ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト エリック・クラプトン(後編)〜黄金のプレイ・スタイル形成 ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト エリック・クラプトン(後編)〜黄金のプレイ・スタイル形成

ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト 
エリック・クラプトン(後編)〜黄金のプレイ・スタイル形成

エリック・クラプトンのブルースブレイカーズ在籍期は、のちの長いキャリアの土台となる“クラプトン・マナー”の骨子が形成された飛躍の時代。つまりギター・スタイル形成の面でも大きな意義のある、実り多き期間であった。

文=安東滋 Photo by Getty Images

ギタリストとしての力量を昇華させたブルースブレイカーズ時代   

エリック・クラプトンがジョン・メイオール師匠のもとでブルース修行を積み、当時のギター・プレイが記録された大名盤が『Blues Breakers With Eric Clapton』(1966年/「必聴アルバム5選」参照)である。

クラプトンがブルースブレイカーズに在籍していた時の唯一のスタジオ録音フル・アルバムで、本作に収録された全12曲の中には嬉々としてブルースを弾きまくる若き日のクラプトンのフレッシュな姿が生々と刻み込まれている(ポップ志向に傾いていたヤードバーズを脱退し、ブルースを思いっきり演奏することに飢えていた当時のクラプトンだから当然といえば当然だが……)。

流麗に綴るフレージングの連鎖、絶品のチョーキング・ビブラート、自信に満ちた安定感抜群の節回し、そして太く伸びやかなギター・トーンなど、世界中のブルース・ファンの耳を惹きつけた堂々の演奏で、“英国のNo.1ギタリスト=エリック・クラプトンここにあり!”を強く印象つけた。

今改めて同盤を聴き返してみると、正統的なブルース・マナーを踏まえた端正なフレージング、安定感のあるプレイ・キャラクターなど、後のEC節の骨子となるプレイ・フィールが、この段階でほぼ完成されている印象を受ける。つまり上記アルバム録音時の21歳の時点で、のちのロック・ギターの指針ともなる王道的なプレイ・スタイルをすでに身につけていたということだ。

伝説となった絶品のオーバードライブ・トーン  

ブルースブレイカーズ期のクラプトンを語るのに欠かせないもう1つのキーワードが、太く伸びやかに発音される絶品のギター・トーン。当時の愛器、1960年製レス・ポール・スタンダードとマーシャル・アンプ(Model 1962/通称“Bluesbraker Combo”)のコンビネーションによる、その太くナチュラルに歪んだ極上のオーバー・ドライブ・サウンドは、当時の英国ブルース・ギタリストたちの耳に深く刻み込まれ、後年のロック・サウンドの雛形ともなっていく。

後任のピーター・グリーンしかり、ミック・テイラーしかり、このハムバッカーのドライブ・トーンは、当時の英国ブルース・シーンを語るうえではずすことのできない必須アイコンだ。

エリック・クラプトン
エリック・クラプトン

ちなみにマニアの間では、当時のクラプトンが発音するミドル・レンジが際立つ音立ちの良いトーン・キャラクターから、上記のセットアップの間にトレブル・ブースター(Dallas製Rangemaster Treble Booster:註)をかましていたという考察も定説。ちなみに、上記の60年製レス・ポールはクリーム期の初ジャム・セッション後に盗難にあっている。 

註:“トレブル・ブースター”というネーミングではあるが、実際は(高音域を強調するのではなく)ミッド・ブースト&ロー・カットを特性とする古典的なエフェクター。

実り多きブルース修行への回想と感謝の念

時系列でみると、クラプトンのブルースブレイカーズ在籍期間は1965年4月の加入から66年7月の脱退まで、わずか1年3ヵ月間であった。しかし、ジョン・メイオール師匠のもとでブルース修行をし、ギター・プレイの基盤を作りあげ昇華させていった、充実したステップ・アップ期間であったと言えるだろう。

前述したように、同時代の高評価により、クラプトンは英国ブルース・シーンの頂点へと一気に駆け上がっていく。クラプトンにとっての実り多き飛躍の時代となったのも、その影にはブルースブレイカーズの活動の中でクラプトンの才能を伸ばし、見事に開花させたジョン・メイオールの手腕と助力があったればこそ、と言えるだろう。

2024年7月、ジョン・メイオールの逝去を受け、クラプトンが感謝の念を綴る回想コメントを発表している。

私がまだ若かった18歳か19歳の頃、音楽を辞めようと思っていた時に彼は私を見つけて家に連れて行き、バンドに入らないかと誘ってくれた。

私は彼のもとにとどまり、テクニックや自分が好きな音楽を演奏したいという気持ちの面で、今日の私が本当に考えなければならないことをすべて学んだ。彼の家で、彼のレコード・コレクションで、彼が専門だったシカゴ・ブルースの研究をした。そして彼のバンドで数年間演奏した。素晴らしい経験だった。

彼は私の良き師であり、父親代わりでもあった。彼は私が知っていることをすべて教えてくれたし、恐れず、制限なく自分を表現する勇気と熱意を与えてくれた。心から感謝したい(要約)。