エピフォン・カジノの生産地と仕様の変遷を辿る企画。今回は1961~1969年のUSA製ブルー・ラベルの時期を紹介。
文:大久達朗 機材写真:星野俊 機材協力:Woodman
*本記事は、ギター・マガジン2025年6月号の特集『Epiphone – Now and Then』内の「カジノで辿るエピフォンの生産場所と仕様変遷」を転載したものです。
1961~1969年 USA製ブルー・ラベル
カラマズー工場で製造された青ラベルの“USA期”

エレキ・ギター史に名を残す名器エピフォン・カジノは1961年に登場した。とはいえ、誕生時点ですでにこのギターには雛形と呼べるモデル=ギブソンES-330(58年発売)が存在し、その別バリエーションとして誕生。ゆえに構造はギブソンES-330を全面的に踏襲しているが、当時のギブソン社の工場、通称“カラマズー工場”のプライドそのままの高クオリティで製造され、決して廉価版製品ではなかった(発売当時の価格は275ドル。当時のギブソンES-330と同じだった)。
61年製の初代カジノはずんぐりとした見た目の“ファット・ヘッド”を持ち、そのヘッドの表面には鉄製ロゴ・プレートが貼られていた(通称ビキニ・ロゴ/翌年廃止)。ピックガードは鼈甲柄、ネック・インレイはドット、PUカバーは黒、ネックは16フレット・ジョイントというスペックだった。
現在でもお馴染みの細長いヘッド形状に変更されたのは63年。またこの頃ネック・インレイがひし形(オフセット・ダイアモンド)に、ピックガードが白に、そしてPUカバーが金属製(ニッケル)へと変更される。65年にはPUカバーのメッキがクロームへと変更されているが、ここは数多のビートルズ・マニアを悩ませるタネとして有名なポイントだ。65年製として知られるジョン・レノン&ジョージ・ハリソン所有のカジノは共にニッケル・カバー。つまり65年製カジノにはその両方が存在し、ドンズバを求めるマニアは血眼になって“65年製ニッケル・カバー”の個体を探す旅を強いられるからだ。なお同時期のギブソン製品同様、65年にはヘッド・アングルが17度から14度へと変更された。
基本的にカジノは製造開始から2種類のサンバースト(赤みが強く明るいロイヤル・タンと、黒味の強いシェイデッドの2種)だったが、66〜67年頃からはロイヤル・タンが廃止され、代わりにチェリーレッドが登場。68年にはネック・ジョイントの位置が19フレットへと変更。これまでと比べてネックが長く見えることからこの時期のカジノを“ロング・ネック”と呼称することもあるが、これは類似品であるギブソンのES-335/345、もしくはエピフォン・リヴィエラ、シェラトンなどとの構造の統一化によるコストダウンを図ったもの。しかしその甲斐も虚しく、エピフォン・カジノは69年に米国での製造が中止された。
60年代カラマズー製カジノの共通点として、2点留めのトラス・ロッド・カバー、ボディ内に貼られた青いラベルが挙げられる。ただし“ブルー・ラベル”とは日本製カジノが登場して以降のモデル(次項参照)を指す言葉であり、USA製は“USA期”だけで話が通じることは言うまでもないだろう。
最後に余談。エピフォン・カジノの魅力をビートルズに最初にもたらしたのはポール・マッカートニーであり、彼は今もなお“ギターを1本選べと言われたらカジノ”と答える。今も彼が所有するカジノは、ファット・ヘッドでビグスビー付きの62年製である。








ギター・マガジン2025年6月号
表紙/特集
EPIPHONE – NOW&THEN
エピフォン〜継承されるギブソンの魂。
2025年5月13日(火)発売