怒髪天のアルバム・リリース・ツアー“more-AA-janaica TOUR ~もうええじゃないか、もう~”が、2023年7月14日(金)の新宿BLAZE公演をもって閉幕した。今回は、そのミニ・レポートとともに、ギタリスト上原子友康のライブ機材を紹介しよう。
文=福崎敬太 協力=ドラゴン(ギター・テック) 撮影=西槇太一
会場が一体となった狂熱のライブ
凄いライブを観てしまった……。奏者と観客の熱量が高い次元で拮抗していた、とでも言えば良いのか。コロナ禍を乗り越え、声を出せるようになった観客の喜びと、それを受ける怒髪天メンバーの喜びが会場に満ち満ちていた。
クランチのカッティングを基軸にノリノリで展開していく「一択逆転ホームラン」から始まり、ラン・フレーズからのダブル・チョーキング、タッピングまで織り交ぜたコンパクトなギター・ソロで盛り上げる上原子。
「ジャナイWORLD」ではブルージィでエモーショナルなチョーキング・ビブラートを聴かせ、「天誅コア」ではメタラー魂を呼び起こしたヘヴィなリフで客席を鼓舞していく。
「令和(狂)哀歌~れいわくれいじぃ~」では和音階を巧みに取り入れたイントロから入り、“和の踊り”を感じさせる裏打ちのグルーヴを刻む。ソロではオクターバーをかけ、音圧と勢いをキープしたプレイを聴かせた。
MCを挟んで「ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!」へ進むと、会場は最高潮に。メンバー全員と観客全員でサビを合唱。ギター・ソロでは、速いラン・フレーズからキャッチーな“歌える”メロディを披露した。
さて、MCでボーカルの増子直純がSNSで見つけた“今回のセットリストは名曲とクソ曲のバランスが素晴らしい”という投稿を紹介し、“クソ曲ってどれだよ!”と笑いを誘うと、その後のメンバー紹介時に“どうも〜、クソ曲作曲家の上原子です!”と爆笑をかっさらったわけだが……まったく、ライブを観たけど名曲しかなかったぞ?
笑いあり、涙あり、アーティストも含めた全員で盛り上がり、全員で泣ける、そして元気をもらえる素晴らしいライブだった。
そのステージで使用された、上原子の機材を以下で紹介しよう。
上原子友康のライブ使用機材
Fender/American Vintage ’57 Stratocaster
30年以上連れそう唯一無二の相棒
説明不要のメイン・ギター、1987年製の’57リイシュー・ストラトキャスター。この日も当然、全曲が本器のみで演奏された。ピックガードは3プライに、ペグはゴトーのロック式に交換されている。また、今回のツアー中にトレモロ・スプリングがはずれてしまうアクシデントがあったため、カバーとして養生テープが貼られていた。ピックアップは基本的にセンターを選択。
キッズの血が騒ぐメタリックなヘヴィ・リフから、三味線のような単音フレーズ、ブルージィな泣きのソロまで、様々なスタイルを本器のみで表現しているのは驚きだ。ライブ中に見せる、ボディ・エンドをクイっと上げる自然な仕草もカッコ良かった。
Pedalboard
【Pedal List】
①Mooer/Yellow Comp(コンプレッサー)
②Jim Dunlop/JB95 Joe Bonamassa Signature Cry Baby(ワウ・ペダル)
③BamBasic Effectribe/Presence & Boost(ブースター)
④Free The Tone/ARC-3(プログラマブル・スイッチャー)
⑤TC Electronic/Flashback X4(ディレイ/ルーパー)
⑥Animals Pedal/Bath Time Reverb(リバーブ)
⑦BamBasic Effectribe/Loop Selector(スイッチャー)
⑧BOSS/OC-2(オクターバー)
⑨Electro-Harmonix/POG2(オクターバー)
⑩Zoom/G1 Four(マルチ・エフェクター)
⑪Rockbox/Super 763(オーバードライブ)
⑫One Control/Minimal Series White Loop(スイッチャー)
