東京のギター・ストラップ工房へGO! 浅草の職人による、スタイリッシュで上質な革の深み。AQUBE MUSIC PRODUCTS  東京のギター・ストラップ工房へGO! 浅草の職人による、スタイリッシュで上質な革の深み。AQUBE MUSIC PRODUCTS 

東京のギター・ストラップ工房へGO! 浅草の職人による、スタイリッシュで上質な革の深み。
AQUBE MUSIC PRODUCTS 

ギタマガWEBでは初となる、ギター・ストラップ作りの現場に潜入! 今回お邪魔するのは、AssHとのコラボ・ストラップも展開する新鋭ストラップ・ブランド、AQUBE MUSIC PRODUCTS(アクビ・ミュージック・プロダクツ)。一枚の牛革がストラップになるまでを、1日がかりで追いかけていこう!

取材/文=編集部 撮影=小原啓樹

浅草発のストラップ・ブランド、AQUBE(アクビ)

スタイリッシュなシェイプや豊富なカラバリ。ありそうでなかった革製ストラップ!

AQUBE MUSIC PRODUCTS、通称AQUBE(アクビ)は東京・浅草に居を構える、完全ハンドメイドのストラップ・ブランド。高級革靴やブランド・バッグを手がける熟練の革職人が、1本1本仕上げるこだわりの逸品なのだ。

▲こちらがAQUBE(アクビ)の革製ストラップ。箱までオシャレ! 写真はStrap01 SHRINK ICE LAVENDER(税込18,700円)。
▲箱から出すとこんな感じ。シェイプがとってもエレガント。今回は、このアイス・ラベンダーのモデルが完成するまでを追っていこう。ちなみにカラーは20色以上がラインナップされている。

STEP1/荒断ち(あらだち)

巨大な革を大まかなストラップの形に切っていく

さっそくストラップ作りの現場へ潜入だ! まずは巨大な革を、ストラップ1本分のサイズにカットしていくところからスタート。荒断ち(あらだち)という工程である。

▲これがストラップ用に仕入れている革。デカい! このサイズは「半裁」といって、牛一頭の半分の大きさだ。左側が頭で、右側がお尻〜尻尾にあたる。
▲傷を避けてカットするため、あらかじめマーキングしておく。牛革は天然のものなので、傷がたくさんあるのだ。
▲テーブルのような巨大な断裁機に革をセット。
▲断裁機のカッター部分。手裏剣みたい。
▲カッターをスライド装置にセット。
▲革を固定して、カッター部分をスライドさせると、音もなく革がカットされていく。
▲ストラップ1本分の荒断ちが完了。
▲背中で語る職人。渋い。
▲年季の入ったハサミ。渋い。
▲続いては革を薄くスライスする「すき」の作業。まず計量器で厚みを測る。
▲革をスライスして薄くする「すき器」に滑らせていく。
▲みるみるうちに革が2枚にスライスされた。
▲数ミリ単位で薄くスライスされている。こうして薄さを調節することで、革特有の豊かな表情がつくのだとか。生地や合皮ではできない、革ならではの加工技術だ。
▲年季の入った革すき器。
▲内部では火花が飛び散る!

STEP2/貼り合わせ

2枚の革を糊で貼り合わせる!

荒断ちした革は、表用と裏用に分かれている。お次は、これら2つを貼り合わせる作業工程だ。

▲荒断ちされた2枚の革。 AQUBEストラップは、革が2枚重なっている構造なのである。
▲使っているうちに革が伸びてしまわないよう、内部に伸び止めのテープを貼る。これが芯材のような役割を果たす。
▲専用マシンで糊(のり)を塗布中。こうした糊は体に有害なものも多いが、同社は環境や従業員への配慮から水性の糊を使用。食べられるくらい安全性の高い糊なのだとか。
▲糊を塗布して30〜1時間ほど染み込ませたのち、裏側を貼り合わせる。
▲中に空気が入らないようにプレス。
▲表と裏がぴったりくっついた!

STEP3/決め断ち(きめだち)

いよいよ本格的にストラップの形にカット!

ついに作業も大詰め。ここからは精密に作られた「抜き型」を使って、製品そのものの形にカットしていく。「決め断ち(きめだち)」という作業だ。

▲こちらが「抜き型」。設計されたデザイン通りに忠実にカットされるよう、精密に作られた金属の型だ。もちろんAQUBEストラップのためだけに作ったものである。
▲重厚なプレスマシン。ダイナミックな動きはもはや巨大ロボ!
▲先ほど貼り合わせた革をセット。
▲革の上に抜き型を置いて……。
▲ガチャン!
▲美しいストラップの形に! 穴まで空いてる!
▲長さ調節用のパーツも決め断ちする。荒断ちの状態は抜き型より大きいため、少しはみ出しているのがわかるだろうか。
▲ガチャン。
▲抜き取ると…。
▲この通り!
▲職人さん。見学させてもらってありがとうございます!

