【TALK SESSION & GEAR】音と人が出会う新たな場を創造するプロジェクト“acira”の全貌 【TALK SESSION & GEAR】音と人が出会う新たな場を創造するプロジェクト“acira”の全貌

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【TALK SESSION & GEAR】音と人が出会う新たな場を創造するプロジェクト“acira”の全貌

関西北陸のギター・ビルダー、ショップ、ミュージシャンなど、異なる立場の5人によって2025年に設立されたプロジェクト“acira(アシラ)”。“音と人が出会い、音楽が始まる”をスローガンに掲げ、楽器を起点に作り手や奏者、音楽を愛する人たちが交差する“循環の場”を生み出している。ここでは、Nishgaki Guitars/Collecteraの西垣祐希氏、Singularの北出斎太郎氏、stilbluの山田浩幸氏の3人にインタビューを実施。設立にいたった背景や、aciraの掲げる理念に迫っていく。

取材・文=山本彦太郎 撮影=星野俊
※本記事はギター・マガジン2026年11月号の特集の一部を転載したものです。

ABOUT “acira”

楽器をきっかけにした出会いから
音楽へとつながる場を創り出す

“acira”(アシラ)とは、ギター製作者やミュージシャン、ショップなど5人が集って立ち上げたプロジェクトの名称だ。

まずどのような人たちが名を連ねているかというと、兵庫でNishgaki Guitarsという個人工房を運営する西垣祐希氏。プロ・ベーシストであり、西垣氏とCollecteraというブランドを共同主宰する宮地遼氏。石川を拠点に、デザインや工芸、アートワークなどに取り組むクリエイティブ・チームseccaで活動するSingularの北出斎太郎氏。滋賀でWood Custom Guitarsというベース・ブランドを運営する上田和希氏。そして、富山のセレクト・ショップBlue Guitarsの代表であり、同店のオリジナル・ブランドであるstilbluのプロデュースを手がける山田浩幸氏だ。

楽器や音楽といったつながりはあれど、微妙に立ち位置の異なる5人が集まり、何を成そうとしているのか。その理念を北出氏はこう語る。

“我々が楽器を完成させておしまいではなく、それを扱ってくれる方がいて、新しい音楽が生まれて、それを聴いた人が刺激を受けて何かを作ったりと連鎖が生まれていく。音楽を愛する人たちが、楽器を中心に交差し、そこから生まれてくるものを一緒に広げていきたいんです”。

その“交差”、山田氏曰く“循環の面白さ”を端的にまとめたaciraのスローガンとも呼べるものが、“音と人が出会い、音楽が始まる”という言葉。それを具現化していくうえで、西垣氏がまず考えたのは、プロジェクトとしての名称だ。

“自分たちが長く続けていく活動であれば、名前があったほうが愛着が湧くだろうということで、僕と北出さんで考えた時に“アシラ”という言葉自体が生まれました。そこから、日本語で“飾る”という意味合いの“あしらう”も連想し、音楽が空間をあしらう、楽器がミュージシャンと共に音になるっていうのは、僕たちがすごくやりたいことだと納得したんです”。

“アシラ”は“アーティスト(a)、コミュニティ(c)、インストゥルメンツ(i)、リレーションシップ(r)、アッセンブリー(a)”の頭文字が当てられて“acira”となる。ビルダーやミュージシャンとして楽器とともに生きているという意味も込め、インストゥルメンツの“ i ”が中心に据えられている。

このような理念を柱にするaciraには、もう1つ大切にしているキーワードがある。それは“シグネチャー”という言葉だ。

これについて上田氏は“世界中に楽器が溢れているなかで、僕たちの楽器を選んでもらえているのはなんでなんやろって考えたんです。自分が良いと思って作っているものが僕たちのシグネチャー・サウンドになっているんだとしたら、それを強く押し出していかないと意味がない。僕らが作っている意味も、宮地くんが弾いている意味もない。それに、お客さんもそれぞれ自分のシグネチャーがあるはずなんですよ”と語ってくれた。

