“ハーフ・トーン”の生みの親? ジミ・ヘンドリックスの改造ストラトキャスター “ハーフ・トーン”の生みの親? ジミ・ヘンドリックスの改造ストラトキャスター

“ハーフ・トーン”の生みの親? ジミ・ヘンドリックスの改造ストラトキャスター

ジミ・ヘンドリックスが使った“スパゲティ・ロゴ”のストラトキャスターに迫る連載企画。今回紹介するのは、ボディに3つのトグル・スイッチは増設された謎のストラトキャスター。ジミはこのスイッチの組み合わせから新たなサウンドの可能性を見出した!?

文=fuzzface66 Photo by Helmut Reiss/United Archives via Getty Images
※文中のギターの年式表記は、各スペックから推測される最も近い年式を採用している。

1964 Fender Stratocaster Olympic White

  • フィニッシュ:ブラック
  • 指板:ラウンド貼りローズウッド
  • 使用期間 : 1967年10月頃~1968年2月頃
1964 Fender Stratocaster Olympic White

ラウンド貼りのローズウッド指板で、12フレットのポジション・マークの間隔が狭く、ピックガード・ビスがセンターPU寄りに位置していることから、スパロゴ最終期の1964年製とみられるオリンピック・ホワイト・ボディのモデルだが、セレクター・スイッチ部に改造が施されている。

“ハーフ・トーン”の可能性を模索した1本?

1967年10月8日のロンドンはサヴィル・シアターや、翌9日のパリ・オリンピア劇場あたりからステージで使われ始めたオリンピック・ホワイトのモデルは、なんといってもスイッチ部に明らかな改造が施されている点が最大の特徴だろう。

改造の詳細は不明だが、小さなトグル・スイッチが3つ付いているということは、3つのピックアップそれぞれに対応した個別のオン/オフ・スイッチの可能性が高い。だとすると、当時のストラトキャスターの3ウェイ・セレクター・スイッチでは裏技(後述する)を使わない限り不可能だった“ハーフ・トーン”も出力できる構造になっていたと思われる。

そして興味深いのが、この時期、ジミはセカンド・アルバム『Axis : Bold As Love』のレコーディング真っ最中で(大半の曲をこの10月中にレコーディングしている)、完成したアルバムのギター・サウンドの随所に、それまでのシングル曲やファースト・アルバムの曲にはない“ハーフ・トーンのような”ニュアンスが感じ取れるという点である。

特に「Wait Until Tomorrow」、「Little Wing」、「One Rainy Wish」などのバッキングは最も顕著だろう。

これらの“ハーフ・トーン”と思しきニュアンスの正体が、この改造モデルによるピックアップの自由な組み合わせによって得られたサウンドだったのでは?と筆者は推測しているが、どうだろうか?

これによってジミは、通常の3ウェイ・スイッチ(CRL製)でも、レバーのスプリングを取りはずせばクリックがなくなり、容易にハーフ・トーンが出せることに気づいたのかもしれない。

では果たして、このモデルの改造は誰が行なったのか? おそらく、一時期ジミのギターのセット・アップに関わったと言われるビル・ローレンス氏あたりではないだろうか?

なお、このモデルには乱暴に扱われた形跡はなく、12月4日のニューキャッスル・シティ・ホールなどでもステージで使用されたほか、それ以外の会場でもステージ後方にサポート用として立て掛けられている姿が翌1968年2月頃までは確認できる。