ザ・ローリング・ストーンズのギターにまつわるストーリーを探っていく連載。今回は1960年代中期にブライアン・ジョーンズとキース・リチャーズの2人が愛用したギブソンのファイアーバードⅦについてのエピソードをお伝えしよう。
文=鈴木伸明 Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images
アメリカ・ツアー中に立ち寄ったギブソンでファイアーバードを入手

1963年6月、本国イギリスにて「Come On」でデビューしたローリング・ストーンズは、翌64年4月にアルバム『The Rolling Stones』を発表。
1ヵ月後の5月には一部の収録曲を変更し、『England’s Newest Hit Makers』というタイトルでアメリカでのアルバム・デビューを果たし、6月には初の全米ツアーを敢行した。このあたりのスピード感は、当時のレコード会社がバンドにかなりの力を入れていたことがうかがわれる。
このアメリカツアーの際に、彼らのアイドルでもあったマディ・ウォーターズやチャック・ベリーが在籍したシカゴのチェス・レコードでレコーディング・セッションを行なっている。例えるなら、日本の野球少年が伝統のある大リーグの球場で試合をやったような、まさにエポックメイキングな出来事だったに違いない。
翌65年、3回目となるアメリカ・ツアー(カナダを含む)の5月9日シカゴ公演を終えた翌日に、再びチェス・レコーズを訪れた記録が残っている。ここでは「Mercy, Mercy」などの『Out Of Our Heads』(1965年)収録のナンバーに加え、「(I Can’t Get No)Satisfaction」(発表されたのとは別アレンジ・バージョン)もレコーディングされた。
そして、チェスでのレコーディングを終えてシカゴを離れたあと、同じミシガン州のカラマズーにあったギブソンを訪ねている。そこで出会ったのが、63年に発売されたファイアーバードⅦだった。キース・リチャーズとブライアン・ジョーンズはそれぞれ1本ずつ入手。
さらに当時、ギブソン/マエストロ名義で発売されていたファズ・ペダルのFZ-1 Fuzz Tone、ギター・アンプのTitan ⅤとGA-95RVT、65年に発売されたばかりのアコースティック・ギターのヘリテージをギブソンから提供してもらったという記録が残っている。
ここで手に入れたFuzz Toneが、ロック・ファンなら誰もが耳にしたことのある偉大なリフを生み出すことになるのだ。