崎山蒼志の未知との遭遇 第31回:アルペジエーター・ペダルとの遭遇 崎山蒼志の未知との遭遇 第31回:アルペジエーター・ペダルとの遭遇

崎山蒼志の未知との遭遇
第31回:アルペジエーター・ペダルとの遭遇

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

今あるエフェクター全部試したい……

 新しいエフェクターを買いました。好きなバンドのギタリストのペダルボードにあったことから、気になっていたBANANANA EFFECTS。最近デジマートやYouTubeで製品を調べていたら、TARARIRAに辿り着き、そのキュートな見た目と音に心打たれ、すぐに試奏して購入を決意しました。

Bananana Effects/TARARIRA

 TARARIRAは、アルペジオ(分散和音)を自動的に再生するアルペジエーター・ペダル。ですが単にそれだけに留まらない、機能性に溢れた個体です。あまりにできることが多すぎるため、まだその全貌を演奏者として掴めた訳ではありませんが、そのたくさんの機能の中から、現状のお気に入りの機能など、一部抜粋して感想を書けたらと思います。

 まず、調整が可能な8ステップのシーケンサーが搭載されています。基本的にツマミをタップし、動かすことで、様々な操作をすることができるのですが、シーケンサーもそれで調整ができ、常にディスプレイでシーケンスの動作状況を見ることができます。和音入力にも対応し、たくさんのスケールを利用できます。変拍子にも対応。人力では再現不可能な、かっこいいシンセ的なアプローチのフレーズをバンバン作成できますね。BPMも400まで設定でき、DAWと同期させることもできます。ランダムでシーケンスを再生することもできるようです。

 MODEは8つあり、中でも個人的に好きなのはSQUAREと、GLITCHです。SQUAREは8bitなベースっぽいサウンドでアルペジエートしてくれます。ワイルドなリフを作りたい時に重宝しそうです。サイバーなファンクとか、ロックっぽいアプローチにめちゃくちゃ合いそうですね。

 GLITCHは、入力された音を短い感覚でサンプリングし、8つの異なる再生速度で(かつリバースしたりして)、シーケンスするモードらしいです(アバウトな説明ですので、細かくは公式ページをご覧下さい)。個人的な音の印象としては、Chase Blissのペダルなんかにも感じる、キラキラっとした、乱反射のような。特殊効果的にも使えますし、楽曲のアレンジにも多用できそうです。他のMODEも奥が深すぎて、まだまだ格闘中です。SEQUENCE FXもありまして、より細かく、美しく、壊れた演奏ができそうです。

 先ほど軽く触れたのですが、このペダルはMIDIも対応していますし、EXPも繋げることができます。それだけでもむちゃくちゃ遊び方がありそうですよね。またシーケンスが保存できたりとか、TACTSの機能とか、TOUCH KEYとか……! 複雑ですが、細かな設定でやばそうなことができそうすぎて、わくわくします。ですので、ひとつひとつの機能を押さえていくことも大切そうですけれど、個人的には何より触って、まずは感覚的にどんどん楽しんで掴んでいけたらと思っています。狙ったこともピンポイントにできるし、偶然から多くのインスピレーションを貰うこともできる、そういうペダルだと思いました。わからなくても、新鮮さに満ちた良い音が飛び出てくるから、凄く楽しいんです。もっともっとこのペダルと仲良くなっていきたい所存です。

 こうやって、革新的な機材から刺激を貰い、その流れで制作だったりをしていくことは、明らかな外部刺激なようで、これまでの自分の内側の音楽体験の点と点が繋がっていくような感覚、出来事でもあって不思議です。もう気持ちとしては、今あるエフェクター全部試したいくらいです……。

 あと、プラグインだったり、サンプルもいっぱいある現代ですが、僕は実機が大好きです。それって手にとって触って楽しめることが本当に大きくて、あと現物の立体感、デザインだったり、それを所有する感覚が好きなのだと思います。かさばったりすることもチャーミングですし、そのひとつひとつの機材には宇宙のようなポテンシャルがあって、まるで玉手箱みたいです。この楽しさを忘れずにいたいです。

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

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