複雑な曲線の調和。ハーモニー H82Gレベル 複雑な曲線の調和。ハーモニー H82Gレベル

複雑な曲線の調和。
ハーモニー H82Gレベル

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今回はついに大巨塔=ハーモニーが登場! 1960年代末に生み出されたこのH82Gレベルは、その特徴的なコントロールが画期的な試みであった。さっそくそのビザールな操作性を見ていこう。

文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大

Harmony H82G Rebel

グラフィックEQのようにボリューム&トーンを操作!

最盛期には全米ナンバー・ワンのシェアを誇った一大ギター・ブランドであるハーモニー。生み出された数多くのモデルの中には当然ビザールと言えるものも少なくなく、また生産数が多いため比較的手に入りやすいモデルが多い。

キース・リチャーズも活動初期に使っているほか、昨今ではH54-1ロケットをアラバマ・シェイクスのブリタニー・ハワード(vo,g)が、ボブキャットをセイント・ヴィンセントが愛用したりと、プロ・ミュージシャンからも支持を集めている。

さて、まずは簡単な歴史からおさらいしておこう。ドイツ系移民であるJ.F.シュルツがシカゴにハーモニーを立ち上げたのが1892年。1905年頃から、カタログ通販の大手=シアーズ・ローバック社のOEM生産も受け持っており、スーパートーン・ブランドのギターはほとんどハーモニーが製作を手がけていた。その後、1916年にシアーズが同社を買収。1928年にマルチ弦楽器奏者としてスターだったロイ・スメックのシグネチャー・ギターを手がけたこともあり、ハーモニーはアメリカ最大のギター・ブランドのひとつとなっていく。

1950年代後半にはエレクトリック・ギター製造にも参入。シアーズのプライベート・ブランドであるシルヴァートーンなども手がけ、その生産本数は1964年〜1965年にかけてピークを迎えた。しかし、日本製の安価なギターなどに押され、徐々に勢いを失っていくことに。そして1975年にブランドは幕を閉じた。

このセミアコ=H82Gレベルは勢いを失いつつある1960年代末に生まれたモデルだ。当時の価格は119ドル50セントと中級クラス。“アボカド・グリーン”と呼ばれる緑と黒のサンバースト・フィニッシュが施された小柄なボディには、fホールの形やピックガード、コントロール・パネルなど、複雑な曲線が多く配されており、ビザールな雰囲気もたっぷり!

そして何といっても特徴的なのは、そのコントロールだろう。ボディ・エンド側の4つのスライダー・ノブが各ピックアップのボリューム&トーンをそれぞれ操作する構造で、当時としては画期的な試みだった。1968年のカタログでは“自分のセッティングを視覚的に知ることができるうえ、容易に欲しい効果が得られる。この「スティック・シフト」コントロールは、最新の開発だ”と謳っている。だがしかし、スライダーのレール部分から回路部分へとホコリなどが溜まりやすいようで、定期的なメンテナンスが必要になることがあったとのこと……。

ピックアップは、ほかのハーモニーと同様にディアルモンド製ゴールド・フォイル・マスターシュを装備。フロントとリアは、それぞれスライド・スイッチでオン/オフ操作となっている。14インチのボディ幅で厚みは1 3/4インチと薄いが、出力が低めなピックアップ特性もあり、ウォームなトーンでジャズ/フュージョンにもマッチしそうな雰囲気を持っている。

なお、2018年にシンガポールのバンドラボ・テクノロジーズが復刻させたハーモニー・ブランドにも“レベル”というモデルがラインナップされているが、スライダー・ノブもなければホロウ・ボディでもない。継承されているのはそのシェイプくらいだろう。