アルバート・コリンズ(Albert Collins)が生涯手にし続けたソリッド・ギターの原点、テレキャスター アルバート・コリンズ(Albert Collins)が生涯手にし続けたソリッド・ギターの原点、テレキャスター

アルバート・コリンズ(Albert Collins)が生涯手にし続けたソリッド・ギターの原点、テレキャスター

毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく新連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。

文=久保木靖 Photo by Getty Images

アルバート・コリンズが自身のバンド“リズム・ロッカーズ”でブルース・クラブに出演し始めた当初、つまりプロ活動を本格化させた18歳頃、手にしていたのはエピフォン製のギターだった。具体的なモデル名などはわかっていないが、ホロウ・ボディのアーチトップ・モデルだったはずだ(当時のエピフォンはギブソンによる買収前で、まだソリッド・ギターの生産は行なっていない)。

そんな折、1952年に憧れのゲイトマウス・ブラウンがフェンダー・エスクワイアを弾いているのを見て、フェンダー製ギターの購入を決意。おそらく、ソリッド・ギターの鋭いトーンや取り回しの良さに惹かれたのではないだろうか。のちに長いシールドを使って客席に降りてきたり、ギターを背中に回して弾いたりすることを踏まえると、この選択は頷ける。

コリンズは当初テレキャスターを欲したようだが、高価だったために諦めざるを得なく、結局エスクワイアを購入。しかし、ピックアップがブリッジ側に1つだけの同モデルのトーンが自身のイメージに合わなかったのか、楽器店に持ち込んで、テレキャスター同様にネック側にピックアップをマウントしてもらったという。

アルバート・コリンズ

このギターは、コリンズが1960年代半ばに西海岸に引っ越すまでメイン・ギターとなり、デビュー・シングルのほか、「Frosty」などホール/ホールウェイ・レーベルでの初期レコーディングに使用された。

その後、コリンズはトレードマークとなるフェンダーの1966年製カスタム・テレキャスターを手にする。ナチュラル・アッシュ・ボディで、ネックは貼りメイプル仕様のもの。

アルバート・コリンズ

ネック・ポジションのピックアップをギブソン製ハムバッカー(PAF)に交換しているのが大きな特徴だ。そして、多くのプレイヤーがはずしてしまうブリッジ・カバーを付けたまま演奏する。

そもそもテレキャスターは、それまでのホロウ・ボディのエレクトリック・ギターとは大きく異なる“量産型”という、まったく新しい製造工程で作られるようになったもの。

ボディは1枚の板を切り出したフラット・トップとし、ネックは指板と一体となった1ピース構造に。そして、そのボディとネックは4本のボルトで固定する“ボルト・オン・ジョイント”を採用。これは伝統的な“セット・ネック・ジョイント”のような精度の高い加工が不要で、プラモデルを組み立てるような作業で済む。同時に、ネックが折れたりした場合の“交換”といった対処も簡易になった。ほかにも色々とあるのだが、とにかく製造にかかる手間と時間が飛躍的に少なくなり、(ホロウ・ボディに比べれば)低価格も実現した。

こうして世に出たのがテレキャスター。正確には1949年にエスクワイアとして発表され、1950年のブロードキャスターを経て、1951年に晴れてテレキャスターというモデル名になった。

1990年、フェンダーはコリンズの個体(1966年製カスタム・テレキャスター)をベースとしたシグネチャー・モデルを発表。

その現行モデルは、ダブル・バインディングのスワンプ・アッシュ・ボディに特別形状のメイプル・ネックを採用。ピックアップは、ネック側にカスタムのSeymour Duncanのハムバッカー、ブリッジ側にカスタム・ビンテージ・スタイルのフェンダー・テレキャスター・ピックアップをマウントしている。