カジノで辿るエピフォンの生産場所と仕様変遷:1980~1987年 日本製ベージュ・ラベル(マツモク製) カジノで辿るエピフォンの生産場所と仕様変遷:1980~1987年 日本製ベージュ・ラベル(マツモク製)

カジノで辿るエピフォンの生産場所と仕様変遷:1980~1987年 日本製ベージュ・ラベル(マツモク製)

エピフォン・カジノの生産地と仕様の変遷を辿る企画。今回は1980~1987年の日本製ベージュ・ラベルの時期を紹介。

文:大久達朗 機材写真:星野俊 機材協力:KALEIDO GUITAR
*本記事は、ギター・マガジン2025年6月号の特集『Epiphone – Now and Then』内の「カジノで辿るエピフォンの生産場所と仕様変遷」を転載したものです。

1980~1987年 日本製ベージュ・ラベル(マツモク製)

“日本ギブソン”より国外販売された80年代のベージュ・ラベル

ラベル
ベージュ・ラベルから、モデル名スタンプのうしろにカラー表記(SBまたはN)も印字される。なお、81年までは数字6桁、以降87年までは数字7桁のシリアルが用いられた。

 70年代末、本家ギブソン社は無許可のコピー製品を多数製造・販売していた数多くの日本の楽器メーカーを裁判で訴えていたが、法律的には完全にギブソン側に有利な訴訟ではなく(例えば“レス・ポール”という楽器の名称は日本の楽器商社が先に商標登録していたなど)、各社とそれぞれ和解を重ねるうえで、新たなギブソンのギター・ビジネスが展開されることとなった。

 日本の荒井貿易、神田商会、そして日本楽器(=ヤマハ)などが合弁で“日本ギブソン”という組織を立ち上げることになったのは1977年。日本で製造されていたエピフォン・ブランドのギターも、その後新たにこの新会社から発売されることになる。それまで同様、カジノはおもにマツモクが製造を担当したが、日本ギブソン以降の大きな違いは“国際的に発売された”という点。この時期に製造・販売されたエピフォン・ギターには、ネック裏に“Epiphone Authorised Instrument – NIHON GIBSON”と書かれた透明な小さい四角のステッカーが貼られていたことでもお馴染みだ。

 メイプル3ピース・ネック、16フレット・ジョイント、サンバースト&ナチュラルの2色展開など、それまでのものと大きな違いはないが、トラスロッド・カバーが2点留めに(ただし2点留めだったのはほんの一瞬で、その後程なく3点留めに“戻る”ことになる)。そしてボディ内に貼られたラベルがベージュ色のものへと変更になったことが挙げられる。薄茶色(=ベージュ)の地紋が印刷され、その上に濃い茶色でブランド・ロゴが印刷されたもので、そこには“Epiphone, A Division of Gibson Inc.”と表記され、ラベル上には製造国の表記はなくなっている。

 76年以降の定番としてカジノに“ナチュラル”カラーがラインナップされたことは、もちろんジョン・レノン自身が所有していた塗装をすべてはいだエピフォン・カジノのルックスに由来するものだろう。ただし、彼のカジノの場合は塗装をはいだあとに薄く二度クリアを吹いただけでマット仕上げ。この頃の日本製カジノに用いられた“ナチュラル”はグロス・フィニッシュが施された。

 エピフォン製品以外にも、荒井貿易のアリア・プロ、フェルナンデス/バーニー、古くは海外流通用のUNIVOXブランドのギターも製造していたマツモク工業は、87年に工場を閉鎖、会社を解散。折しもその前年、本家の米ギブソン社も新オーナー陣により買収され、経営基盤が一変した時期にあたる。エピフォン・ブランドは80年代から日本以外のアジア(おもに韓国)でも製品製造を始めていたため、この体制変更と工場編成再構築に伴い、ベージュ・ラベルと“日本ギブソン”はこの時に終わることとなった。なお、日本ギブソン発のカジノは、その製造末期(80年代後半)にはベージュではなく、四角いオレンジ色のラベルを貼った時期もある。

80年代初期のエピフォン・カジノ
80年代初期のエピフォン・カジノ(ナチュラル)。USA時代には存在しなかったが、カジノといえばナチュラルというユーザーのニーズに応えたカラーだ。
リビエラとカジノ
認可製品であることを示すステッカー
正式・公式に本家ギブソン/エピフォンの認可製品であり、“日本ギブソン”が出荷したことを示す透明のステッカーがヘッド裏に貼られている。
クルーソン・タイプの国産ペグ
クルーソン・タイプのペグを採用。ただし本家クルーソン製のパーツではなく、国産パーツゆえ、刻印やダブルラインなどは入っていない。
トラス・ロッド・カバー
日本ギブソン時代のカジノには一時期“2点留め”だった頃があるが、程なくアジア製を示す“3点留め”に。なお“e”ロゴがよりUSA時代に近くなったことにも留意。
ボディとネックの接合部
メイプル・ネックを採用しているため、メイプルのボディとカラーがマッチするのが、この時期のナチュラル・カラー・カジノの特徴。

ギター・マガジン2025年6月号
表紙/特集

EPIPHONE – NOW&THEN
エピフォン〜継承されるギブソンの魂。

2025年5月13日(火)発売

Epiphone/casino