ザ・ローリング・ストーンズにまつわるギターのストーリーを探っていく連載。前回に続いて、キース・リチャーズが愛用する非常にレアなギブソンES-355のこぼれ話を紹介。
文=鈴木伸明 Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images
超貴重なオリジナルのエボニー・ブラック・フィニッシュ

キース・リチャーズが愛用する1959年製のES-355は、ファクトリー・オリジナルのエボニー・ブラック・フィニッシュ(黒)という非常にレアなモデル。当時の標準カラーはチェリーのみだったので、カスタム・オーダーによる1本だと思われる。ファクトリー・プリセット(ギブソンの工場でセットされたもの)のビグスビーB7テイルピースが取り付けられており、初期の特徴でもあるロング・ピックガードと呼ばれる長めのピックガードははずされている。
355には、モノラルとステレオ/バリトーン、2つの出力の仕様が用意されていたが、キースの1本は最初期のモノラル。バリトーン・スイッチは回線をはずしてしまう人が多いので、オリジナルのモノラルのほうが現在でも使いやすい実用的な仕様と言える。
キースがこのギターを使用するようになったのは、1997年にリリースされたアルバム『Bridges to Babylon』に伴うワールド・ツアー『Bridges to Babylon World Tour 1997/98』からだ。ステージではレギュラー・チューニングの楽曲で登場。
同時に1959年製のチェリーのES-355も使うようになり、こちらは大きな丸型のバリトーン・スイッチを取りはずし、その穴が開いたままだったので、ルックス的にもインパクトがあった。
2003年に行なわれた『Lick Tour』のドイツ公演でAC/DCのアンガス・ヤングが客演した際には、アンガスがキース所有のチェリーの355を、キース自身はブラックの355を抱え、2本の355で「Rock Me Baby」を演奏した。