ニッポンのエレキ小僧が憧れた1本。グヤトーン シャープ・ファイブ・モデル|週刊ビザール・ギター ニッポンのエレキ小僧が憧れた1本。グヤトーン シャープ・ファイブ・モデル|週刊ビザール・ギター

ニッポンのエレキ小僧が憧れた1本。
グヤトーン シャープ・ファイブ・モデル|週刊ビザール・ギター

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今週は記念すべき初回を飾ったグヤトーンから、国産エレキ・ギターを語るうえではずせない名器をもう1本お届けする。そう、シャープ・ファイブ・モデルである。写真として掲載するのは1982年に発売されたLG-1200だが、今回は1967年発表のLG-350Tから始まるその系譜も含めてご紹介しよう。

文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大

Guyatone LG-1200 Sharp Five

Guyatone/LG-1200 Sharp Five

グヤトーンの技術を結集させた名器

週刊ビザールの初回を飾ったグヤトーンから、ブランドにとって非常に重要なもう1本のモデルを紹介しよう。そう、シャープ・ファイブ・モデルである。写真の個体は1982年に発売されたLG-1200だが、今回は源流となるLG-350Tからその歴史をおさらいしていこう。

1965年頃から絶大な人気を誇っていた“井上宗孝とシャープ・ファイブ”。当時グヤトーンが提供していた『勝ち抜きエレキ合戦』の座付きバンドとしても全国に名が知られていたバンドだが、三根信宏はそのリード・ギタリストでメロ・フレーズの超絶速弾きでも人気を博した。そして、氏のアドバイスをもとに、グヤトーンが技術力を結集させて生み出したのがLG-350Tだ。

※ちなみに、同番組で座付きコーラスを担当していたのが安岡力也が所属していたシャープ・ホークスである。

本人曰くボディのデザインも三根自身が行なっているそうで、シャープ・ファイブ加入以前に使用していたジャガー風のヨーク付きピックアップなどにその影響が感じられるが、限界に近い薄く細いネックなどは氏の当時のプレイ・スタイルからのリクエストだろう。ボディ・エンド側はモズライト風味のリバース・オフセットを施しながら、ネック側はハイエンドのプレイアビリティを考慮したノーマルなオフセットという、唯一無二のボディ・シェイプ。奇想のデザインだが、ホールド感は優れている。また、本家モズライトをしのぐ丁寧なバインディングとジャーマン・カーヴのボディは、全面がピックガードで覆われているのも特徴的で、全体のデザインとしても、今日の目で見てもオリジナリティに溢れている。

※前面をピックガードで覆われているため、交換することで全体の印象が様変わりする。標準のべっ甲柄の他にブルーや白、パーロイドなど、種々のバリエーションが存在する。

1967年に販売開始となったLG-350Tは、2ピックアップの3ウェイ仕様で、1ボリューム&1トーンというシンプルなコントロール。大卒初任給が30,600円だった当時の販売価格で35,000円だった。

そして1968年には3ピックアップ仕様のLG-350T DXが登場する。コントロールは、トグル・スイッチと逆側のホーン部分にセンター・ピックアップのオン/オフ・スイッチを増設。通常の3ウェイ・セレクターとの組み合わせで6通りのサウンド・バリエーションが得られるように。また、金属系パーツはゴールドでまとめられ、当時の広告では“ゴールデンギター”と称されていた。もちろんデラックス版ということで、価格も45,000円とさらにお高めに。そして1978年にはLG-350T CUSTOMと名を変え、ゼロ・フレットではなくなり、ポジション・マークは星形となった。

写真のLG-1200はこのDXラインの系譜を受け継ぎ、1982年に新たに開発されたモデルだ。ミニ・スイッチはトーン・ノブとジャックの間に移動し、ゼロ・フレットは復活する。ネック幅は、それまでのLG350Tシリーズのナローから、標準の弦間ピッチに変更され、リプレイス・ピックアップにも対応できるようになった。ベンドもしやすくなったこの変更は、80年代当時のロック・ギタリストにも対応するように考えられたのだろう。それに加え、ボルト・オン接合だったがジョイント部分が、スルーネック仕様に変更された。物価の上昇もあり、価格は120,000円(1982年の大卒初任給は127,200円)。

また、よく知られていることだが、グヤトーンは最高級器のボディ製作を外注に出すことが多く、古くは箱物をナルダンに、LG-200Tをヤマハに製造依頼していた。そして、このLG-1200もトーカイやフジゲンが生産していたようだ。

その後、グヤトーン・ブランドは流転の歴史を歩むことになるが、いつの時代でもシャープ・ファイブ・モデルはフラッグシップとして存在しており、近年のグヤトーンUSAでも、ハンドメイドでリニューアル・モデルが制作されている。

2021年1月にニュー・アルバム『THAT’S MINE』をリリースするなど、現在も精力的に活動する三根信宏。彼が現在愛用するシグネチャー・モデル、フジゲンS-5 MINEは、センター・ピックアップのオン/オフをトーン・ノブのプッシュ/プルで行なえるようにしたほか、ウィルキンソン製のトレモロ・ユニットを採用するなど、随所にアップデートが施されたモデルだ。