ビートルズの楽曲はその自由でキャッチーなコード進行やエヴァーグリーンなメロディ、ロックンロールの礎を作ったビート感など、世界中で議論され分析されてきた。今回はその中でも、天才=ジョン・レノンの「コードの押さえ方」に注目したい。ジョンはどんな響きや効果を求めて音を選んでいたのか? 本人が多用したコード・フォームをもとに探っていこう。
文:安東滋 図版作成:Seventh
コードが持つ良い響きをブーストする
ジョン・レノン流の押さえ方
ジョンが愛用していたコード・フォーム群は、それ自体のキャラ立ちした響きでビートルズ・サウンドを鮮やかに発色させるものが多い。以下に厳選した、ジョン御用達の必須シェイプを“ジャラ~ン”と鳴らしてみるだけでも……ほらね、即、ビートルズ印の和音感が飛び出してくるからアラ不思議! さぁ、そのマジカルな響きを体感しよう! ちなみに、これらのフォームの中にはジョン/ポール/ジョージの三者に共通する型も含まれているが、筆者が想像するに、これはビートルズのメンバー間でコードの押さえ方を共有していたからなのかも? 3名は少年期からの仲間なので、“〇〇コードはこうやって押さえるんだぜ~”と互いにフォームを教え合ったことは十分に考えられる。
ジョンのGコードは2弦3fを押さえるのが基本型。2弦に開放音を鳴らす一般的なGフォームに比べて、ぐんと抜けが良い響きとクッキリとした輪郭が特徴。 開放ポジションのDフォームに4弦4fを小指で加えたボイシングもジョンの常用品。メジャー3rdの音が1弦と4弦の2箇所で鳴るので響きが明るくメロウ。 前述のDフォームは、その型をまるごと平行移動させる目線でも用いられる。例えば、同シェイプをまるごと2フレット分右側にずらすとEになる、といった要領。 通常のDmに4弦3f(短3度の音)を付け加えたフォーム。この型もまるごと平行移動して用いられる。また 6弦1f上にルートを置くとF6フォームにもなる。 5弦ルートの基本セーハ・コードに、1弦上の6th音を加えたフォーム。キャリア初期の楽曲のエンディング・コードとして用いられる事例も多い。 6thコードのバリエーション。このフォームの1弦を開放にして響かせる好例が「サン・キング」。なお、このボイシングはF#m7(onE)と解釈することもできる。 セーハ型7thコードに2弦上の♭7thの音を小指で追加したフォーム。このアイディアによって7thフィールがぐっと強調されたブルージィな響きに変身! もうひとつの必須7thコードがこれ。左で紹介したシェイプとペアにして、7thフィールの効いた和音感をアピールする楽曲で常用される。 開放のAコードを土台に小指をグイ~と伸ばして1弦5fを加えた、通称“ロングA”と呼ばれる愛用フォーム。使用例は「アイヴ・ガッタ・フィーリング」参照。

本記事が掲載されたギター・マガジン2019年1月号『ジョン・レノン 〜音楽で世界を変えようとした男の知られざるギター美学。〜』では、ギタリストとしてのジョンをあらゆる面から徹底考察しています。