エピフォン・カジノの生産地と仕様の変遷を辿る企画。1987年~の日本製オレンジ・ラベルの時期を紹介。
文:大久達朗 機材写真:星野俊 機材協力:セカンドストリート楽器館下北沢店
*本記事は、ギター・マガジン2025年6月号の特集『Epiphone – Now and Then』内の「カジノで辿るエピフォンの生産場所と仕様変遷」を転載したものです。
1987年~ 日本製オレンジ・ラベル(寺田楽器製)
寺田楽器製を主軸に単発の限定モデルも多数存在

1987年、エピフォン・ブランドを含むすべてのギブソン・ギター製品は日本において山野楽器が販売代理店に就くことに。この時からレギュラー・ラインのエピフォン・カジノは日本の寺田楽器が製造を担当。これまでと同様、メイプル3ピース・ネックという構造はそのままながら、ネック・ジョイントが16フレットから17フレットへと変更になる。そしてこの時期からボディ内に貼られたラベルはオレンジ色で楕円形のものとなり(これは本家ギブソン製の箱物ギターに貼られたラベルを模したものと推察される)、以降レギュラー・ラインのエピフォン・カジノは“オレンジ・ラベル”と称されることになる。
ただし、90年代中頃以降はレギュラー・ラインのカジノが韓国の各工場にて製造されるようになり、製造国表記(Made In〜)の記載がないカジノの場合、製造国がどこかはシリアル・ナンバーから判読するしかない。日本の寺田楽器製は数字5桁のシリアル・ナンバー(その後の限定版や別シリーズのラインナップは省く)が記載されているものだ。
また、1996年から山野楽器発の日本独自ラインナップとして“エリート(Elite)”シリーズがスタート。これはよりオリジナルに忠実に原点回帰を狙ったラインナップで、それまでの国産カジノとは異なりマホガニー・ネックを採用、16フレット・ジョイントを復活させたものだった。これがファンの間で好評を呼んで世界中でニーズが高まったこともあり、その後2002年からは“エリーティスト(Elitist)”シリーズと変わり、国外でも発売。この“Elite/Elitist”シリーズのカジノには白い楕円形のラベルがボディ内部に貼られているが、このシリーズの製造は日本の寺田楽器/フジゲン楽器が担当した。
なお、以下はこの前後に日本でイレギュラーで作られたエピフォン・カジノを列記。86年頃、谷口楽器の特注オーダーで、ファット・ヘッド、ビグスビーを搭載した通称“ポール・カジノ”が発売(製造はマツモクとのこと)。90年前後には下倉楽器の特注オーダー・モデルのカジノ、通称“シモカジ”が発売される。16フレット・ジョイント、2点留めのトラス・ロッド・カバーを採用。90年代末から2000年代初頭にかけて、山野楽器と楽器店“with”のコラボ企画として62/64年スペックの通称“withカジノ”を発売。ヘッド角17度、16フレット・ジョイント、ラッカー塗装、2点留めのトラス・ロッド・カバーなどの当時のスペックを再現。2000年頃には1965本限定でジョン・レノンの“塗装剥がし”カジノを再現した“John Lennon 1965 Revolution CASINO”も登場。塗装を含む製造のほとんどを日本で行ない、米国でアセンブリと最終仕上げを施し、“assembled in the USA”と誇らしげな文字が星条旗デザインのステッカーに印字されている(ラベルはブルー)。







ギター・マガジン2025年6月号
表紙/特集
EPIPHONE – NOW&THEN
エピフォン〜継承されるギブソンの魂。
2025年5月13日(火)発売