ブルースブレイカーズ期の王道プレイで高い評価を受けたピーター・グリーンだが、その真価を発揮するのは続くフリートウッド・マック期。ギタリストとしての本当の才能が開花する同期の演奏にこそ、ピーター・グリーンの真骨頂が鮮やかに発色する。
文=安東滋 Photo=Getty Images
グリーン節の萌芽~フリートウッド・マックへの飛翔
ブルースブレイカーズの活動の中で、ピーター・グリーンならではの個性も萌芽してくる。その好サンプルが、前記アルバムに収録されたピーター・グリーン作曲のインスト・マイナー・ブルース、「The Supernatural(神秘なる世界)」。
同曲でのダークな“泣き”が充満する重厚なソロ・プレイは、当時のピーター・グリーンの大きな看板となり、“マイナー弾きの天才”とも称されるようになる。そのプレイ・キャラクターが後年に開花したのが、フリートウッド・マック期の看板曲となった「Black Magic Woman」だ。
だが、ピーター・グリーンならではの個性という点ではブルースブレイカーズ期はまだまだ発展途上。プレイ・キャラクターが本当の意味で開花するのは続くフリートウッド・マック期だ。
同期の演奏を聴くと、簡素な音使いで味わい深いグッド・メロディを弾き出す……このグリーン節の真骨頂が鮮やかに浮かび上がってくる。たっぷりと歌う節回し、その間に挿入される効果的なスペース(ブレス感)、絶妙なピッキング・コントロールから生み出される豊かな発音ニュアンス……これらを包括した芳醇なモダン・スタイルを見事に完成させている。その意味で、ジョン・メイオール親方のもとで修行した約1年間は、本物のブルース・ギタリストとして成長していく糧となる必須の充電期間であったと言えるだろう。
愛器59年製レス・ポールと“フェイズ・アウト・トーン”
当時の愛器、1959年製レス・ポール・モデルから弾き出される豊潤なギター・トーンもブルースブレイカーズ期のトレードマーク。ハムバッカー搭載ギターをドライブさせて作る中音域をプッシュした太い音色……このクラプトンが提示した英国発のブルース・マナーを継承したサウンド作りも、同期のグリーン・スタイルを語るうえでの欠かせないツボだ。

その色気のある音色をさらに華やかに印象つけていたのが、前後のピックアップの位相を逆転させた“フェイズ・アウト・トーン”。独特の鼻つまみサウンドを生み出すこの音色は、続くフリートウッド・マック期の大きなトレード・マークともなった。ちなみに、これは彼自身が同楽器のメンテナンスの際にミスをして偶然にそうなったらしい(リペアの際にやらかしたのが逆に功を奏した?笑)。