ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト ミック・テイラー(後編)〜出世街道を歩む! ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト ミック・テイラー(後編)〜出世街道を歩む!

ジョン・メイオールを支えた3名の英国レジェンド・ギタリスト ミック・テイラー(後編)〜出世街道を歩む!

ブルースブレイカーズでのジョン・メイオール師匠との蜜月時代を経て、ローリング・ストーンズ加入へとキャリア・アップしていくミック・テイラー。単なるブルース小僧の殻を打ち破り、その柔軟な音楽センスを開花させていく。

文=安東滋 Photo by Getty Images

柔軟なプレイ・スタイルの萌芽~ローリング・ストーンズへの橋渡し  

ミック・テイラーが加入していた1967年~68年あたりのブルースブレイカーズは2名のサックス奏者も加えたメンバー構成で、ジャズ的なサウンド指向も打ち出し、音楽性の面で試行錯誤を重ねていた時代。

ミック・テイラーも王道のブルース・フィールを土台にしながらも、フィードバック奏法やワウ・ペダルの使用など、伝統ブルースの枠組みを超えたサイケなギター・ワークにも挑戦していく。これらのアイディアは、おそらく師匠ジョン・メイオールからの提案も含まれているものと想像されるが、結果的にそれが単なるブルース小僧の殻を打ち破り、続くローリング・ストーンズ加入への新たな側面へとつながっていく。

また、『Bare Wires』(1968年)あたりから聴かれるスライド・ギターの伸びやかなパッセージにも注目したいところ。これはのちのローリング・ストーンズ期のスライド名演「Love In Vain」(ライブ盤『Get Yer Ya-Ya’s Out!』収録/1970年)の名パフォーマンスにつながっていく。

ちなみに、ブライアン・ジョーンズに代わる新しいギタリストを探していたローリング・ストーンズにミック・テイラーを推薦したのはジョン・メイオール自身。ブルースブレイカーズ在籍期に培った柔軟なプレイ・スタイルがあればストーンズの音楽性にも十分に対応できるはず、という考えがあってのことだろう。その展望どおりにミック・テイラーはストーンズの中でも柔軟なプレイ・センスを発揮していく。

59年製レス・ポールから弾き出す王道トーン

ブルースブレイカーズ期のメイン・ギターは、ビグスビー・トレモロ・ユニット付きの59年製レス・ポール・モデル。この銘器をオーバードライブさせた英国ブルース伝統のギター・トーンも当時の大きなアピール・ポイントだ。『Bare Wires』収録曲の中には、そのビグスビー・トレモロを使ったと思われる大波ビブラートを確認できる場面もある。

ミック・テイラー(Photo by Jorgen Angel/Redferns)
ミック・テイラー(Photo by Jorgen Angel/Redferns)

このギターについて面白いエピソードがある。この個体はもともとキース・リチャーズが所有していたもので、“6人目のストーンズ”とも称された鍵盤奏者イアン・スチュワート経由でブルースブレイカーズ在籍中のミック・テイラーの手に渡ったらしい。その59年製レス・ポールを誰が買ったのか知らなかったキースは、ミック・テイラーがストーンズに参加した際に抱えてきたこのギターを見て驚いたという。

まさにストーンズに加入すべくして加入したミック・テイラー!……この不思議な輪廻(?)を感じさせられる逸話だ。その直後、この59年製レス・ポールは盗難にあっている。