。だから親近感があるというか、単純に好みなんだ。

 このアルバムはファンキーかつヒップホップな感覚があって、ドラムなんてディアンジェロみたいで最高だね。キーボードはシンプルで無駄がないし、クールなベース・ラインもある。そして、リズム的にはかなりうしろノリだよね。タイム感をしっかり刻んだドラムに対して、ほかの楽器は大体うしろ気味になっている。程度の違いこそあれどね。その少々のズレが良いムードにつながっていると感じるよ。

 それから、このアルバムはかなりオープンな作風だよね。まるで自宅で録音したような感じだから、それがまた1つの魅力となってミステリアスなヴァイブをもたらしている。全体的にモヤがかったような雰囲気がとてもクールなんだ。そこがこのアルバムの好きなところでもあるよ。

マーク・スピアー(Mark Speer) プロフィール

マーク・スピアー(Mark Speer) 

テキサス州ヒューストン出身のトリオ、クルアンビンのギタリスト。タイ音楽を始めとする数多のワールド・ミュージックとアメリカ的なソウル/ファンクの要素に現代のヒップホップ的解釈を混ぜ、ドラム、ベース、ギターの最小単位で独自のサウンドを作り上げる。得意技はペンタトニックを中心にしたエスニックなリード・ギターやルーズなカッティングなど。愛器はフェンダー・ストラトキャスター。好きな邦楽は寺内タケシ。