FACTORY
メリーランド州グリーンズボロより愛を込めて
ナッグス・ギターの製作現場をご紹介。精鋭たちが1本1本に情熱を注ぐさまをお見せしよう。
文=山本諒 写真提供=Knaggs Guitars
※本記事はギター・マガジン2021年10月号に掲載された『ナッグス・ギターズ トップ・ビルダーが練り上げる美しきハイエンド・ギター』を再編集したものです。
技術も人柄も信頼する仲間と
最高品質のギターを作れる好環境
ナッグス・ギターの拠点は米国東部、ワシントンD.Cの東にあるチェサピーク湾を挟んだメリーランド州グリーンズボロにある。
1912年に建築された煉瓦造りの工場跡地を改装し、品質重視の良好な製作ペース(年400本程度)で日々ギター作りに従事しているナッグス。元PRSのスタッフを中心にした10名の精鋭が働いており、中にはダニー・デド(CNC関連の全仕事を担当)、デヴィッド・ヘイゼル(木工やフレット打ち、調整などを担当)といったPRSのプライベート・ストック・チーム出身のエリートもちらほら。ジョー・ナッグス曰く“彼らはみなミュージシャンでもあり、技量だけでなく人間的にも信頼のおける仲間”とのことだ。
ジョー自身は、注文が入ったら書類製作をし、製造ラインへ話を伝える管理職的な役回りをしながら、基本的にすべての工程に携わっているという。ナッグスの製品は全部ジョーの手が入っており、細かな回路周りのチェックから、Kenai Reef of Life ‘2021 LTDで見られるのような凄まじいインレイ製作まで自身で行なっているのだ。中でもアコースティック・ギターの製作はすべてジョーによる手作業である。
その反面、セールスやマーケティングにはほとんど立ち入らないようで、まさに根っからの職人気質。“私は常に作業することで手一杯”と今回のインタビューでジョーは語っていたが、純粋にギターを作るのが好きなのだろう。
また、ナッグスの真髄は限りなく“人の目と手”で作られている、ということは強調しておきたい。例えば、自慢のボディ・カーヴィングはCNCルータで加工されるが、あくまで手作業で削ったものをベースに、ダニーが精密にプログラミングを施している。そこから手作業でサンディングなどを施すことで、美しい曲線を生み出しているというわけだ。また、重要なセット・ネック・ジョイントの加工も手作業。トップ材を始めとする木材選びもジョーとスタッフの“目”が判断基準となる。こうした効率主義とは相反する手作り感が、この現代において余計にナッグス・ギターズの価値を高めている気がしてならない。