自宅での時間が増え、“おうち時間”や“ステイ・ホーム”なんて言葉が流行した昨今。読者のみなさんも、家でギターを弾くことが多くなったことでしょう。でも、家でアンプを爆音で鳴らすのは難しいし、生音でエレキを弾いていてもなんだかなぁ……なんて思う人も少なくないはず。そんな人は、ぜひアコースティック・ギターを1本買ってみてはいかがですか? 実際にアコギ需要は増えているようで、楽器店ではいつも以上に売れているんだとか。そこで、今回本誌では“1本目~2本目にアコギを買うエレキ・ギタリスト”をターゲットに、5~20万円の価格帯でオススメのモデル15本をチョイス。プロ・ギタリスト野村大輔に試奏音源を収録してもらいました。バイヤーズ・ガイドとして参考になれば幸いです! まずは10万円以内のモデルからどうぞ。20万円以下のモデルを紹介した記事は本ページ下部からチェックしてほしい。
デモ音源制作&試奏:野村大輔 解説:熊谷和樹 撮影:星野俊(ギター)、ほりたよしか(集合写真)
まずは全部聴き比べてみよう!
1.DCT
GR-742CE
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
木材、デザインともにハイクラス
フィッシュマンPU搭載の高コスパな1本
低価格ながら全モデルのボディ・トップにシトカ・スプルースの単板材を採用するなど、コスト・パフォーマンスに優れたプロダクツで人気を集めているDCTブランドのエレアコ。ボディ・シェイプは幅広いプレイ・スタイルに対応するカッタウェイ付きGAスタイル(ボディ幅16インチ)を採用。ボディ下部にはコンター処理がなされており、アコギの厚胴に不慣れなエレキ弾きにも快適な抱え心地を提供してくれる。PUシステムにはフィッシュマン製Presys +を搭載。オンボード・プリアンプが付いているので、外部機器がなくとも細やかな音作りが可能。さまざまなシーンに対応する1本に仕上がっている。
Pickup Detail
2. Epiphone
Masterbilt Texan
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
ポール・マッカートニーに愛された
歴史的名器“テキサン”の復刻品
テキサンはエピフォン・ラウンドショルダーとして1958年に生まれたモデル。当時のブリティッシュ・ロック・ミュージシャンを中心に高く評価され、ポール・マッカートニーやピーター・フランプトンらの愛用は多くの人が知るところだろう。ビンテージ・エピフォンを現代に復刻するというコンセプトを持つマスタービルト・シリーズからリリースされているこのテキサンは、ポールらが愛した1960年代製モデルをベースにデザインされたエレアコだ。ボディにはすべて単板材が使用されており、ふくよかで深みある響きが魅力的。この年代に特有のスリムなネックが踏襲されており、演奏性も良好だ。
Pickup Detail
3. Grass Roots
G-AC-50S
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
薄洞&ショート・スケールによる
取り回しの良いスモール・ギター
グラスルーツはESPが展開するエントリー・ユーザー向けブランド。本器はアコースティック・ギターではほとんど見られないホロー・ボディを採用した斬新な仕様のエレアコだ。薄胴だけに生音は控えめだが、自宅練習などではほど良い音量とも言える。生音がシェイプされている分、フィードバック耐性は高く、アンプリファイ時に扱いやすいというメリットもある。610mmのショート・スケール仕様なので、テンションも比較的柔らかく、その薄いボディ厚と相まりエレキと変わらない感触で演奏できるだろう。取り回しの良さを生かして、トラベル・ギターとして使うのも良さそうだ。
Pickup Detail
4. GUILD
OM-240CE
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
アーチ・バック採用による
ギルド特有のサウンドが光る!
アメリカを代表する老舗として知られるギルドのOMモデル。OMは抱えやすいサイズ感と、ピック弾き/指弾き双方と相性が良いオールマイティなサウンド特性から、日本国内でも高い人気を誇るボディ・シェイプだ。ボディ材はスプルース/マホガニーというスタンダードな組み合わせだが、ボディ・バックにはギルドの特徴的な仕様であるアーチ加工が採用されており、同ブランドらしいクリアでガッツのあるサウンドと、伸びやかなサステインが楽しめる。カッタウェイ付きなのでハイ・フレットへのアクセスも良く、リードを弾いても際立った存在感が出せるだろう。
Pickup Detail
5. GUILD
F-250E DELUXE
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
往年の名器を彷彿させる
現代版ギルド・ジャンボ
ギルドの代表的なボディ・シェイプであるジャンボを採用した1本。スプルース/メイプルという材構成、くびれの深いウェストと丸みを帯びたくびれ下部のボディは往年の名器を彷彿させる仕様だ。大型ボディが持つ豊かな音量と力強い低域、メイプル・サイド&バックならではの明快な高域が織りなすサウンドは、ギルド・ジャンボでしか味わえない質感だろう。フレイム・メイプルの美しい木目を始め、アンティーク・バーストやマザー・オブ・パールを使ったロゼッタなど、ビジュアル面の仕上げも美しい。PUシステムには定評あるフィッシュマンのソニトーンを採用している。
Pickup Detail
6. L.Luthier
Le Light S
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
サイドにサウンドポートを装備
ブティック・ブランドのような気品!
