プロ・ギタリストも愛用する、PLEKというマシンをご存知だろうか? これはギターをスキャンして自動で最適な状態に調整してくれるものなのだが、聞き馴染みのないギタリストも多いだろう。今回は、PLEKによるサービスを展開するリペア・ショップ/代理店のスリーク・エリートに協力してもらい、その概要をお伝えしたい。
取材・文:関口真一郎 撮影:小原啓樹
※本記事はギター・マガジン2022年3月号から一部抜粋/再編集したものです。
協力してくれたのは……
広瀬創
ひろせ・はじめ◎学生時代よりベーシストとして活動。1994年には著名なベーシスト、ウィル・リーのもとを訪ねてニューヨークへ。現地の現場仕事や楽器関係者との親交を深めたのち、99年に輸入代理店スリーク・エリートを設立。現在は海外ブランドの代理店業務、リペア作業に加え、国内におけるPLEKの普及にも力を入れている。
ABOUT PLEK #01
そもそもPLEKってなんだ?
PLEK(プレック)とはネックとフレットの状態を正確にコンピュータ計測し、1000分の1ミリ単位で修正が可能なギター・スキャン修正機のこと。弦を張ったままのネックとフレットの状態を精密に計測できるのが特徴で、80年代からドイツで開発が進められ、2001年に実用化された。国内ではタカミネが早くから導入しているが、工房/代理店レベルの先駆けと言えるのがスリーク・エリート。2009年末から運用を始め、通算施工本数は3万本を超える。工房ではPLEKを扱う作業だけでも、月に200本程度の依頼があるという。
広瀬:“勘や感覚ですら物理的な数字ではっきりと示せるのが、PLEKの大きな特徴ですね。ブレがないんです”。
ABOUT PLEK #02
そのメリットと可能性
PLEKは“自動フレットすり合わせマシン”と言われることもあるが、実はナット製作や指板調整、インレイ加工なども行なうことができる。しかし、最大の特徴はスキャン機能と言えるだろう。それも静的な状態だけではなく、弦振動を含めた動的な状態を把握できるのがポイントで、実際に演奏している時に、どのような物理現象が楽器に起きているのかを数値化・可視化することができるのだ。
スキャン項目はネックやトラスロッドの状態、フレットの高さや形状、フレットの位置など多岐にわたる。作業手順としてはギターをPLEK本体にセットして、しっかりとチューニングしたのち、機械のスイッチを入れると内部のセンサーが動き出す。スキャンにかかる時間はわずか5分程度で、フレットのすり合わせでも10~20分程度で終了。検査・作業結果はすぐさまモニターに映し出される。
広瀬:“弦のゲージやブランド、チューニングによっても、弦の振れ幅は異なります。弦高や弦というのはユーザーの好みですよね。そうしたそれぞれの弦の振れ幅の差異を考慮しながら、フレットのすり合わせを行なうというのはかなり難しいと思うんですが、PLEKならそのレベルでの作業が可能なんです”。
このようにPLEKは非常に優秀な精密機械ではあるが、PLEKを導入しさえすれば最適な調整が行なえるというわけではない。そのようにして得られたデータをどのように見極め、問題を見いだし、どれだけユーザーの希望に沿った提案ができるかがカギとなる。その意味ではリペアマンの技量や提案力がより求められ、それが工房の実力の差として表われるとも言えるだろう。
例えるなら、PLEKはCTスキャンのようなもの。スキャン自体の費用は比較的抑えられていることも多いので、楽器の定期検診も兼ねて、PLEK設置のショップに一度問い合わせてみてはいかがだろうか。
製品やサービスに関する問い合わせは、スリーク・エリートまで。
TEL:03-6383-2968
メール:sleekelite@muf.biglobe.ne.jp
公式HP:https://sleekelite.com
ギター・マガジン2022年3月号
『ギタリスト 布袋寅泰のすべて』
本記事はギター・マガジン2022年3月号から一部抜粋/再編集したものです。特集は『ギタリスト 布袋寅泰のすべて』。昨年デビュー40周年、そして今年2月1日に60歳を迎え、新作『Still Dreamin’』をリリースした布袋寅泰を、140ページにわたる大ボリュームで特集しました! 本記事で紹介した1本を始め、貴重なゼマイティス・コレクションなど、愛器25本を紹介した「HOTEI’S 25 GUITARS」は必見!