竹内アンナの5th EPリリース・ツアー、“RELEASE TOUR 2023 -at FIVE-”が、2023年6月9日(金)の恵比寿リキッドルーム公演をもって閉幕した。これまでマーティンのジョン・メイヤー・モデル=OMJMをトレードマークとしてきた竹内だが、今回のツアーからはマーティンにオーダーした自身のカスタム・モデルに加え、エレキ・ギターも本格的に導入! 今回はツアー・ファイナルで竹内が使用したギター、アンプ、ペダルボードを紹介しよう。
文/写真=福崎敬太
ACOUSTIC GUITAR
Martin/Anna Takeuchi Custom
自身の名を刻んだ、マーティンの新たな相棒
竹内アンナの新たなトレードマークとなる、マーティン・カスタムショップにオーダーしたオリジナル・モデル。コロナ禍で制作が中断したが2022年末にようやく完成し、今回のツアーからメインのアコースティック・ギターとして起用された。
00-18を一時期導入したものの、低音の鳴りの良さから不動のメイン=OMJM(ジョン・メイヤー・モデル)に戻っていた竹内。彼女の理想を詰め込んだこのカスタム・モデルのテーマは“小さいジョン・メイヤー・モデルを作ろう”というものだった。00スタイルのボディに、OMJMのスペックからスノー・フレークのポジション・マーク(OMJMは12フレットのみ)やOMスタイルのピックガードなどを採用。
ボディ・トップはアディロンダック・スプルースで、バック&サイドとネックはマホガニー、指板はエボニーという材構成。また、“キラキラしてて可愛い”という竹内の好みから、ロゼッタやボディ外周のパーフリング、ヘッドのバーティカル・ロゴはアヴァロンで華やかに装飾された。このあたりはルックス優先だが、サウンドもOMJMに劣らない低音の鳴りが得られ、かつ軽量なため取り回しも良いそうだ。
ライブではアコギを使う曲のすべてで使用され、「Love Your Love」のストロークや「YOU+ME=」のオクターブ・ソロでは、若くハリのある、バランスの良いサウンドを奏でた。
なお、ピックアップ&プリアンプのシステムには、フィッシュマン製のMatrix Infinity VT Pickup & Preamp Systemを搭載している。
Martin/OMJM
成長をともにしてきた、憧れのジョン・メイヤー・モデル
竹内アンナを象徴する、マーティンのジョン・メイヤー・モデル=OMJM。今回はサブとして用意され、ステージに登場することはなかった。しかし、いくつものライブで弾かれてきた中でキズ痕なども増え、成長をともにしてきた大切な1本だ。新しい彼女のカスタム・モデルとはサウンドも違うため、今後は2本の使い分けも出てくるだろう。
ELECTRIC GUITAR
Gibson Custom/Murphy Lab 1961 ES-335 Reissue
15本以上の中から選んだ、エレキ・ギターのメイン
エレキ・ギターのメインとして使われたのは、15本以上を試奏して選んだというギブソン・カスタムのMurphy Lab 1961 ES-335 Reissue。その赤いフィニッシュから、赤ちゃん……ベイビー……ということで、通称は“ベビたん”。
これまでにもライブの一部でエレキ・ギターを使うことはあったが、ここまで本格的に導入したのは今回のツアーが初めてだ。
“ミッキー・マウス・イヤー”と呼ばれる丸みを持ったホーン形状や、ドット・ポジション・マーク、ショート・ガード、ブラックのメタル・ハット・ノブ、ダブル・リング・ボタンを持つクルーソン・ペグなどが、1961年製リイシューの特徴。
これまではエレキでもクリーン・サウンドでのアプローチが中心だったが、6月9日公演では1曲目の「サヨナラ」から、クランチでのロックなリフを聴かせた。また、アコギ・スタイルではほとんど出なかった、チョーキングを交えたコンパクトなソロも印象的だった。
ピックアップの基本的なセレクトは、ピックでストロークする楽曲がフロント・ポジション、指弾きの「made my day」や弾き語りの「ICE CREAM.」ではセンター・ポジション。クリーンの際はギター側のボリュームを少し絞るそうだ。
Fender Custom Shop/Master Grade 1961 Stratocaster
エレキ本格導入の下地を固めた、マネージャー所有器
今回のステージでサブとして用意されたエレキ・ギターが、このMaster Grade 1961 Stratocaster。マネージャー所有の1本だ。以前からレコーディングやライブの一部でエレキ・ギターを演奏する際は本器を使用していたが、満を持して入手したES-335の登場で今回の出番はなし。
AMPLIFIER
SHINOS & L/ROCKET HEAD & 112 Cabinet
