新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。
デザイン=MdN
※本記事はギター・マガジン2024年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
あんまり見かけないファズがある中で、AF-60 BeeGeeを見つけました。
ぶちぶちした、バイト感のあるファットなファズらしいファズが欲しいなと思っておりました。自分の所持しているファズが、軒並みミッドがあんまりない感じのファズで、しかもグリッチペダルっぽかったり、オクターバーやハーモナイザーが兼ね備えられていたりと、奇妙なものばかりなので、正当なファズを求め、起床してわずか1時間弱、楽器をメインに取り扱うセカンドストリートにやってきました。
その日は猛暑で、そんな暑さにもファズ気分を駆り立てられるように猛進し、セカンドストリートを目前にすると熱した体を急冷却する気持ちで突入しました。店の左奥にエフェクターコーナーがあったので、そのままの勢いで左折し、エフェクターの並ぶショーケースと対峙します。左上から順に見ていきます。
東京のセカンドストリートともなると、中々見たことないハンドメイド系のエフェクターが多く並びます。真ん中の棚にファズのコーナーはありました。現行のビックマフ(中古)だったり、ロシアンマフに気分が上がったり、ローランドのAF-100 BeeBaaなどあんまり見かけないファズがある中で、同じくローランドのAF-60 BeeGeeはありました。
店の、フェンダーのChampとストラトキャスターではじめて弾いた印象は、気持ちいい! まさに僕が求めていたアナログ感と、バイト感のあるファズで感動しました。トーンの効き方が特徴的で、結構極端にかかります。
10ですと、ザクザクしたディストーションっぽいサウンドで、8くらいで少しくぐもって、ファズらしいキレもありつつファットでバイト感あるサウンドになります。4〜1ぐらいでまた一段とくぐもって、もこもこしたサスティーンが伸びやかなサウンドになります。総じて、印象はビックマフっぽいのかなと思います。ただ“壁”感はあんまりありません。かつ、音の質感はどことなくトーンベンダーを思わせる時もあります。ビックマフとトーンベンダーの合いの子みたいです。
スイッチを押した時のホワイトノイズがのる感じも愛らしくて気に入っています。これは良いと思い、購入しました。見た目もかわいいです。シンプルなツマミと、ボードに組んだ時、浮き彫りになるでかさも気に入っています。
アコギにかけたファズがこのAF-60でした。
初めての現場は、買った当日でした。その日の夜、LINE CUBE SHIBUYAで行なわれたROTH BART BARONのライブ、“BEAR NIGHT 5”にゲストで出演する予定がありました。自曲の「燈」と、ROTH BART BARONの「極彩 | I G L (S)」で参加したのですが、「極彩 | I G L (S)」でアコギでソロを弾くことになって、その時にファズで弾いたらいいんじゃないかという提案を西田修大さんからして頂きました。
リハで試した時思っていたよりも良くて、その時は西田さんのファズを借りたのですが、当日、アコギにかけたファズがこのAF-60でした。このファズをライン回線のアコギにかけるのは少々ドキドキしましたが、思いのほか抜けの良い、違和感のない音が出て、これからもアコギの回線にファズを置いておこうかな、なんて思ったりしました。
リード・ギターを弾く現場でも導入しました。今、メインのエレキは83年のスクワイアの白いストラトキャスターで、オーバードライブからマッド・プロフェッサーのSweet Honey Overdrive、ブーストにアースクエイカー・デバイセスのPlumes、その次にAF-60となっていて、次にエレクトロ・ハーモニックスのQ-Tron、デス・バイ・オーディオのREVERBERATION MACHINEと続き、ボスのチューナーでツイン・リバーブに行く形になっています。Plumesをブースターとして使うのにハマっています。音がクッと立ち、高域がキラッとして、かつとてもまとまりのある音が出ます。AF-60も問答無用です。これから重宝していくでしょう。
著者プロフィール
崎山蒼志
さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。