L.ルシアーはマレーシア発の新進メーカー。ブティック・ブランドのような個性的なデザインと良心的な価格設定の両立で大きな注目を集めている。本器はコンパクトなボディと628mmショート・スケール・ネックを組み合わせた取り回しの良いモデル。特徴として最初に挙がるのはボディ・サイドのサウンドポートだろう。弾き手自身が出音をモニターしやすくするために設けられたもので、この価格帯のギターで採用されているのはうれしいポイントだ。ピックアップもピエゾとマイクの2系統が装備されており、作りもきめ細やか。全体に高いコスパを感じさせる1本になっている。
Pickup Detail
7. NAGI GUITARS
cherry Ebony
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura(※PU非搭載のためライン音源なし)
ポップなデザインが目を引く
イラストレーターとのコラボ・モデル
北陸を代表する名店、Blue Guitarsが展開するNAGI GUITARSは、オシャレなデザインと本格的なサウンドを合わせ持つ製品で人気を集めている。本器は同ブランドの看板モデルである“shiro/kuro”をベースに、デザイナー/イラストレーターのkiamuが水彩画で描いたチェリーをボディ・トップ全面にプリントした可愛らしい1本だ。ボディは抱えやすいグランド・オーディトリアムを採用しつつ、ネック・グリップも一般的なシェイプより細めにし、ビギナーでもストレスなく弾けるよう配慮がなされている。トップには単板材を使用するなど、サウンド面も本格的な仕上がりだ。
Pickup Detail
8. TAKAMINE
PTU121C GBB
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
タカミネらしい高域と抜けの良さ!
バンドでの使用にも適した実戦器
エレクトリック・アコースティックの分野で世界的な評価を獲得しているタカミネ。本器はコンパクトなボディ・シェイプとショート・スケールの採用などを特徴とする“100”シリーズにラインナップされているモデルだ。テンションが比較的柔らかく、ナット幅も42mmと狭めなので、エレキと近い弾き心地を探している人には良い選択肢になるだろう。ピックアップには3バンドEQを備えたCT-4BIIを採用。タカミネのシステムは総じて優れており、ボディ・サイド付属のプリアンプで細かい音作りができるのもポイント。きらびやかな高域を特徴とするサウンドは抜けが良く、バンドでの使用にも適している。
Pickup Detail
9. Taylor
GS Mini Mahogany
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura(※PU非搭載のためライン音源なし)
ミニ・ギターの概念を覆す豊かな響き
幅広く愛され続けるロング・セラー
実用性に重きを置いた作りを特徴とするモダン・アコースティックの代表的メーカー、テイラー。GS Miniは同社のGSボディをスケール・ダウンしたミニ・ギター。正確なピッチ、高い演奏性、フルサイズにもひけをとらない豊かな響きなど、従前のミニ・ギターとは一線を画す完成度で2010年の発売以来、非常に高く評価され続けているモデルだ。贅沢なトラベル・ギターとしてはもちろん、用途次第ではメイン・ギターとしての活躍も期待できるだろう。ピックアップ・システム付きバージョン(GS Mini-e Mahogany)や、別売のES-Go後付けピックアップによってライブ使用も可能だ。
Pickup Detail
10. YAMAHA
APX1000
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
エレキ・ギターと変わらない弾き心地と
高性能PUシステムのリアルな音
APXシリーズは、ヤマハの数あるギター・シリーズの中でも“エレアコとしての使用”に特化したラインナップとして知られており、薄胴のボディや狭めに設定されたナット幅は、エレキ・ユーザーにとって違和感のない弾き心地になっている。アンプリファイした時の音は非常にナチュラルで、国内外のトップ・アーティストも愛用するSRTシステムは3種類のマイクと2種のマイク・セッティングを設定でき、シーンに応じて幅広いサウンド・メイクが可能。プリアンプにはアンチ・フィードバックも搭載されているので、大音量のバンドでも安心して使用できるのもうれしい。
Pickup Detail
11. ZEMAITIS
CAF-80HCW
SOUND SAMPLE by Daisuke Nomura
異彩を放つゼマイティス・デザインと
実用性に配慮した質実剛健な作り
名だたるギタリストを魅了した伝説的ルシアー、トニー・ゼマイティスに端を発するゼマイティス・ブランド。本器はオーケストラ・ボディを採用したカッタウェイのエレアコで、ハート型サウンド・ホールや口ひげ型ブリッジなどを始めとする、同社の特徴的なデザインにまず目を奪われる。ボディ・トップには熱処理を施し木材に含まれる余分な水分を除去しつつ、サイド&バックにはサペリを採用して剛性を高めるなど、派手な見た目とは裏腹に質実剛健な作りとなっているのも魅力で、サウンドも良い意味でクセがなく実用的。4バンドEQとチューナーを備えたオリジナルPUシステムとの相性も良好だ。
Pickup Detail
デモ音源を弾いたのはこの人!
野村大輔
のむら・だいすけ○エレキ・ギター、アコースティック・ギターの両刀使いで、歌の良さを引き出し曲に溶け込むようなギターアレンジを得意としている。また、幅広いジャンルをカバーしつつもブルースをベースにしたプレイ・スタイルを持ち味としたギタリスト。様々なバンド活動をしながら10代でギター講師の仕事を開始し、現在ではレコーディングサポート、ライブサポート、作曲、編曲、プロダクトスペシャリスト、執筆活動など幅広く活動を続けている。
『ギター・マガジン2021年2月号』
特集:ジミー・ペイジ、かく語りき
1月13日発売のギター・マガジン2021年2月号では、本記事で紹介しているモデルをNAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)とReiが試奏レビュー! ぜひ合わせてチェックしてみて下さい!