連載:『Player』盛衰記 第5回|急増した70年代の来日公演(後半) 連載:『Player』盛衰記 第5回|急増した70年代の来日公演(後半)

連載:『Player』盛衰記 
第5回|急増した70年代の来日公演(後半)

2023年に惜しまれつつ休刊した音楽雑誌『Player』。楽器を扱う専門誌として『ギター・マガジン』とは良きライバル関係にあっただけに、その不在はやはり寂しい。音楽業界や楽器業界を盛り上げ、読者に大きな影響を与えたその偉大な55年に敬意を表して、元編集長の田中稔氏にその歴史を綴ってもらう。隔週更新。

文=田中 稔

第5回|急増した70年代の来日公演(後半)

 前回に続いて、70年代後半に行なわれたおもな来日公演を紹介しよう。70年後半は初頭とは比べものにならないほど多くの大物アーティストやバンドが来日し、日本のリスナーやアーティストに多大な影響を与えた。

[1975年]
・1月 ロリー・ギャラガー(5)
・1月 スティーヴィー・ワンダー(5)
・2月 ウィッシュボーン・アッシュ(5)
・3月 バッド・カンパニー(1)
・4月 クイーン(8)
・5月 スリー・ドッグ・ナイト(10)
・5月 グランド・ファンク・レイルロード(5)
・6月 フォーカス(6)
・7月 ルー・リード(4)
・9月 ステイタス・クォー(3)
・10月 ジョン・デンバー(1)
・10月 スージー・クアトロ(3)
・10月 エリック・クラプトン(7)
・11月(※ポール・マッカートニー&ウイングス来日中止)
・12月 ディープ・パープル(4)
・12月 クロスビー&ナッシュ(5)

[1976年]
・1月 ドゥービー・ブラザース(6)
・1月 リック・ウェイクマン(7)
・1月 フランク・ザッパ&マザーズ・オブ・インヴェンション(4)
・2月 イーグルス(6)
・2月 サンタナ(20)
・3月 ニール・ヤング(5)
・3月 クイーン(5)
・5月 スーパートランプ(2)
・6月 スージー・クアトロ(27)
・7月 アメリカ(4)
・10月 ウィッシュボーン・アッシュ(10)
・10月 バックマン・ターナー・オーバードライブ(4)
・11月 ステイタス・クォー(5)
・12月 リッチー・ブラックモアズ・レインボー(9)
・12月 トッド・ラングレンズ・ユートピア(4)
・12月 ベイ・シティ・ローラーズ(8)

[1977年]
・1月 レーナード・スキナード(5)
・1月 トム・ウェイツ(12)
・1月 ロビン・トロワー(5)
・1月 エアロスミス(7)
・2月 エンジェル(4)
・3月 ジャクソン・ブラウン(5)
・3月 KISS(9)
・5月 デイヴ・メイスン(7)
・5月 スージー・クアトロ(3)
・6月 ブライアン・フェリー(3)
・6月 ロイ・ブキャナン(9)
・6月 グレッグ・オールマン・バンド(6)
・9月 エリック・クラプトン(9)
・9月 ジャニス・イアン(8)
・9月 イアン・ギラン・バンド(6)
・10月 10cc(5)
・10月 リトル・リバー・バンド(3)
・10月 ロリー・ギャラガー(7)
・10月 リー・リトナー / ジェントル・ソーツ(渡辺貞夫)(8)
・11月 サンタナ(25)
・11月 フリートウッド・マック(4)

[1978年]
・1月 ブロンディ(5)
・2月 レインボー(16)
・2月 ボズ・スキャッグス(7)
・2月 ボブ・ディラン(8)
・2月 エレクトリック・ライト・オーケストラ(7)
・3月 ボニー・レイット(6)
・3月 KISS(5)
・4月 ビリー・ジョエル(2)
・4月 チープ・トリック(5)
・4月 スコーピオンズ(5)
・4月 ライ・クーダー(5)
・5月 テッド・ニュージェント(3)
・6月 ヴァン・ヘイレン(9)
・6月 レヴォン・ヘルム(7)
・7月 リトル・フィート(6)
・7月 ジューダス・プリースト(5)
・10月 ピーター・フランプトン(7)
・10月 イアン・ギラン・バンド(5)
・11月 エルヴィス・コステロ(5)
・11月 ジェネシス(6)
・11月 ウィッシュボーン・アッシュ(3)
・11月 ジェフ・ベック&スタンリー・クラーク(10)
・12月 デヴィッド・ボウイ(5)

