ミヤがMUCCの過去作再現ツアーで使用したギター、サウンド・システム ミヤがMUCCの過去作再現ツアーで使用したギター、サウンド・システム

ミヤがMUCCの過去作再現ツアーで使用したギター、サウンド・システム

MUCCの過去作再現ツアー“Timeless”でミヤが使用した最新機材を紹介。ギター8本、アンプ、キャビネット、マイク・プリアンプ、そして新しく導入したペダルまで、余すところなく解説していこう。

取材/文=伊藤雅景 ギター写真=星野俊 機材写真=本人提供

Guitars

Fender/Limited Ken Stratocaster Experiment #1

Fender/Limited Ken Stratocaster Experiment #1(前面)
Fender/Limited Ken Stratocaster Experiment #1(背面)

幅広いサウンド・バリエーションでツアーを支えた1本

Ken(L’Arc-en-Ciel)のシグネチャー・モデル、Limited Ken Stratocaster Experiment #1。ライヴ、レコーディングともに登場頻度が高く、過去作再現ツアーでは“MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜是空・朽木の灯〜”以外のすべてで使われた。“爆音でも耳に痛くなく、音量を下げても存在感が残るギター”だと語っており、ピッキング・ニュアンスへの追従性も高いとのこと。ピックアップはおもにリア+センターのハーフ・トーンを使用。ミヤは、本器の特色の1つであるフロントとリア・ピックアップのブレンダーで、リア・ピックアップの配分を下げているそうだ。ちなみに、改造点はなく、フル・オリジナルの状態。


Fender/Gold Foil Telecaster

Fender/Gold Foil Telecaster(前面)
Fender/Gold Foil Telecaster(背面)

Kenシグネチャーの要素を取り入れたテレキャスター

“MUCC 25th Anniversary TOUR「Timeless」〜鵬翼・極彩〜”で登場したGold Foil Telecasterは、2023年にフェンダーから発売されたGold Foil Collectionの1本。ミヤは、シングルコイルのテレキャスターよりもウォームなサウンド・キャラクターが欲しい際に本器をチョイスしている。購入時はハイ・エンドが硬い印象だったが、コンデンサーをLimited Ken Stratocaster Experiment #1に搭載されているものと同じPure Vintage “Hot Rod” Capacitorに交換したところ、耳に痛い帯域が抑えられ、使いやすくなったそう。


Gibson/1987 Les Paul Standard

Gibson/1987 Les Paul Standard(前面)
Gibson/1987 Les Paul Standard(背面)

再現ツアーでスタメン入りを果たした借り物のレス・ポール

インディーズ時代のバイト先の先輩から長期間借り受けている、1987年製のレス・ポール。本器は“MUCC 25th Anniversary TOUR「Timeless」〜鵬翼・極彩〜”、“同〜志恩・球体〜”で登場した。ピックアップは頻繁に交換するそうで、写真で確認できるセイモアダンカンのSH-4 JBは“ギブソンらしさ”が欲しい時に使用。モダンなハイ・ゲイン・サウンドが必要な際はフィッシュマンのFluence Classic Humbuckerに載せ替えている。ミヤ曰く“ビンテージのレス・ポールほど枯れていないが、バランス感が良いギター”とのこと。


Brian Moore Guitars/i2000 i7

Brian Moore Guitars/i2000 i7(前面)
Brian Moore Guitars/i2000 i7(背面)

ミヤの7弦の歴史を語るうえではずせない1本

ミヤが2001年に購入した初めての7弦ギター、Brian Moore Guitarsのi2000 i7。何百本ものライヴ、ツアーで酷使されてきた1本で、2007年あたりまでの音源で聴けるギター・サウンドは、ほぼ本器のもの。“MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜是空・朽木の灯〜”でも登場したが、ツアー・ファイナルで披露した「9月3日の刻印」の演奏時に故障してしまい、現在は長期メンテナンス中。修復が難しい不具合があるそうで、今回のツアーでライヴ現場は勇退。今後はレコーディング専用器となる予定だ。


Sugi Guitars/DH500C

Sugi Guitars/DH500C(前面)
Sugi Guitars/DH500C(背面)

ラウドなサウンドを奏でる6弦ギター

ミヤが“初めて弾いたSugiのギター”だと語るDH500C。メタリックな曲が多い“MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜志恩・球体〜”で活躍した1本だ。モダンでラウドな楽曲ではHapas Guitarsやdragonflyのモデルを使うことが多いが、本器はそれらよりも“ギターらしい部分が出てくれる”とのこと。ただ、オリジナルの状態だといなたすぎるという理由で、ピックアップがフィッシュマンのFluence Classic Humbuckerに交換されている。


c.s.beth/B by W BW-910

B by W/BW-910(前面)
B by W/BW-910(背面)

