2023年5月13日(土)〜14日(日)に大阪の南港ATCホールで開催されたギター&ウクレレの祭典“サウンドメッセ in OSAKA 2023”。今回は、大盛況に終わった本イベントのレポートをお届けしよう。今回は全22ブースの担当者がイチオシするエフェクターをご紹介!
取材/製品写真=伊藤雅景 上写真=2 of sound photograph
出展ブース/紹介するエフェクター
- Hook Up,Inc./Universal Audio – UAFXシリーズ
- KarDiaN/ADD CBFシリーズ
- KGR Harmony/黒船”KUROFUNE”FUZZ
- idea sound product/IDEA-FZG ver.1(試作機)
- Lee Custom Amplifier/V-808
- Limetone Audio/JACKAL
- Ovaltone/GD-XIII
- Petla & Vin-Antique/Petla – Ive(試作機)
- Soul Power Instruments/JMgeek OverDrive
- Sound Project “SIVA”/Only flowers know our secret talk.
- Sound Wave Laboratory/TUBE DRIVE
- Two-Rock/Vemuram/Vemuram – Budi-G
- ZICCA AX/Smok’it
- アンブレラカンパニー/Empress Effects – Heavy Menace
- エレクトリ/T-REX Effects – BINSON ECHOREC
- シングス/beyond – tube preamp 2S
- パール楽器/WALRUS AUDIO – FUNDAMENTALシリーズ
- マキノ工房/Tube Driver 8
- ヤマハミュージックジャパン/EarthQuakerDevices – Aurelius
- 三木楽器/Revelation Effects – REVENANT Preamp-Boost
- 東京エフェクター/No.8 effects – NEMESIS
- シンコーミュージック・エンタテイメント/Wajimachine
Hook Up,Inc./Universal Audio – UAFXシリーズ
Hook Up,Inc.のブースには、巷で最も注目されていると言っても過言ではない、Universal AudioのUAFXペダル・シリーズがずらり。イチオシは写真中央のコンプレッサー/プリアンプ、Max Preamp & Dual Compressor。往年の名コンプである、UA 1176、LA-2A、Dyna Compという3つのモチーフから好みのキャラクターを選ぶことができるほか、独立した2つのチャンネルで異なる設定をプリセットすることが可能。用途に応じて2種類のコンプを使い分けたり、2つを重ねがけすることもできる、これまでにないコンプ・ペダルだ。写真左はGalaxy ’74 Tape Echo & Reverb(ディレイ/リバーブ)、右はDel-Verb Ambience Companion(ディレイ/リバーブ)で、こちらも注目モデル。
KarDiaN/ADD CBFシリーズ
滋賀県に工房を構えるエフェクター・ブランド、KarDiaN。写真のADD CBFシリーズは、アーティストの要望によって施されていた特注の仕様を、レギュラー・ラインナップとして実現したもの。ペダル下側面に追加された、BLEND、C-LPF、C-VOLという3つのツマミにより、原音のミックスとロー成分のブレンド具合を調整可能になっている。エフェクト音とドライ音の比率を細かく調整することができるため、さらにサウンド・メイクを追求することができるだろう。
KGR Harmony/黒船”KUROFUNE”FUZZ
岩手県の伝統工芸品、“南部鉄器”を使用しているという一風変わったエフェクター・ブランド、KGR Harmony。世界でも類を見ない筐体は、1つ1つ手作業で鋳型(砂型)を作り、そこに鉄を流し込んで整形されたこだわりの逸品。写真はラムズ・ヘッド期のビッグ・マフをモチーフにしたファズ、黒船 “KUROFUNE”で、重厚な見た目のイメージそのままに、タイトなローとバリバリとしたミッドが奏でる壁のような轟音ファズが特徴だ。コントロールはVolume、Fuzz、Toneの3つ。