⑬Xotic/BB Preamp(プリアンプ)
⑭funk ojisan×山中さわお/MY FOOT(オーバードライブ)
⑮Rockbox/Boiling Point(オーバードライブ)
⑯Free The Tone/Integrated Gate IG-1N(ノイズ・ゲート)
⑰strymon/Lex(ロータリー・スピーカー・シミュレーター)
⑱BOSS/BF-2(フランジャー)
⑲Maxon/AD-999(アナログ・ディレイ)
⑳KORG/Pitchblack XS(チューナー)
㉑One Control/Distro Minimal(パワーサプライ)
㉒One Control/Persian Green Screamer(オーバードライブ)
巨大に進化したペダルボード
機材車への積み込みを考え、ベース用キャビネットのケースと同じサイズで作られたという特注のボードには、怒髪天サウンドを彩る数々のエフェクターが並ぶ。
ギターからの信号は、①〜⑥まで番号順に進み、アンプ側へと向かう。⑦〜⑲は、プログラマブル・スイッチャー④のループで管理されている。
②はジョー・ボナマッサのシグネチャー・ワウ。「愛の出番だ!」の単音カッティングでファンキーなグルーヴを生み出した。
⑤はタイム違いでプリセットされ、「孤独クラブ」はロング・ディレイでドラマチックに演出。ルーパーのボタン機能を書いたテープが貼ってあるが、これまでに1曲くらいしか使ったものはなく、基本的にはディレイとして使用している。深い残響感のあるサウンドも本機によるものだろう。
キモとなるスイッチャー④はプログラム・モードで使用。各ループの構成は以下のとおりだ。
ループ番号 | 構成 |
---|---|
L1 | スイッチャー⑦(ループ1:⑧、ループ2:⑨、ループ3:⑩) |
L2 | ⑪ |
L3 | スイッチャー⑫(ループ1:⑬、ループ2:⑭) |
L4 | ⑮ |
L5 | ⑯ |
L6 | ⑰ |
L7 | ⑱ |
L8 | ⑲ |
L1はソロやイントロなどの単音系フレーズで活躍するオクターバー⑧を基本に、時々ハーモナイザーとしてマルチ・エフェクター⑩をオンにする。「100万1回ヤロウ」のソロなどでわかりやすくかけられていた。
L2はクリーン・サウンドに味つけとしてかけるオーバードライブ⑪。
L3は歌中のドライブ・サウンド用で基本的に⑬をオン、曲によって⑭に切り替える。⑭の位置は頻繁に変更される激戦区で、現在はthe pillowsの山中さわおのシグネチャー・オーバードライブが鎮座する。ボード外に置いてある㉒は、その座を狙っているようだ。
L4はオーバードライブ⑮のみで、ギター・ソロ時に踏まれる。
L5〜8は曲ごとに組み込まれているループ。L5はシングルコイルのノイズを防ぐ目的で、基本的にオン。普段はISP TechnologiesのDecimator II(ノイズ・ゲート)が入っているが、今回のツアーではテック所有の⑯が起用された。L7のフランジャー⑱は、「欠けたパーツの唄」の間奏やソロ・パートで使用。
Fender Super Sonic 100
ストラトキャスターと相性抜群の煌びやかなサウンド
ツアーをともに回ったメイン・アンプは、フェンダーのSuper Sonic 100。ペダルボードのアウトから、上部のイコライザー=BOSS/GE-7を経由してアンプへと入力される。
アンプはVintageチャンネルのBASSMANモードで、ゲイン=6.5、トレブル=7.5、ベース=3、ミドル=4、ボリューム=2と、ストラトキャスターの煌びやかさをあと押しする設定。会場による微妙な音の調整は、アンプ上のイコライザーで行なっているそうだ。
なお、上に載っているアンプ・ヘッドはサブで、One ControlのBJF-S66。
作品データ
『more-AA-janaica』
怒髪天
テイチク/TECI-1806/2023年3月22日リリース
―Track List―
- 令和(狂)哀歌~れいわくれいじぃ~
- OUT老GUYS
- ジャナイWORLD
- 一択逆転ホームラン
- たからもの
- Go自愛
―Guitarist―
上原子友康