大阪のギター工房お手製の、一味違うセミアコ

アコースティック・ギター、ウクレレをメインに取り扱う、大阪に本拠地を構えるギター工房、シーエスベスが手がけたセミアコ。バラード曲が多い『鵬翼』『極彩』の再現に使う箱物のギターを探していたところ、中古で販売されているのを偶然見つけたそう。“クラシック・ギターをエレキ・ギターに変換したような弾き心地”とミヤは語っており、ボディ・シェイプが近いES-335などとはサウンド・キャラクターもまったく異なるそうだ。ピックアップはリアがメインで、リード・トーンの際はフロントに切り替えている。


YAMAHA/Revstar RSP02T

YAMAHA/Revstar RSP02T(前面)
YAMAHA/Revstar RSP02T(背面)

“主張しすぎないサウンド”が活躍した、元楽屋用ギター

“MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜カルマ・シャングリラ〜”の途中で、楽屋用ギターからステージ用へと昇格したヤマハのRevstar RSP02T。ミヤ曰く“ラウドすぎないサウンドで、良い意味で主張が少ないクランチ〜オーバードライブが鳴ってくれるギター”とのこと。本器に搭載されたヤマハ独自開発のP-90タイプのピックアップは、オールドな雰囲気も感じる音色だそう。ちなみに、ミヤは同シリーズのRSP20も所有している。


PRS Guitars/SE Paul’s Guitar

PRS Guitars/SE Paul’s Guitar(前面)
PRS Guitars/SE Paul’s Guitar(背面)

打ち込みにもマッチする、安定感のある1本

2023年10月頃に導入したSE Paul’s Guitar。“MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜カルマ・シャングリラ〜”は打ち込みのサウンドが多かったため、その楽曲に馴染む、安定感のあるギターを求め購入したという1本だ。ミヤは以前、PRSのギターをメインで使っていたが、“ピッキングのテンション感をダイレクトに伝えるプレイでは優等生すぎた”と語っている。そのブレなさが今回のツアーで重宝したようだ。“ラウドなリフも弾くけど、メロディがメインの曲”で活躍するとのこと。

Amplifier

MesaBoogie/Dual Rectifier Road King II Head

MesaBoogie/Dual Rectifier Road King II Head

4チャンネル仕様のモンスター級メサ・ブギー

MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜志恩・球体〜”から、ミヤの新たなメイン・アンプとして導入された、メサ・ブギーDual Rectifier Road King II。それまで使用していたTriple Rectifierと比べて、サウンドのまとまりやギターらしさがグッと出てくれるそう。ミヤ曰く“Triple Rectifierのルーズでラウドな低音感も好きだが、Road King IIのほうがよりタイトで、美味しいところが出てくれる”とのこと。

本機は4つのチャンネルを搭載しており、それぞれクリーン、ファズ、ディストーション、リード用と音色を使い分けている。3チャンネル仕様のTriple Rectifierでは、クリーン・サウンドとファズ・サウンドをクリーン・チャンネル1つで兼用していたが、どちらを重視してセッティングをするべきか迷っていたそう。その悩みは、チャンネルが1つ多いRoad King IIを導入することで解消された。

また、チャンネルごとに別々の真空管を選べるのもRoad King IIの特徴。クリーン〜クランチ・サウンドではEL34、ディストーションでは6L6をチョイスすることが多いようだ。

MesaBoogie/Dual Rectifier Road King II 2×12 Combo
ステージ裏のラックには、サブ・アンプとしてRoad King IIのコンボ・タイプが用意されていた。

Cabinet

Bogner/412SL 4×12 Cabinet

Bogner/412SL 4×12 Cabinet

クリアなサウンドを出力する4発キャビネット

“MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜カルマ・シャングリラ〜”から登場したボグナーの412SLキャビネット。本人曰く“マーシャルのキャビネットに感じる飽和感やルーズさが、もう少ししっかりして、音像はクリア”とのこと。購入時はインプットが4オームだったが、利便性を考え16オームに改造されている。

2023年2月の“MUCC TOUR 2022 「新世界」〜Beginning of the 25th Anniversary〜”のリハーサル時には左上のスピーカーをマイキングしていたが、“MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜カルマ・シャングリラ〜”では左下のスピーカーのほうが、曲への馴染みが良かったとのこと。

Mic Preamp & Equalizer

Mic Preamp & Equalizer

ギター・サウンドのトータル・マネジメントを行なうマイク・プリ、イコライザー

【List】
①Solid State Logic/500 Series E EQ Module(イコライザー・モジュール)
②Shadow Hills Industries/Mono Gama(マイク・プリアンプ)
③NEVE/1073DPA(マイク・プリアンプ)

キャビネットをマイクで収音した信号は②と③のマイク・プリアンプで整えられ、ステージ裏にセッティングしているミキサー(Solid State Logic/BiG SiX)でミックスされる。そしてミキサーからの信号は、新たに導入された①で会場に合わせたイコライジングを施され、PA卓へと送られている。