idea sound product/IDEA-FZG ver.1(試作機)
国産ハンドメイド・ペダル工房、idea sound productのブースでは新たなファズ・ペダルを発見した。IDEA-FZG ver.1の試作モデルで、2019年に発売したIDEA-FZX ver.1のバッファー部分に、ゲルマニウム・トランジスタを3石搭載したものだそう。FZXに比べ、より粗く細かい歪みを生み出すほか、本体側面のトグル・スイッチでバッファーのON/OFFを切り替えることができ、ファズ・サウンドを“激変”させることができる。
Lee Custom Amplifier/V-808
ギター・アンプやエフェクターの設計/改造を行なうLee Custom Amplifierからは、TS-808のサウンドや特性をオール・チューブ回路で再構築したというV-808が登場。コンパクトな筐体から突き出た真空管が目を惹く1台だ。2つのトグル・スイッチは“原音比率upSW”と“Fat SW”で、前者はその名のとおりサウンドに含まれる原音の比率を上げるスイッチで、後者ではアタック時の低音成分を調節できる。
Limetone Audio/JACKAL
国産ハンドメイド・ペダル工房の中でも、特に人気が高いLimetone AudioのイチオシがこのJACKAL(写真右)。過激な歪みサウンドを得意とするディストーションで、ゲインを上げても音が潰れずに、ギターの“バイト感”を損なわないキャラクターが特徴だ。コントロールはLevel、Gain、3EQに加え、ピッキング・ニュアンスへの反応を調節するbiteスイッチ、プレキシ・マーシャルのようなエッジ感を付加できるplexiスイッチを搭載。左のJACKAL MIDNIGHTはベース用だが、重低音にフォーカスする場合はギターでも使用可能とのこと。
Ovaltone/GD-XIII
国内ペダル工房の雄、Ovaltoneが新たに発表したのがこのGD-XIII。モダン系の歪みが魅力である、GDシリーズの後継機である。コントロールは、LEVEL、TONE、GAINの3つに加え、ミニ・トグル・スイッチを2つ搭載。右のスイッチはゲイン量をHigh Gain Wide、High Gain 、Low Gainの3種類から選択でき、左はModern/Classicの2モードから選択できるというものだ。モダンなディストーションから、クラシカルなオーバードライブまでもをカバーする、バーサタイルな歪みペダルと言えるだろう。
Petla & Vin-Antique/Petla – Ive(試作機)
ソングライターとしても活動するビルダーのnanase.が手がけるペダル・ブランド、Petlaの試作オーバードライブ、Ive。いわゆるTS系で、ボリューム、ゲイン、トーンに加え、サウンド全体のコンプレッション感や歪みの質感をコントロールするサチュレーション・カットが搭載された1台だ。写真右端の赤いペダルは、共同出展していた京都のエフェクター・ブランド、Vin-Antiqueのもの。PPSE ’79という歪みペダルで、こちらもTS系。
Soul Power Instruments/JMgeek OverDrive
ペダル・モディファイの先駆け的存在であるSoul Power Instrumentsでは、PENGUIN RESEARCHのギタリスト=神田ジョンのシグネチャーの試作機が展示されていた。このJMgeek OverDriveはトランジスタにゲルマニウムを使用したオーバードライブで、Low、Mid2、Mid1、Highと、ミドルが2種類に分かれているEQセクションが最大の特徴。また、各EQは個別でフリーケンシーが調整可能なので、プラグインのような感覚でサウンドを追い込むこともできるという優れものだ。
Sound Project “SIVA”/Only flowers know our secret talk.
