DTM環境を構築する際、オーディオ・インターフェースやスピーカーの組み合わせには無数の選択肢があり、迷ってしまう人が多いはず。そこで本コーナーではフォーカスライトのScarlett 2i2と、アダムオーディオのD3Vを、ギタリスト向けの入門セットとしてプッシュしたい。すでにD3Vは愛用中だという磯貝一樹のレビューと共に、この両機種を紹介しよう。
Presented by ソニックエージェンシー株式会社
取材・文=鈴木誠 人物撮影=星野俊
*本記事はギター・マガジン2025年11月号に掲載した「磯貝一樹が試すコンパクト&上質なDTM環境 Focusrite Scarlett 2i2 & ADAM Audio D3」を再構成したものです。

Focusrite
Scarlett 2i2

ビギナーにも最適なオーディオ・インターフェース
赤いアルミニウム・シャーシが印象的な、2イン/2アウトのオーディオ・インターフェース。本機はブランドを代表するロングセラー・モデルで、同名モデルの第4世代(4th Gen)にあたる。
Autoボタンを押して演奏すると自動的に入力ゲインが最適化されるオート・ゲイン機能や、入力過多に素早く反応してゲインを下げるクリップ・セーフ機能を搭載しているため、ビギナーでも扱いやすいだろう。
USBケーブルでパソコンと接続すれば最初からドライバー不要で使用可能なのも嬉しいところだ。
また、電源もPCから供給できるため、モバイル環境での音楽制作にも好相性である。
ADAM Audio
D3V


コンパクト&パワフルなモニター・スピーカー
3.5インチのアルミ製ウーファーに、独自開発のD-ARTツイーターと、3.5インチのパッシブ・ラジエーターを組み合わせたアクティブ・スピーカー。
左右ペアで重量4kgを切る身軽さでありながら、低域は45Hzから再生可能。サイズを超えたレンジの広さが特徴だ。
底面にはマイク・スタンドなどに設置するためのネジ穴を用意し、卓上用のチルト・スタンドも付属。
入力はUSB-Cとバランス型TRSフォン。背面にはDSP音響補正スイッチも搭載しており、例えば部屋の広さやデスクの幅など、設置環境に応じて音を補正できる。
Review
家ではこのセットをアンプの代わりにしてもいいかも。
まず、Scarlett 2i2の第一印象は?
初期設定でPCにドライバーをインストールしなくていいし、接続がめちゃくちゃ簡単ですね。USBケーブルでつなぐだけなので、初心者の方はもちろんですけど、個人的には急な仕事で普段と違うPCを使うようなシーンにも重宝すると思います。
音質はキラッとしていて、フォーカスライトらしい音だなという印象です。ギター的に言うとバッファーを通した時のように音が引き締まる雰囲気で、ギター・サウンドに向いてると思います。“Air”ボタンを押すと、少し高域が持ち上がって音抜けが良くなるんですが、これも使える機能ですね。
ちなみにこのモデルを買うと、DAWやプラグインなど、1,000ドル相当のソフトが付属するんですよ。
インターフェース自体もリーズナブルな値段なのに、さらにそれだけ付いてくるのは単純に嬉しいですよね(笑)。とりあえずこのモデルだけ買えばギターの宅録やDTMをすぐに始められると思いますよ。
スピーカーのD3Vはすでに愛用中だそうですね?
そうなんですよ。実際に音を聴く機会があって良い印象を持っていたんですけど、調べてみたら想像以上に安かったので即買いしました。
サイズを超えた鳴り感があって、音量を絞っても良い音がします。レンジが低域側に広いので、ローを多めに出している楽曲を再生しても、ロー・ミッド付近がしっかりタイトに出て気持ちが上がるんですよね。高域もクリアで聴こえやすいのに、キンキンしないので疲れません。
DTMのモニター用途のほかにも、テレビにつないだり、映画を見るのも面白そうだなと思います。
ツイーターがリボン式という珍しい方式で、トランジェント(音の立ち上がりやアタックの聴こえ方)の良さが特徴だそうです。
ギターに関して言うと、デジタル機材を触る時にも実機アンプのようなピッキングの食いつき感が大事だと思うんです。このD3Vはツイーターのおかげなのか、そこがナチュラルな感覚で演奏できますね。アコースティック・ギターが目立つ音源を聴く時にも、ピックの当たり方までしっかり聴こえてきます。
普段使う中で、使い心地や操作性はどうでしょう?
ボリューム・ノブが前面にあって、すぐ手が届くのがかなり便利です。細かいところですが、これが裏面にあると面倒なんですよね。
DSP音質補正は、僕はフラットで使っていますが、よく外に持ち出す人なら出先の環境に合わせて即座に変更できるのが便利だと思います。例えばツアー先のホテルの部屋で使う時など、低音が出すぎると周りに迷惑かなと思う時などにもサッと補正できます。
今日はScarlett 2i2、そこに付属するプラグインのアンプ・シミュレーター、D3Vというセットで試してもらいましたが、この組み合わせについてはどんな印象でしたか?
シミュレーターのプラグインはマーシャル系の“Softube Marshall Silver Jubilee 2555”を使ってみましたが、クリーンから歪みまで、欲しいギター・サウンドがだいたい揃っていますね。リバーブ・プラグインの“Relab LX480 Essentials”もクリアな印象です。
D3Vはギターに必要な低域がちゃんと出ていて、レスポンスも良い。
耳が疲れない音で、かつ“ギターを弾いてる感”も得られるので、DTMをやるギタリストだったら、家ではこのセットを実機アンプ代わりに使ってもいいかもしれませんね。
家ではスピーカーよりヘッドフォンがメインという人も多そうですが、スピーカーを積極的に使うメリットとは?
個人的に、耳に音が入るまでにちゃんと空気を伝わってほしいんです。そうするとスピーカーからの距離や角度によって聴こえ方が変わったりと発見があるんですが、イヤフォンとかヘッドフォンだとそれが体感できないんですよね。
それに、こうしてある程度の良いものを使わないと、耳もタッチも育たないだろうなという気がしているんです。スマホのスピーカーで映像を見ていても、ローって全然聴こえないじゃないですか。でもやっぱり、音楽の高揚感は低音から来ると思うんですよ。なので、小音量の宅録だとしても、ある程度のボトム感がしっかり出るD3Vは心強いです。余裕があって大人な感じの鳴り方ですよね。
今日のセットはこれから宅録を始めたいというビギナーにもオススメでしょうか?
もちろん! 初心者のうちからこれだけ揃っていたら、むしろ良すぎるぐらいじゃないでしょうか(笑)。インターフェースもスピーカーも長く使える品質ですし、このセットならリュックに入れて持ち運ぶこともできるので、色々な場面で活躍してくれると思いますよ。


磯貝一樹 プロフィール
いそがい・かずき●1990年生まれ、大分県出身。Kazuki Isogaiとしてソロでの活動や、NewJeans、Creepy Nuts、Def Tech、Nao Yoshiokaなど様々なアーティストのサポートやレコーディング、SANABAGUN.のメンバーとしても活動。