プロからも人気の小柄なスタック・アンプがメイン
SHINOSとLee Custom Amplifierのコラボレーションで生まれた、ROCKETのヘッド・タイプをメイン・アンプとしてチョイス。ゲインを少し上げてクランチ気味に設定し、ギター側のボリュームを下げてウォームなクリーン・サウンドを生み出していた。
また、「ICE CREAM.」では本器のトレモロも使用し、ビンテージな風合いの音色で色気のある弾き語りを披露。なお、トレモロやリバーブのオン/オフは後述するBOSSのフット・スイッチで行なっている。
PEDALBOARD
ステージ上での竹内の足下。まずは全景を見ていこう。左側のペダルボードがアコースティック・ギター用で、右側がエレキ・ギター用。中央に位置するBOSSのFS-6(フット・スイッチ/⑮)は、これまでルーパーの外部スイッチとして使っていたものだが、今回はアンプのトレモロ&リバーブのオン/オフ・スイッチとして使用している。
モデル名やそれぞれの使い方などは、ボードの用途ごとに以下で解説していこう。
FOR ACOUSTIC GUITAR
【Pedal List】
①GRACE DESIGN/BiX(プリアンプ)
②MXR/Micro Amp(ブースター)
③L.R. Baggs/Align Series Reverb(リバーブ)
④BOSS/TU-3s(チューナー)
⑤BOSS/OC-3(オクターバー)
よりシンプルになったアコギ用ボード
アコースティック・ギター用のペダルボード。ギターからプリアンプ①に入り、PAへと送られている。②〜④は①のセンド/リターンに番号順に接続。
エレキ・ギター導入の影響か、ギター・ソロ時などで使用されてきた⑤オクターバーがはずされ、それをコントロールしていたライン・セレクターの位置には②ブースターが代わって入った。⑤はシステム変更の都合上残してあるが、使われていない。
ギター・ソロでは①プリアンプのブースト機能、存在感を出したいオブリなどでは②と使い分けている。
③のリバーブは「TOKYO NITE」での空間的な演出で一役買っていた。
FOR ELECTRIC GUITAR
【Pedal List】
⑥BOSS/TU-3(チューナー)
⑦Providence/Velvet Comp(コンプレッサー)
⑧MXR/MC401 Boost/Line Driver(ブースター)
⑨BOSS/OD-1(オーバードライブ)
⑩ProCo/RAT2(ディストーション)
⑪One Control/1 Loop Box(スイッチャー)
⑫Effects Bakery/Cream Pan Booster(ブースター)
⑬Effects Bakery/French Bread Delay(ディレイ)
⑭Custom Audio Japan/DC/DC Station II(パワーサプライ)
可愛いペダルで“ギャル味(?)”をプラス!
新たに組み上げたエレキ・ギター用のペダルボード。“こういう音が出したい”という竹内のイメージをもとに、スタッフとともにエフェクターをチョイスしていったそうだ。
ギターからの信号順は⑥〜⑪まで番号のとおりで、⑫と⑬はスイッチャー⑪のループにまとめて接続されている。
⑧でアンプのゲインをプッシュ、⑨でクランチ、⑩でオーバードライブ〜ディストーションという形で歪みの段階をコントロールしている。ギター・ソロでは⑪を踏むことで、ブースター⑫で音を持ち上げ、ディレイ⑬で厚みを持たせていた。
ちなみに可愛らしいイラストが筐体に描かれた⑫&⑬だが、スタッフ曰くこれらのペダルで“ギャル味”を加えているとのこと(笑)。
なお、竹内が直感的にエレキの音作りができるように、ツマミの数が3つ以内のエフェクターをチョイスしているそうだ。
OTHERS
Roland/SP-404 SX
ローランドのサンプラー、SP-404 SXは「泡沫SUMMER」のみでステージ上に登場。ギターを持たずにハンドマイクでボーカルをとったこの曲のエンディングで、本機を使った演出があった。
Pick
オフィシャル・ファンクラブの名前でもある“at TENDER”の文字がデザインされたオリジナル・ピック。また、“白くて可愛いアンプの上に直接ドリンクを置きたくない”という竹内のアイディアからコースターが置かれている。
作品データ
『at FIVE』
竹内アンナ
テイチク/TECI-1792/2023年2月22日リリース
―Track List―
- WILD & FREE
- サヨナラ
- 生活 feat. パジャマで海なんかいかない
- あいたいわ
- made my day feat. Takuya Kuroda/Marcus D
―Guitarist―
竹内アンナ