Sound Project “SIVA”では、アニメ風のキャラクターが描かれたエフェクターを多数展開中。美少女イラストが印象的な、写真のOnly flowers know our secret talk.は、明るく煌びやかなサウンドが特徴のコーラスだ。コントロールにはSpeed、Depth、Mix、Low Cut、Levelに加え、揺れ具合の操作方法を“ノブの設定/エクスプレッション・ペダル/筐体右側中央の光センサー”から選ぶトグル・スイッチを搭載。また、Low Cutツマミで低域を最適化することができるため、低音弦のアルペジオなどでも、音が篭らずスッキリとした発音が得られるとのこと。
Sound Wave Laboratory/TUBE DRIVE
ハンドメイド・エフェクター・ブランドのSound Wave lab.では、内部の回路も見えるようなブース展示がされていた。写真は往年の名機Chandler製Tube Driverのサウンドをモチーフにしたオーバードライブ、“TUBE DRIVE”だ。その名の通り真空管が内蔵されたモデルで、ツマミはVOLUME、E.Q、TUBE DRIVEというシンプルな構成。E.Qツマミはトーン調節用のコントロールで、上げていくと独特の色気のあるミッド感が出てくるとのこと。
Two-Rock/Vemuram/Vemuram – Budi-G
今や世界中のプレイヤーから人気を集めている国産エフェクター・ブランド、VEMURAM。写真は2023年6月に発売されたブースター、Budi-Gだ。モデル名の“G”は、わずかな歪み感という意味を持つ“Gritty Gain”の頭文字から取られたもので、コントロールはBoost、GAIN、BASS、TREBLEの3つ。筐体側面にはSAT(サチュレーション)トリマーも搭載しており、歪みの飽和感を微調整することができる。単体で歪ませるというより、真空管アンプやドライブ系ペダルと組み合わせた際のナチュラルなブースト感を味わうのが正解だ。
ZICCA AX/Smok’it
Charがプロデュースするオリジナル・ブランド、ZICCA AXの新製品として発表されたのは、シグネチャー・オーバードライブであるSmok’it。アンプ本来の底力を引き出すナチュラルな歪みが特徴で、ピッキング・ニュアンスを繊細に表現したいプレイヤーにぴったりの1台だ。回路デザインはチューブスクリーマーを設計した田村進が担当。演奏中に足でコントロールできるように、大きめのGAINツマミを左下に設置したほかイン/アウト・ジャックにSTタイプの舟形ジャックを採用するといった遊び心も。
アンブレラカンパニー/Empress Effects – Heavy Menace
アンブレラカンパニーが取り扱うカナダのエフェクター・ブランド、Empress Effectsからは、ハイゲイン・ペダルがお目見え。タトゥー・デザイナーによって描かれた邪悪なイラストがクールなこのHeavy Menaceは、同社を代表する2chハイゲイン・ディストーション=HEAVYにアップデートを施した1台だ。3バンドEQ、gain、weight、output、gate thresh、mid freqの8つのツマミを搭載しているうえ、channelスイッチではゲインの可変幅を調整できたりと、サウンド・メイクの幅は非常に広い。また、ノイズ・ゲートは単体での使用も可能という点が驚きだ。
エレクトリ/T-REX Effects – BINSON ECHOREC
エレクトリのブースではデンマークのエフェクター・ブランド、T-REX Effectsの新製品が鎮座。こちらはBINSON ECHORECというモデル名の通り、テープ・エコーの名機であるECHOREC(1960年代の個体)を新たな解釈でペダル化したものだ。磁気ディスクを使用することでオリジナルの暖かいサウンドを再現しつつも、XLR端子やエクスプレッション・ペダルのイン/アウトなど、現代のニーズにも対応している。まさに“ビンテージとモダンの良いとこどり”。2023年夏に発売予定なので、ディレイ・フリークはマストでチェック!
