個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。第2回は、本サイトのヘッダー画像にもなっているテスコの銘器=スペクトラム5の登場だっ!!
文=編集部 撮影=植田山月、星野俊 ギター提供=伊藤あしゅら紅丸
国産エレキの最高峰
テスコ デル・レイ スペクトラム 5
斬新なアイディア + 切ない外観
=愛せるビザール。
“エレキ・ブーム”最高潮の時期、テスコがその技術の粋を尽くし誕生したのがこのスペクトラム5。世界中の好事家を虜にするビザール・ギターの代名詞とも呼べる外観で、“王者の風格”すら漂わせている。写真は1966〜1967年製の個体で、海外輸出用ラインとして生まれた“テスコ・デル・レイ”の名を冠する1本だ。
“ジャーマン・カーブ”と呼ばれるボディ外周に施されたコンター加工は、“エレキ・ブーム”の象徴でもあったモズライトのギターに代表されるスペック。これは、その美しい見た目のほかに、ハイ・ポジションへのアクセスをしやすくするなど演奏性も高めている。しかし、フラット・トップと比較すると高い製作技術とコスト、作業工程が必要であり、このギターへかけた情熱をうかがい知れるポイントだろう。
また、サウンド/ルックスともに最大の特徴となるのが6つのスプリットPUと、カラフルな配色の切替スイッチだ。独創性あふれるこの仕様が本機をビザールたらしめる大きな要因であり、深い魅力となっている。ただ、その6つのピックアップは、1〜5の数字が振られたカラフルな配色のスイッチで切り替えるのだが、これがかなり複雑。
高音弦側をフロントから順に①②③、低音弦側を同様に④⑤⑥とすると、【スイッチ1】すべてON(ロー・カット)、【スイッチ2】すべてON(フェイズアウト)、【スイッチ3】③⑥がON(シングルコイル・サウンド)、【スイッチ4】①③④⑥がON(ハムバッカー・サウンド)、【スイッチ5】すべてON(ハイパワー・ハムバッカー・サウンド)とのこと。
スプリット・ピックアップを採用したのは“カラフル=多様な音を出す”というコンセプトを受けたものであり、本器を象徴する箇所だ。
加えて、本器はジャックがふたつあるステレオ出力であり、前述のスイッチよりボディ・エンド側にある“STEREO/MONO”スイッチで出力を切り替える。通常のギター同様モノラル出力で使う際は、ジャック1に挿す。
斬新すぎるテスコ技術陣のアイディアと、切なさあふれるその外観が見事に融合された、ビザール・ギターの頂点に君臨する王者である。
本記事はギター・マガジン2016年9月号『弾きたいビザール』に掲載された記事を加筆/再編集したものです。本誌では、哀愁たっぷりのシェイプを持つ愛しいギターをこれでもかと紹介しています。好事家のプロ・ギタリストたちが持つビザール・ギターも掲載。