このセクションの詳細は2023年2月に公開した「進化を続ける、ミヤ(MUCC)の巨大なサウンド・システム」の“MIXER & MIC”の項を参照してほしい。

①のソリッド・ステート・ロジックのイコライザー・モジュール(500 Series E EQ Module)は、同社のコンソールSSL4000Eシリーズのチャンネル・ストリップを再現したもの。ミヤがインディーズ時代から慣れ親しんでいたレコーディング・スタジオのコンソールがSSL4000Eだったため、本機を導入したとのこと。

Pedalboard

ペダルボード

【Pedal List】
①MXR/M135 Smart Gate(ノイズ・ゲート)
②Echo Fix/EF-P2 Spring Reverb(リバーブ)
③Cusack Music/Analog Sub Octave Fuzz(ファズ)
④EarthQuaker Devices/Ledges(リバーブ)
⑤EarthQuaker Devices/Zoar(ディストーション)
⑥Third Man/Triplegraph Pedal(デジタル・オクターブ・ペダル)
⑦KarDiaN/CHCI3(オーバードライブ)
⑧KarDiaN/C3H5N3O9(オーバードライブ)
⑨EarthQuaker Devices/Arrows(ブースター)
⑩Empress Effects/Bass Compressor(コンプレッサー)

絶えずアップデートを続けるミヤのメイン・ボード。今回紹介するのは“MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜カルマ・シャングリラ〜”で使用したバージョンだ。

基本的な接続順番などは2023年2月に公開した「進化を続ける、ミヤ(MUCC)の巨大なサウンド・システム」の“PEDALBOARD SECTION”の項で紹介したボードを参考にしてほしい。

今回は新たに導入された10台のペダルを紹介していこう。

  1. MXR/M135 Smart Gate(ノイズ・ゲート)
    ファズを踏む時のみオンにするノイズ・ゲート。ミュートした際のノイズを消す用途で使用している。おもに「サイレン」で活躍。
  2. Echo Fix/EF-P2 Spring Reverb(リバーブ)
    アナサウンズのLe Bon(リバーブ)が故障し本機を導入。ハードな踏み方にも耐える堅牢な作りと、見た目に惚れたそう。ドライ・カットが可能で、ウェット信号のみを出力し、曲間のインプロを演出する際にも使用する。
  3. Cusack Music/Analog Sub Octave Fuzz(ファズ)
    オクターブ下が追加されるファズ。ビット・クラッシャー的なサウンドに低音が合わさったような印象とのこと。ライヴでは「アイアムコンピュータ」などで本機による音が聴ける。
  4. EarthQuaker Devices/Ledges(リバーブ)
    以前は同社製のリバーブ・ペダル、Ghost Echoを使用していたが、6つの音色がプリセットできるという理由で本機をチョイス。
  5. EarthQuaker Devices/Zoar(ディストーション)
    ミヤ曰く、低ゲインでも使える、フレキシブルなディストーション・ペダル。“クランチより歪ませたいけど、アンプのリード・チャンネルより歪ませたくない時に活躍している”とのこと。ミディアム・バラードの楽曲などで使用頻度が高い。
  6. Third Man/Triplegraph Pedal(デジタル・オクターブ・ペダル)
    カッパーサウンド・ペダルズとジャック・ホワイトのコラボによって生まれたデジタル・オクターブ・ペダル。以前から黒い通常版を使用していたが、限定版のホワイト・カラーに買い換えた。2つの内部仕様は同一のはずなのだが、ミヤ曰く“音の抜けが明らかに良くなった”とのこと。
  7. KarDiaN/CHCI3(オーバードライブ)
    クランチ・サウンド用に導入。以前は同じ場所にゲームチェンジャー・オーディオのPLASMA COIL(ファズ)が接続されていた。
  8. KarDiaN/C3H5N3O9(オーバードライブ)
    リード・サウンド用のペダル。後述のブースター⑨と重ねがけすることが多い。以前はJ.Rockett Audio DesignsのARCHER(オーバードライブ)が同じ役割だったが、“ARCHERも良いけど、こっちのほうがもう少し痒いところに手が届く”と本人談。
  9. EarthQuaker Devices/Arrows(ブースター)
    新たに増設されたブースター。前述のオーバードライブ⑧と重ねがけし、リード・サウンドを作り出している。
  10. Empress Effects/Bass Compressor(コンプレッサー)
    “MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜カルマ・シャングリラ〜”から導入したコンプレッサー。ドライブ・サウンドと同じ音量感でクリーン・カッティングを鳴らす際や、“ゲイン感を上げずに前に出したい時”に踏む。7弦も駆使するヘヴィなミヤのアプローチが理由か、コンプレッサーはベース用のほうがしっくりくることが多いとのこと。

作品データ

『Timeless』
MUCC

朱/MSHN-181/2023年12月28日

―Track List―

01.サイレン
02.G.G. -Timeless Ver.-
03.under the moonlight
04.99
05.リブラ -Timeless Ver.-
06.想 -so-
07.ガーベラ -Timeless Ver.-
08.死の産声
09.耀 -yo-
10.路地裏 僕と君へ -Timeless Ver.-
11.Timeless
12.空 -ku- (JaQwa Remix)

―Guitarist―

ミヤ