その作り手の“シグネチャー”と、(プロ/アマ問わず)弾き手の“シグネチャー”が合わさり、さらに弾き手に限らず音楽を愛する聴き手がそれらを観測した時の面白さ。それを見つけ、体感するための場の提供も、aciraの大きな役目の1つと言えるだろう。

2026年5月に大阪で開催された『サウンドメッセ2026』で、aciraのお披露目となる5ブランド共同展示を行なった。さらに11月に予定している展示会と縁のミュージシャンたちによるライブ・イベントについて西垣氏は、“僕たちが作れる楽器の本数には限りがあるので、実際に手に取ってもらえる機会はやはり限られてしまう。とは言え、たくさんの人に弾いてほしいので、“会いに行けるビルダーたち”という形で“acira”というパッケージを出せるかなと考えています。皆の“面白い”をぶつけあった結果出力されたものを、目撃してもらいたいです”と語る。

インターネットを通じて世界中の様々な楽器にアクセスすることが容易となった現在、一方で実際に楽器に触れてみたり、その楽器がどのような音楽を生み出すのかを体感する機会は意外と少なくなっているかもしれない。関西・北陸を中心に活動するaciraの実像に触れる機会もまた貴重なものであり、これが全国行脚へとつながることも期待してしまう(註:団体名の候補には“caravan”という言葉もあったそう)。その一歩を踏んだaciraの面々だが、その人となりが垣間見える彼らの“シグネチャー”の一端を次頁からご覧いただこう。

TALK SESSION

ここからは“ギター篇”として、Nishgaki Guitars, Collecteraの西垣祐希氏、Singularの北出斎太郎氏、Blue Guitarsの代表兼stilbluのプロデュースを手がける山田浩幸氏の3人に、aciraの理念や彼らが製作するギター、そして11月に控えるイベントについて話を聞いていこう。

※11月14日、15日のイベントで展示予定の各社の一部モデルをご紹介。


左から、Singularの北出斎太郎氏、stilbluの山田浩幸氏、Nishgaki Guitars/Collecteraの西垣祐希氏。
左から、Singularの北出斎太郎氏、stilbluの山田浩幸氏、Nishgaki Guitars/Collecteraの西垣祐希氏。

aciraの循環の面白さが
表われています。
──山田浩幸

みなさんは様々なプロダクトを手がけていますが、aciraの活動としてはギター/ベースに限っているんですか?

山田 北出君の製作物にはウクレレもありますし、ウクレレ奏者のブッキングができていれば、11月に予定しているイベントにもギターやベースだけでなくウクレレもラインナップに入れていました。それと、ウクレレのつながりからバンジョー奏者もいたよねとなれば、誰かがそこに触発されてバンジョーも作るかもしれない。そういったところにもaciraの循環の面白さが表われていると思います。

北出 僕で言うと、そもそもの入口はアコースティック・ギターの製作で、独立してからはまずエレキ・ギターを作りました。今は、音楽に関わる人が豊かになる物や道具を作っていきたいという思考になっていて、作曲家の人にピアノ・ペダルを作ったり、家具も手がけていたりします。

山田 それで言えば僕も、調音された鋳物の風鈴を作りました。G・C・E・Aの各音に調音された風鈴で、鳴らすとウクレレの開放弦の音になるので、音叉の代わりにもなりつつ美しい銅器の音色も楽しめる。それは地元富山の伝統的な緑青の着色技術を使っていて、その技はstilbluのギターにも踏襲されています。自分自身としては意識していなかったけど、こういう課外活動的なものも、“acira”につながる表現の1つなのかもしれない。

北出 とはいえ、“いろいろ作っています”って言うと“何を見せたいのか?”となると思うので、11月のイベントではエレキ・ギターとエレキ・ベースを軸に見せたいと考えています。

