エピフォン・カジノの生産地と仕様の変遷を辿る企画。今回は1995年~の韓国製オレンジ・ラベルと、2004年~の中国製オレンジ/ブルー・ラベルの時期を紹介。
文:大久達朗 機材写真:星野俊
*本記事は、ギター・マガジン2025年6月号の特集『Epiphone – Now and Then』内の「カジノで辿るエピフォンの生産場所と仕様変遷」を転載したものです。
1995年~ 韓国製オレンジ・ラベル(サミック/ピアレス、他)
2004年~ 中国製オレンジ/ブルー・ラベル(青島GQ工場)
レギュラー・ライン製造拠点は韓国、そして中国へ


レギュラー・ラインのエピフォン・カジノが韓国で製造されるようになったのは92年頃。生産量の増大に伴って90年代末にはサミック(三益楽器)、ピアレス、セイン、ウンソンなどの各韓国楽器製造工場でも製造されるようになる。
そして2002年にはギブソンは中国・山東省の青島(チンタオ)に自社工場GQファクトリーを設立。“GQ”とは“Gibson Qingdao”の頭文字からくる名称だ。以降のエピフォン製品の大半はこのGQファクトリーで製造されている。同所の従業員数は500人を超え、1日のギター製造数は700本を超えるという文字通りの大工場。それまではピックアップ/各種パーツも海外から輸入して組み込みされていたエピフォン・ギターだったが、中国工場に製造拠点を移してからはピックアップ/各種パーツも中国で独自に製造を開始している。
なお、韓国製・中国製を問わず、2004年までに製造されたレギュラー・ラインのカジノはすべて17フレット・ジョイント。それ以降はオリジナル・スペックへと回帰し、16フレット・ジョイントが採用されている。また製造時期によって若干の違いがあるものの、韓国製・中国製カジノはボディに使用されるラミネート板が(USA製/日本製と比べて)厚い材を用いるようになった。韓国で製造されたカジノ、それから中国で初期に製造されたカジノはいずれもオレンジ色の楕円のラベルが貼られていたが、2020年からはエピフォン・カジノのボディ内ラベルはブルーの四角いラベルへと変更。また大量生産に対応するためか、英数字11桁(もしくはそれ以上)のシリアル・ナンバー・システムが採用されている。
エピフォンのレギュラー・ライン製品が中国工場にて大量生産による効率化と低価格化を実現する中、近年は新機軸のラインナップも加えられている。最も知られるのが“カジノ・クーペ”と呼ばれるモデルだろう。小さなボディ、そしてカラフルでポップなカラー・ランナップでビギナーの選択肢を増やすモデルと言えそうだ。
また同じく中国工場では、“Inspired by John Lennon”と銘打ったカジノを製造している。前述した日本製の“John Lennon 1965 Revolution CASINO”(現在廃盤)とは異なり、廉価にてジョン・レノン所有器のスペックを実現したものだ。
また、エピフォン・カジノ発売50周年を記念して、2011年には“1961 Casino”を限定で製造・発売。これはファット・ヘッド、メタル・ロゴ・プレート、鼈甲柄ピックガードなど1961年発売当初のオリジナル・カジノのスペックを踏襲したモデルだ。
なお、それらとは別に2021年からはアメリカのギブソン・ファクトリーの製造による、ラッカー・フィニッシュ、ギブソン製P-90ピックアップ、16フレットでのネック・ジョイント、そしてブルー・ラベルを再現した“USコレクション・カジノ”が発売されている。


ギター・マガジン2025年6月号
表紙/特集
EPIPHONE – NOW&THEN
エピフォン〜継承されるギブソンの魂。
2025年5月13日(火)発売