ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト ミック・テイラー(前編)〜クラプトンから享受したプレイ・エッセンス ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト ミック・テイラー(前編)〜クラプトンから享受したプレイ・エッセンス

ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト 
ミック・テイラー(前編)〜クラプトンから享受したプレイ・エッセンス

1967年7月、ピーター・グリーンの脱退を受けて、ジョン・メイオールはブルースブレイカーズの後継ギタリストに若き“天才少年”、ミック・テイラーを指名する。英国ブルース系ギタリストとしての王道を歩むサラブレッド・プレイヤーの鮮烈デビューである。ちなみにミック・テイラーは(1949年1月生まれなので)加入時18歳! 

文=安東滋 Photo by Getty Images

天才少年、名門ブルース・ブレイカーズに加入

ミック・テイラーのブルースブレイカーズ加入経緯にも興味深いエピソードがある。16歳のある日、ミック・テイラーは地元で開催されたブルースブレイカーズのライブを観に行ったが、同日なぜかエリック・クラプトンはステージ上に登場せず、ギタリスト不在のまま1stセットが終了。そこでミック・テイラー少年は“僕に弾かせてくれませんか?”とジョン・メイオールにかけ合い、続く2ndセットで見事なギター・プレイを披露し、クラプトンの代役を見事に果たしたという。

ジョン・メイオールは、その紅顔の美少年が披露した見事な演奏っぷりに驚いたが、連絡先を聞くのを失念。後年この時のことを回想し、“ピーター・グリーンの後継ギタリストを探すオーディション会場でミック・テイラーの姿を見つけた時は本当に嬉しかった”と語っている。

この飛び入りギグでの秀逸な演奏がジョン・メイオールの脳裏に刻まれ、それがブルースブレイカーズの正式ギタリストの指名につながったという経緯だ。

ミック・テイラーはそこから王道のプロ・キャリアを順調に歩んでいくこととなるが、後年に次のようなコメントを残している。

“当時の多くの才能あるギタリストたちがいつの間にか消えてしまった。彼らには名門ブルースブレイカーズに参加するというキャリアがなかったからね。僕にとっては、それが間違いなく大きなことだった”。 

左からミック・テイラー、クリス・マーサー、キース・ティルマン、キーフ・ハートリー、ディック・ヘックストール=スミス、ジョン・メイオール。(Photo by Ivan Keeman/Redferns)
左からミック・テイラー、クリス・マーサー、キース・ティルマン、キーフ・ハートリー、ディック・ヘックストール=スミス、ジョン・メイオール。(Photo by Ivan Keeman/Redferns)

“クラプトン小僧”のキャラ全開!

9歳でギターを始めたというミック・テイラー少年は、アルバート・キングやフレディ・キングといった黒人ギタリストたちをアイドルとする一方で、バリバリのエリック・クラプトン信奉者であった。ブルースブレイカーズ期に残された音源を改めて聴き直してみると、安定感のある、なめらかなプレイ・フィール、淀みなく流れるパッセージ 、ゆったりと揺らす絶品のチョーキング・ビブラート、王道のブルース・フレーズをきっちりと弾く端正な節回し……など、その端々にクラプトンからの大きな影響を見つけることができる。当時の愛器、1959年製レス・ポール・モデルから弾き出す太いトーンもずばりクラプトン直系だ(後項参照)。

特にブルースブレイカーズ加入直後の第1作目アルバム『Crusade』(1967年/「必聴アルバム5選」参照)など、初期の演奏にはそのクラプトン・マナーが濃厚に発色する。筆者の耳には、“‘これはクラプトンが弾いているのでは?”と錯覚を覚える場面もあるほどだ。逆にとらえれば、そのキャリア初期の段階でそれほどの実力をすでに身につけていたということでもある。その王道ギター・プレイを土台とする確かな基礎力が、のちの成長とストーンズ期の名演へとつながっていく。 

ジョン・メイオール師匠との二人三脚  

ミック・テイラーは約3年間のブルースブレイカーズ在籍期間中に、シングル盤1枚と計4枚のフル・アルバム(正式リリース盤のみのカウント)に参加し、60年代後期のブルースブレイカーズの音楽性の構築に大きく貢献していく。ローリング・ストーンズ加入後の1971年にもジョン・メイオール名義の『Back To The Roots』にクラプトンやハーヴェイ・マンデルなどと共に客演。1982年にはブルースブレイカーズの再結成ツアーにも参加するなど、師匠ジョン・メイオールとは長きにわたり親密な関係性を築き上げていく。

ちなみにクラプトンは約1年3ヵ月のブルースブレイカーズ在籍期間で、シングル2曲と1枚のスタジオ録音アルバム(後年に発表されたミック・テイラー期とのライブ編集盤を除く/「必聴アルバム5選」参照)、ピーター・グリーンは約1年の在籍期間で6枚のシングル/EPと1枚のフル・アルバムという仕事量であるから、ミック・テイラーの貢献度はダントツだ。

これはジョン・メイオール師匠にそれだけ信頼され、若き愛弟子として寵愛されたという証でもあるだろう。ジョン・メイオールにとっては、16歳違いのかわいい息子のような存在ではなかっただろうか?