バラエティに富んだギター関連のエフェクトやアクセサリーをラインナップするブランド、NUX。今回は同社のフラッグシップに位置する多機能マルチ・エフェクター、TRIDENTをギタリストの同道公祐に本機を試奏してもらい、その使用感やサウンドをレビューしてもらった。
取材・文=伊藤雅景 人物撮影=大谷鼓太郎
NUX TRIDENT
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同道公祐
NUX
TRIDENT

専用PCアプリとの連動で幅広いサウンドメイクを可能にした
最新マルチ・エフェクター
TRIDENTは、アルミ・ダイキャストの堅牢なボディに、NUXが誇るギター用アンプ・モデリング(27種)、エフェクト(32種)、2種類のイコライザー、ノイズ・ゲート、ギター用キャビネットIR(27種:マイク4種×マイク・ポジション3種の選択可)を詰め込んだ、超多機能なフロア・タイプのマルチ・エフェクターだ。

心臓部には低レイテンシーを実現するパワフルなDSPが2基搭載されており、NUX独自のアンプ・モデリング技術“TSAC-4K(ホワイト・ボックス物理モデリング・アルゴリズム)”を軽快に動作させる。これにより、緻密にアンプ・モデルを再現したリアルで鮮やかなサウンドが楽しめる。
本体前面に搭載された10個のフット・スイッチには、それぞれバンク切り替え用のスイッチ×2、パッチ切り替え用のスイッチ×3、エフェクト・チェーン内に設定した空間系エフェクトやモジュレーションなどを個別にオン/オフできるスイッチ×5(REVERB、DELAY、MOD、FX、BOOST)が割り当てられる。BOOSTスイッチを長押しするとチューナーを呼び出せたり、FXスイッチの長押しでは最長30秒のルーパー機能も使用可能。

フロント・パネルには、GAIN、LEVEL、TREBLE、MIDDLEなど、ギタリストには馴染みのある各種コントロールが並んでおり、操作の階層も少なく、直感的なサウンドメイクができる。ここでは調整しきれない詳細なパラメーターは、TRIDENTのPC専用ソフト“TRIDENT Editor Software”でセッティング可能。
PC専用ソフト“TRIDENT Editor Software”でコントロールできる主要な機能は以下のとおり。
- ギター・アンプ・モデリング(27種)と、エフェクト(32種)、2種類のイコライザー、ノイズ・ゲート
- ギター用キャビネットIR(27種:マイク4種×マイク・ポジション3種の選択可)
- サードパーティ製のIRデータのロード
- 10つの独立したシグナル・ブロック(NR、BST、EFX、AMP、CAB、EQ、S/R、MOD、DLY、RVB)の管理、並べ替え
- 多くのギタリストが作成したパッチの保存や編集
- USB端子を使用した、USBオーディオ・インターフェースとしての機能や、リアンプにも対応
実際のライブで重宝する多彩なインプット/アウトプットもTRIDENTの魅力の1つ。エクスプレッション・ペダル用の端子はもちろん、ステレオ出力対応の2系統のOUTPUT端子、エフェクト・チェーン内に好みのコンパクト・エフェクターを配置できるセンド/リターン端子なども完備。

また、PAシステムにアンプ・シミュレーターで作り込んだ音色を直接送ることもできるステレオ対応のDIアウト端子が装備されているのも嬉しいポイント。MIDIイン/アウトは、1/8” – 5pin規格に対応しており、MIDIアダプター・ケーブルも付属する。
Total Impression

ギターのサウンドで一番大切な
“煌びやかさ”がしっかり感じられます。
普段は実機のアンプとエフェクター・ボードでプレイすることが多いんですが、まずTRIDENTの第一印象として、“何も違和感がなかったこと”に驚きました。今回試奏させていただくにあたり、自分がよく使う機材の組み合わせをイメージしてプリセットを作ってみたんですが、実機のアンプを鳴らしている時と同じような感覚で弾くことができたんですよね。ツマミの挙動も似ていて、“これは凄いな……!”と思いました。
ギターのサウンドで一番大切な部分は、“音色の煌びやかさ”だと思っているんですけど、そこはもちろんしっかり再現されていました。あとは、歪ませた時に膨らんでくる音の暖かさもかなりリアルですね。アンプをマイキングしたあとのトータルのサウンドが、ライブで弾いている感じに非常に近かったです。
ピッキングにもしっかり追従してくれます。例えば、ハイゲインなセッティングの状態でギター側のボリュームを絞ると、しっかりとウォーム感が残ったクリーン・サウンドに変化してくれる。デジタル系の機材だと、そのあたりが再現しきれていない機種も多かったりするんですが、TRIDENTは自分の好みなサウンドになってくれました。

フロント・パネルのノブで直感的にサウンドメイクができるところも嬉しかったですね。僕は本当にアナログ人間なんですが(笑)、説明書を読まなくても快適に使えました。個人的には、本体のコントロールで大まかに音色を作ってから、専用アプリ“TRIDENT Editor Software”でセッティングを追い込むっていう使い方がハマりましたね。
様々な機能があるので、本当に用途が無限大ですよね。例えば、ギターを始めたてで“憧れの機材が欲しいけど手に入らない”っていう人は、まずTRIDENTで色んなモデリングを試して、“この機材はこういうニュアンスなんだ”という勉強をしてから実機を買う……みたいな流れもオススメです。
それと普段はアナログ機材を使っている人は、それらのバックアップとして導入するのもアリだと思います。デジタル機材に慣れている人はもちろん、アナログなギアが好きな人にもオススメできる即戦力な1台ですよ。
NUX
TRIDENT
【スペック】
●電源:9V 500mA DCセンター・マイナス(NUX ACD-006A)
●サイズ:312(W)×164(D)×65(H)mm
●重量:1.65kg
●付属品:ACアダプター(ACD-006A)、USBケーブル、MIDIアダプター・ケーブル×2
【参考価格】
オープン
【問い合わせ】
株式会社エレクトリ https://electori.co.jp/nux/index.htm
同道公祐
どうみち・こうすけ◎1996年生まれ、和歌山県出身。Ichiroやスティーヴィー・レイ・ヴォーンから影響を受け、高校時代からブルースに触れる。SNSにアップした演奏動画が話題になり、金子ノブアキ率いるRED ORCAへの参加を始め、IKE BAND、Aahumなど様々なプロジェクトで活動中。メイン・ギターは1963年製ストラトキャスター。