アグレッシブなファズ・サウンドが満載のアルバム『Electric Man』をリリースした、ロック・ギタリスト、DURAN。そのサウンドを生み出した彼のアンプとペダルボードを紹介しよう。
文=福崎敬太 撮影=大谷鼓太郎
DURAN’s Amplifier
Fender/’65 Super Reverb
数多のライブで育った、“速く鳴る”アンプ
長年メイン・アンプとして活躍する、フェンダーの10インチ4発コンボ、’65 Super Reverb。彼が所有する1964年製のSuper Reverbはトラブルも多く、その代用としてライブのために入手したのがこのリイシュー・モデルだった。
ノーマル・チャンネル側をバイパスし、ビブラート・チャンネル側の1ch仕様に変更されている。これにより片側のチャンネルにパワーが集中し、“速く鳴る”ようになったという。また、ライブで頻繁に使用することで、スピーカーの鳴りそのものも良くなってきたようだ。
アルバム『Electric Man』のレコーディングでも本機はメインで使われたほか、フェンダーPrincetonと2台を同時に鳴らすこともあったそう。それにより、“収まりきらない音を録りたかった”という。
インプット・チャンネルやセッティングは以下のとおり。
- チャンネル:VIBRATO 1
- BRIGHTスイッチ:オフ
- VOLUME:7
- TREBLE:5
- MIDDLE:4
- BASS:4
- REVERB:3.5
- SPEED:7
- INTENSITY:6
DURAN’s Pedalboard
【Pedal List】
①Jim Dunlop/EJ-F1 Eric Johnson Signature Fuzz Face(ファズ)
②KORG/Pitchblack XS(チューナー)
③VOX/Clyde McCoy Wah(ワウ)
④Gamechanger Audio/Bigsby Pedal(トレモロ)
⑤Electro Harmonix/micro POG(オクターバー)
⑥FAT/カスタム・スイッチャー
⑦Beetronics/Swarm(ファズ/ハーモナイザー)
⑧Gamechanger Audio/Third Man/Plasma Coil(ディストーション/ファズ)
⑨Death By Audio/Absolute Destruction(ファズ)
⑩Z.Vex/Vexter Woolly Mammoth(ファズ)
⑪idea sound product/IDEA-TBX ver.1(ブースター)
⑫Ibanez/TS-9(オーバードライブ)
⑬Electrograve/Quad Oscillator(オシレーター)
⑭BOSS/DD-3(ディレイ)
⑮Addictone/Duran Mojo Wah(オート・ワウ)
個性の強いエフェクターが並ぶ、DURANのライブ用ペダルボード。『Electric Man』のレコーディングはセッションをしながら録音したパートも多く、このボードを足下に置いて操作しながら弾くことも多かったそうだ。
接続順は①〜⑫で、後述するカスタム・スイッチャー⑦にオシレーター⑬とディレイ⑭が接続されている。シグネチャー・オート・ワウ⑮はつながっていないが、ソロ・ライブで歌いながらだとワウを操作できない際などに使用する。
ここからは、各ペダルの使い方を見ていこう。
多様なファズを使い分ける
まず5台あるファズについてだが、長年愛用する①がメイン。ツマミはVOLUME、FUZZともにフルで、ギター側のボリュームを下げてクランチ気味に、上げてブーミーなファズ・サウンドと、手元でニュアンスを調整する。色々と試した結果、①が先頭で後段にチューナー②のバッファーを置くのがベストだったそうだ。
ハーモナイザー・ファズ⑦はソロや上モノのリード用に使用。ハーモニーのインターバルを設定する“SPECIES”は“7”を選択している。
ジャック・ホワイトの“Third Man Records”とのコラボで生まれたディストーション/ファズ⑧は、おもにリフで使用。右側のフットスイッチをアンラッチに設定しており、踏んでいる間だけ1オクターブ下、2オクターブ下、1オクターブ上が出る。「Shades Of Night」のアウトロ前に聴けるノイズが、これによるサウンドだ。