シングス/beyond – tube preamp 2S
beyondはソニー出身のエンジニアが中心に開発・設計を行なうエフェクター・ブランドで、写真のように真空管が剥き出しのまま筐体に挿さったモデルを複数ラインナップしている。今回のイチオシはこのtube preamp 2sで、原音を変えることなく、真空管独特のキャラクターを付加することが可能なプリアンプだ。ブースト・ツマミのほかに3バンドEQを搭載し、より環境に合わせたトーンを作り込めるだろう。デジタルのシステムに“隠し味”として追加するのも良さそうだ。ちなみに真空管は全モデルでElectro-Harmonix製を採用。
パール楽器/WALRUS AUDIO – FUNDAMENTALシリーズ
パール楽器のブースではWalrus Audioの“Fundamental”シリーズがずらり。左上から時計回りに、リバーブ、ディレイ、フェイザー、コーラス、オーバードライブ、ディストーション、ファズ、トレモロと、合計8モデルがラインナップされていた。これまでのWalrus Audioと言えば、筐体ごとにサウンドを想起させるようなイラストが描かれた個性派ペダルが多い印象だったが、本シリーズは潔いシンプルなデザインと、スライダー式のコントロールを採用している点が最大の特徴。共通の仕様による低コスト化を実現しており、お手頃な価格も魅力だ。
マキノ工房/Tube Driver 8
大阪を拠点にこだわりのペダル作りを続けるマキノ工房の新製品が、このTube Driver 8。ビンテージのTS808と、トランスペアレント系が持つ“透明感”の融合を目指したオーバードライブだ。回路は、TS系をモチーフにしたTube Driverシリーズにアップデートを施したもので、おいしい中域はそのまま、ハイをよりくっきりさせたチューニングがポイントとのこと。シングルコイルでも高域が痛くなりすぎず、Toneを下げても抜群な音の抜け感があるそう。Level、Tone、Driveというシンプルなツマミ構成なので、直感的に操作できそうだ。
ヤマハミュージックジャパン/EarthQuakerDevices – Aurelius
アメリカ・オハイオ州発のエフェクター・ブランド、EarthQuaker Devicesが放つコーラス・ペダル、Aurelius。コンパクトな筐体ながら、コーラス、ビブラート、ロータリーの3モードにそれぞれ6つのプリセットを備えているため、“空間系マルチ”的な役割も担えそうだ。飛び道具的なアクの強いモデルを得意とするEQDだが、本機は“どんなセッティングでも使える音が売り”とのことで、ビンテージ・モデルをモチーフとしつつも、抜けの良いブライトな質感を実現。現代の複雑なアンサンブルの中でも埋もれずに存在感を発揮してくれることだろう。
三木楽器/Revelation Effects – REVENANT Preamp-Boost
三木楽器のブースではこんなものを発見。ハイエンド・ケーブルで知られるRevelation Cableが新たに立ち上げたエフェクター・ブランド、Revelation Effectsの最新モデルだ。このREVENANT Preamp-BoostはVOLUME、GAIN、Low、Mid、Highの3バンドEQを備えるプリアンプ・ペダルで、ゲインをプッシュするブースト・チャンネルを搭載。各ミニ・スイッチは、GAINノブに作用するクリッピング・スイッチとBOOST時の低音成分を調節するハイ・パス・フィルターのオン/オフとなっている。
東京エフェクター/No.8 effects – NEMESIS
杉並区に居を構えるエフェクター専門店、東京エフェクター。写真は同店が主催した「エフェクタービルダーズ・コンテスト」の“ハイゲイン”大会で優勝を勝ち取ったNo.8 effectsによる初の市販モデル、その名もNEMESISだ。ヴィジュアル・ロック・バンド、DのギタリストであるRuizaのシグネチャー・ディストーションで、Volume、Gain、Toneを、低域と高域で別々に調節できるという変わり種。多弦ギターのような広いレンジのサウンド・メイクに、新たな可能性を感じさせる1台だ。2023年9月9日に発売予定で、予約購入者のみが参加できるインストア・イベントも開催予定とのこと。
シンコーミュージック・エンタテイメント/Wajimachine
シンコーミュージック・エンタテイメントのブース。本機は同社のエフェクターブックと人間椅子のギタリスト=和嶋慎治のコラボレーションによって生まれたWajimachineの弥勒。オーバードライブにワウを半固定したトーンをミックスするという、独創的な発想の1台だ。和嶋とも親交の深いChocolate Electronicsが製作を手掛けており、筐体デザインのみならず、パッケージにまでこだわったという逸品だ。
■ サウンドメッセ in 大阪 2023 公式サイト
https://sound-messe.com/