[1979年]
・1月 キャメル(5)
・2月 ザ・ストラングラーズ(7)
・2月 ドゥービー・ブラザース(6)
・2月 ジューダス・プリースト(5)
・3月 アース・ウィンド&ファイアー(8)
・3月 ロッド・スチュワート(8)
・3月 リンダ・ロンシュタット(5)
・3月 ジャパン(5)
・3月 チープ・トリック(12)
・4月 ボブ・マーリー(6)
・4月 ロキシー・ミュージック(3)
・4月 ボストン(6)
・4月 クイーン(15)
・4月 トッド・ラングレン&ユートピア(4)
・5月 ジャーニー(5)
・5月(※AC/DC来日中止)
・5月 ビリー・ジョエル(2)
・5月 ザ・バーズ(5)
・6月 スコーピオンズ(4)
・6月 イーグルス(6)
・6月 UFO(3)
・7月 トーキング・ヘッズ(5)
・8月 XTC(3)
・8月(※ホワイト・スネイク来日公演中止)
・9月 シン・リジィ(5)
・9月 ヴァン・ヘイレン(7)
・10月 サンタナ(8)
・10月 ライ・クーダー(8)
・10月 ケニー・ロギンス(5)
・11月 マーヴィン・ゲイ(3)
・11月 ボニー・タイラー(1)
・11月 エリック・クラプトン・バンド(10)
・12月 ザ・ストラングラーズ(6)
・12月 リー・リトナー(2)

 印象的な公演として、78年のレインボー札幌公演を忘れることはできない。アーティストが登場するやいなや、5,000人の観客の一部が一斉にステージ近くに駆け寄ったことで将棋倒しとなり、19歳の大学生が胸部の圧迫により死亡するという痛ましい事故が起こった。以来、ロック系アーティストの来日公演では、席を離れ前方に駆け寄るなどの危険行為は厳しく禁止され、会場にはガードマンやスタッフの数が大幅に増えた。

 1970年代末になると、ブロンディ、デヴィッド・ボウイ、ストラングラーズ、XTC、ジャパンなど、時代を反映してニューウェーブ系アーティストの来日公演が頻繁に行なわれるようになった。当時ロック系アーティストはUDO音楽事務所、ポップス系アーティストはキョードー・トーキョーの招聘が多く、会場も次第に大きくなっていった。まだ東京ドーム(1988年開場)などの施設がなかった70年代は、世界的な大物アーティストが武道館などの会場を数日間使用することもあり、日本の音楽産業もマンモス化していった。

 海外の音楽シーンに続いて、次回は70年代の国内の音楽シーンに関して紹介しよう。

エマーソン・レイク&パーマーのカバーだが、インタビューはない。特集は「日本のフォークソング特集 その②」。
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テン・イヤーズ・アフター / プロコル・ハルムのジョイント・コンサートを意識したカバーだが、記事は……。
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72年に来日したジェスロ・タルをカバーにした『Y.M.M.』。1色刷りだが、黒とは限らず紺や茶色、赤もあった。
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『Y.M.M.』73年3月号のカバーは来日間近のイエス。この時はイエスにまつわる記事が掲載された。
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第6回|1970年代の国内音楽シーン>

プロフィール

田中 稔(たなか・みのる)

1952年、東京生まれ。1975年秋にプレイヤー・コーポレーション入社。広告営業部、編集部にて『Player』の制作を担当。以来編集長、発行人を経て1997年に代表取締役就任。以降も『Player』の制作、数々の別冊、ムック本を制作。48年間にわたり『Player』関連の仕事に深く関わった。現在フリーランスの編集者として活動中。アコースティック・ギターとウクレレの演奏を趣味としている。

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『Player』盛衰記