神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校と、ギター・マガジンによるコラボ・セミナーとして、ソエジマトシキを迎えたスペシャル・ギター・セミナーが行なわれた。ネオソウルやソウル・セッションのシーンでアーティストとして絶大な支持を集め、YouTubeを通じた情報発信でも注目を浴びるソエジマが、未来のプロ・ミュージシャンを目指す同校の学生たちに向けて講義&レクチャーを行なう貴重な機会とあって、会場には熱気あふれる参加者が詰めかけた。ここではその特別セミナーの模様を詳細にレポートしていこう!
文=近藤隆久
音楽家としてのルーツから矜持まで語った
濃密なトーク・コーナー

トーク・コーナーでは、ソエジマのルーツとキャリアの歩みからスタートした。佐賀県で過ごした学生時代、通学の自転車で感じた葛藤から“早くこの土地を抜け出したい”と上京を決意したエピソードや、スタジオ・ミュージシャンを目指しつつも試行錯誤を重ねていた若き日のリアルなストーリーが語られた。
大きな転機となったのは、2018年末に本格始動させたYouTubeだったという。当初は自身が立ち上げたギター・スクールの宣伝目的からスタートしたというが、管理画面のアナリティクス分析に没頭していった当時をソエジマはこう振り返る。
“プレッシャーというよりは、一種の「YouTube中毒」のような状態でした(笑)。管理画面で動画の順位が表示されると「次はもっと良い動画を出さなきゃ」とゲーム感覚で駆り立てられて。最初は失うものが何もないので、夢中になって分析を繰り返していました”。
単なるギターのテクニック解説にとどまらず、長尺で視聴できるコンテンツなど、視聴者目線に徹底的に寄り添うものを構築していったソエジマ。その根底にある音楽家としての矜持とメッセージに、会場の学生たちは深く聞き入っていた。SNSで発信していくことの、現代における意味についてはどのように考えていたのだろうか?
“SNSは、自分の音楽やギター・プレイを、自分の身の回りの友達だけでなく、世界中に投げかけることができるプラットフォームです。そして、その反応が「自分の現在の実力」をリアルに突きつけてくれます。例えば自分でレコーディングをしてレコ発ライブを企画しても、身内しか来ないということはよくあります。それはそれでありがたいことですが、それが自分の現実の実力です。そこに身内以外の人が来てくれるようになるにはどうすればいいか。僕自身、最初はなかなか自分の音楽を社会に届けることができなかった時期がありましたが、その事実を受け止めたうえで、試行錯誤を始めました。どうすれば聴いてもらえるのか、様々な可能性を模索して、ソウルやセッションといった今のジャンルにたどり着いたんです”。

さらにソエジマは語る。
“自分の演奏や音楽の価値を社会や世界に投げかけ、問いかける。それがすべての始まりです。最初は少し目を背けたくなることもありますが、スタジオ・ミュージシャンであっても、プロの現場で「良い演奏だった、また呼ぼう」と思われるのは、まさにその価値を提供できているからです。とにかく自分の価値を社会に出し、それに対してどのような反応が返ってくるかを冷静に分析して改善していく。今は自分から発信しない限り、誰にも気づかれない時代です。だからこそ、自分のこだわりや音楽を泥臭く発信し、そこに共感してくれるファンを1人ずつ作っていく必要があります”。

アンサンブルを引き立てる音作りや
ポジショニングまで話が及んだ実践レクチャー
続く実践コーナーでは、手を挙げた学生がギターを手にしてステージへ登壇、「Feel Like Makin’ Love」と「Just The Two Of Us」という、ジャム・セッションの定番曲をモチーフにして、ソエジマと2人で直接音を合わせるデモ・セッションが行なわれた。
登壇した学生の演奏を聴いたソエジマは、その1人1人の演奏を賞賛すると同時に、的確なアドバイスを行なった。例えば、アドリブ・アプローチの質の高さを称賛しつつも、
“ギターはどうしても中音域から弾き始めやすい楽器ですが、その中音域がアンサンブルの中で主役の音域とは限らないこともあります。指グセでとりあえず中音域から弾くのではなく、音域の奥行きや全体のバランスを意識して、1音目からこだわりを持ってポジションを選ぶことが大切です”。
など、ギタリストが陥りがちな「ポジション選び」について具体的なアドバイスを送る。さらに話は、すべての楽器に通じる「トーンとタッチ」の本質へと及んだ。
“良い音(美しいトーン)で弾く、ということはすべての楽器において最も大切です。ギターの練習を始めたばかりの初心者の頃は、弾くことで精一杯になり、出ている音のクオリティや気持ちよさまで耳を傾ける余裕がないのが普通です。その際、よく見かけるのが、ギターを弾く時に無駄な力が入ってしまい、音が濁ったり耳障りな響きになったりしているケースです。例えば、手首や指先だけで無理に弾こうとして、硬くて痛い音になってしまったりします。そうではなく、もっと全身の脱力を意識して、弦に対して腕全体の重みを乗せて、柔らかく響かせる。一番低いベース音から高い音まで、全体の響きを自分の耳でしっかりと聴きながら音を作っていく。これはギター独自のタッチの表現ですが、ピアノやベースなどほかのすべての楽器にも、それぞれに「最も心地よく美しく響くタッチと筋肉の使い方、そして耳の捉え方」があります。それを掴んでいくことが本当に大切です”。
と語った。また、人前で弾く緊張や音量についての悩みに対しては、プロとしてのメンタリティを明かした。
“緊張するのは当然ですし、誰もが通る道です。むしろ、緊張感があるからこそ生まれる素晴らしいパフォーマンスもあります。すべてをコントロールしようとせず、緊張している自分をそのまま受け入れて、セッションのその瞬間のグルーヴに身を任せる、これがとても大切です。セッションでテンパって音量が小さくなった時は、まず「アンプの音量を上げて、しっかり前に音を出す」ことを意識しましょう。そのうえで、ミスをしてしまうのはしょうがないので、ミスタッチも含めて「今の現在地、実力」として丸ごと捉えて、受け入れる覚悟を持つことです。本番のその瞬間、今以上の実力が出ることはありません。ミスを恐れて縮こまるよりは、ハッタリでもいいから堂々と音を鳴らす。それがライブでのある種の実力であり、リスナーの心に届く熱量になります”。
音による対話が実現した
スペシャル・バンド・セッション

そして、本セミナーの終盤には、在校生によるこの日だけのスペシャル・バンドがステージに登壇し、ソエジマを迎えたスペシャル・セッションが実現。ソエジマのオリジナル曲である「Life is Better」が演奏された。演奏後には、“ソエジマさんのワークショップに参加した際に背中を押されたことがきっかけで覚悟を決め、同校への入学を決意した”というメンバーからの胸を打つエピソードも明かされた。熱い掛け合いを終えたあと、ソエジマは感動を隠せない様子でその演奏を称える。濃密な90分のセミナーの締めくくりとして、ソエジマは集まった学生たちへ向けて
“今日の演奏は、僕自身にとっても大きな刺激になりました。お互いに対等なプロフェッショナルとして、その場にいる相手の音だけを考え、引き立て合う。そうしたアプローチを皆さんが妥協せずに実践してくれた。今日もたくさんの素晴らしいアイディアを皆さんからいただき、僕自身も深く学ぶことができました。改めてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました!”
という温かくも力強いエールを贈り、大盛況のうちにイベントは幕を閉じた。
神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校
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