STEP4/縫製(ほうせい)

革の縁を縫いつける。

決め断ちによって、見た目はほぼ完成品に近づいたが、まだまだ工程はある。続いては、縁を糸で縫い付ける、縫製(ほうせい)の作業。

▲ミシンで縁を縫い合わせていく。もうほとんど完成してますね。
▲ミシンがめっちゃイナたい!

STEP5/箔押し(はくおし)

ついに完結。まさに画竜点睛なブランド・ロゴ入れ。

最後はブランド・ロゴを革に直接印字する、箔押し(はくおし)という作業。やっぱりロゴがカッコよく入ってないと完成しません。

▲AQUBEストラップは正面にブランド・ロゴがあしらわれている。ゴールドの金型が箔押し用の型だ。
▲これが箔押し用のプレスマシン。
▲まずは金型を設置。正しい位置に装着しないとロゴの位置がズレてしまう。黒いのはマグネット。
▲続いて取り出したのはストラップと同サイズの型紙。ロゴ部分のみ穴が空いている。
▲型紙の周りにマグネットを並べていく。これが固定する位置のガイドの役割になるのだ。
▲型紙をはずして、マグネットの位置に合わせてストラップを固定。位置もぴったり。
▲ホワイトの箔シートを上に乗せて…。
▲ガチャン。
▲おお〜!
▲何度かくり返してさらに色を入れていく。
▲徐々にホワイトが濃くなっていってるのがわかるだろうか?
▲ロゴの箔押し完成。
▲AQUBEストラップは、オプションでネーム入れもできるとのこと。せっかくなのでお願いすることに。
▲カラーは白金に決定。どんな感じになるのかな…ドキドキ。
▲ロゴの上にアタイのネームが! ケンイチロウです。ハートや星なども入れられます。

▲完成した2本の革パーツ。
▲こうやって組み合わせて…。
▲完成! 以上、ストラップ工房レポートでした!
▲長さ調節用のパーツは、購入時にS、M、Lの3種類のどれかを選択する(付属は1本のみ)。
▲AQUBEストラップのラインナップは、今回完成までを追った「01(ゼロワン)」のほかに、より横幅の広い02(ゼロツー/下段の蛇柄)、細身の03(ゼロスリー/真ん中のネイビー)という2つのモデルがある(近日発売予定)。もちろん、それぞれに豊富なカラーリングが用意されている。

代表者が語る、AQUBEストラップのコンセプト

本記事の最後は、AQUBEストラップを手がける株式会社Verb Creationの代表取締役、中川宏明氏のインタビューで締めくくろう。自身もギター弾きである氏のこだわりとは?

株式会社Verb Creation 代表取締役・中川宏明

半径10km以内ですべてを作ることにこだわっているんです。

そもそも革靴やバッグがメイン事業であるアパレルの会社が、なぜギターのストラップを作ることにしたんですか?

 僕自身がギターを弾くこともあって、何かギタリストを支えられるものが作れないかという気持ちがあったんです。といっても、自分にできることと言えばずっとやってきた革製品しかない。それで革製のストラップを作ることにしました。また、ギタリストのAssHさんと出会うきかっけがあって、コラボレーションさせてもらったりもして。コラボ・モデルはご本人と相談しながら、1年以上かけて納得いくまで作りましたね。

AssHさんのモデルや、今回レポートで制作過程を追った「01(ナンバーワン)」など、AQUBEのストラップは形が凄く洒落ていますよね。

 ありがとうございます。こだわって手をかけて作っているからこそのラインだと思っています。肩に当たる部分は広く、ギターに近づくにつれて細くスマートに見えるように、立体的で綺麗なラインを目指しました。

日本製というのもポイントですか?

 そうですね。「柔らかくて体に馴染む良い革である」というのは当たり前として、半径10km以内ですべてを作ることにこだわっています。弊社は靴もバッグも、見えるところでモノ作りをしているというのが強みの1つですからね。ちゃんとそこで作っている安心感というか、モノ作りが見えるというのはとても大切なので。

では最後に、今後はどんな展開を予定しているか教えて下さい。

 今後も色々なギタリストの方とコラボをしたり、ES-335用とかジャズ・ベース用のものなど、違うタイプのモデルも作っていきたいですね。あとはWEBのカラー・オーダーを始める予定で、WEB上で好きな色を選んで、約4週間で手元に届くようなものを想定しています。革製のギター・ストラップってどうしても黒や茶色になりがちですけど、シーンに合わせて色を変えたり、洋服のように楽しんでいただきたいと思っていて。それでカラーをたくさんラインナップしているんですよ。夢としては、革製のギター・ケースや革貼りのギター・アンプなど、ギタリストを支えられるものをもっともっと作っていけたら嬉しいですね。

▲オフィス内には製品見本やプロトタイプなどがずらり。
▲こちらは中川氏の私物。まさかの自作アンプ!
▲よく見るとネットやグリルもすべて革。どんな音がするんだろう?
▲さらに私物エフェクターもずらり。ブティック系がお好きのようですな。あとは、フェンダー・カスタムショップ製のテレキャスターが置いてありました。

■ AQUBE MUSIC PRODUCTS 公式サイト
https://amp.tokyo.jp/

■ Instagram
https://www.instagram.com/aqubemusicproducts/