GAINをフルにして“エグい”ファズ・サウンドを生み出すのが⑨。“OVERLOAD”の設定によって様々なタイプのファズ・サウンドが得られるとのことで重宝している。ライブでは「Moldy Chips」で使用。
ベース用ファズの⑩は低音域が安定しているのがお気に入り。ブチブチしたファズで、本人曰く“たいしたことがないリフでもカタチになる(笑)”。⑧と比較するとスマートでオシャレな印象があるようで、60年代のサイケ・ロックで使われているようなファズ・サウンドが得られるとのこと。また本機でソロをとる時は、ブースター⑪かオーバードライブ⑫で音量をプッシュする。
なお、⑪はクリーン・ブースター的な役割で、⑫はブリッとさせたい時と踏み分けている。シーンによっては両方をオンにすることもあるそうだ。
振り切った飛び道具の使い方
ボード中央が飛び道具ゾーンで、特に重要な役割を果たしているのがカスタム・スイッチャー⑥。稲葉浩志のサポートも務めるDURANが、ディレイ⑭の発振音をギミックとして使用する際に、忙しなく2回ペダルを踏んでいるのを見たB’zのテック・チーム=FATが、1回の動作で済むようにと制作してくれたものだ。
2つのロータリー・スイッチは踏んでいる時だけオンになる仕様で、右側がオシレーター⑬、左側が前述の発振用ディレイ⑭を作動させる。これにより「Sapient Creature」のオシレーター・サウンドなども、ライブで再現可能になった。
⑤は塗装が剥がされているが、エレクトロ・ハーモニックスのmicro POG(オクターバー)。「Raging Fire」のレコーディングで使用。トレモロ・ペダル④では、ワーミー的な使い方や、バネの戻りを利用した飛び道具的なアプローチを生み出す。
なお、パワーサプライはフリーザトーンのPT-3DとPT-5Dを使用。
Fulltone/TUBE TAPE ECHO
ライブで使用するフルトーンのテープ・エコーは、『Electric Man』のレコーディングでも大活躍だった。ウェット音だけを出力できるモードも使い、ボーカルやドラムのエコーにも使ったという。
曰く“本当に(テープが)回っているのが大事なんですよ。プラグインやエフェクターはディレイタイムが設定どおりだけど、これは「今日どういう感じになるか」が想定できない。そういうところが良いんですよね”とのこと。
“The Venomous Rift in Humanity Tour”
日程/会場
- 2024年1月18日(木)/Le Yéti, Lille(フランス)
- 2024年1月21日(日)/Couleur Café, Arras (フランス)w/ Le Réparateur
- 2024年1月24日(水)/Aux Enfants Terribles, Marquette-lez-lille(フランス)
- 2024年1月27日(土)/Joe Tex, Lille (フランス)
- 2024年2月3日(土)/Amul Solo, Lille(フランス)
- 2024年2月18日(日)/宇都宮 Heaven’s Rock
- 2024年2月23日(金)/名古屋 LIVE&BAR SlowBluse
- 2024年2月24日(土)/大阪 TWINREVERB
- 2024年2月25日(日)/神戸 PUB CHELSEA
- 2024年3月20日(水)/金沢 Jealous Guy
- 2024年3月21日(木)/長野 柴崎
- 2024年3月23日(土)/渋谷 B.Y.G
※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や公演詳細はDURAN公式HPをチェック!
DURAN公式HP https://duranguitar.com/tour/
作品データ
『Electric Man』
DURAN
Electronic Gospel Records/DRNC-2301/2023年11月29日リリース
―Track List―
- Raging Fire
- Shinigami
- Moldy Chips
- Sapient Creature
- Sweet Piñata
- 8 Legs, 7 Sins
- Electric Man
- Real Eyes
- Shades Of Night
- Ainotameni
- 2AM Love’s Code and Law
- 12. Too Late, You Waste
―Guitarist―
DURAN