もう1つ、みなさんの特徴としては、日本の伝統工芸なども取り入れた作風がありますね。

西垣 僕で言えば、楽器に漆や藍を塗ったりしていますが、そもそもお祖父さんが大工で、その和系の技術と西洋の楽器文化を自分なりに融合させていこうとしています。海外の素晴らしいビルダーやオリジナルなものを作ってきた人たちの楽器って、その人の生きてきた何かが見えるんです。僕だったら寺社仏閣とかが好きで、ヘッドのデザインも鬼瓦からきているといったことがあるし、山田さんはサーファーで、海や波を感じられる楽器を作ったりしている。みんなそういった何かが楽器に入っていると思います。

山田 北出くんはもともとはデザイナーなんだっけ?

北出 今はいろいろなクリエイターが集まる“secca”というチームで、デザインやアートワークなどにも関わりながら、その中でSingularというブランドを立ち上げ、設計から製作までを自分で手がけています。

山田 僕の場合は生まれた街に“高岡銅器”というものがあって、地元のものも一緒に外に広げていけたらいいなという気持ちもありました。伝統への携わり方はそれぞれなのかもしれないですね。

良いと思ったものをやりきることで
それが自分のシグネチャーになる。
──西垣祐希

今回紹介するギターについても聞かせてください。

西垣 Arcusは、小沼ようすけさんとフル・アコースティック・ギターを作っていこうという中で生まれたもので、ボディ・サイズは一般的なセミ・アコースティック・ギターより若干小さい15 3/4インチです。本器はバリエーションとしてセンター・ブロックを入れて、ジャズ以外のフィールの演奏もできますよという、可能性が広がるようなセットアップになっています。

祖父が大工で、僕自身も子供の頃から木材に触れてきたので、自分のルーツが見えるものが良いなと考え、漆の上にシェラック(天然樹脂)を塗っています。実は漆って塗り方によってはとても音が良くなるんですよ。これは漆を薄く塗って拭き取ることで着色しつつ木固めをする、拭き漆という方法を使って、木の表面の硬度を上げていて、その上からバイオリンなどに使われるシェラックを塗ってみたら、“これだ!”という音になりました。ピックガードとトラスロッド・カバーは徳島の産地まで行って探してきた藍を使って染めています。

Nishgaki Guitars / Arcus Forma - Organic Texture(表面)
Nishgaki Guitars / Arcus Forma – Organic Texture(表面)
Nishgaki Guitars / Arcus Forma - Organic Texture(裏面)
Nishgaki Guitars / Arcus Forma – Organic Texture(裏面)

Collecteraについても教えてください。

西垣 Faroはセンター・ブロックの構造違いで2つのバリエーションがあり、これは2ピックアップのDualというモデルです。サウンドに関しては、僕も宮地も根っこはジャズなので、ジャズ・ギターの新解釈として、アーチトップの倍音構成で鳴るセミアコを目指しました。そこでまず1ピックアップのSoleが生まれたんですが、その後“2ピックアップでジャズを弾きたい”、“ロックも弾きたい”という要望があって。そこで、自分たちが思う歪んだサウンドがカッコいいモデルを模索してできたのがDualです。

共通したこだわりとしては、Nishgaki Guitarsにはロゴを入れていませんし、Collecteraも一見読めないロゴになっていること。姿形がロゴのような役割を持つものにしないといけないという考えでしたね。

Collectera / Faro Dual - SuibokU(表面)
Collectera / Faro Dual – SuibokU(表面)
Collectera / Faro Dual - SuibokU(裏面)
Collectera / Faro Dual – SuibokU(裏面)

北出 G1は基本的にはエレキ・ベースのB1(註:ベース・マガジン2026年11月号に掲載)と共通する身体軸から設計していったモデルです。ソリッド・ギター的な芯を残しつつ、少し空気感を感じるようなエレキ・ギターを作りたかったんです。そのため、ボディ・バックをくり抜いたセミ・ソリッド構造にしています。これまでアコースティック・ギターをいくつか作ってきたこともあって、その感覚が少し残っていると思います。

あとは、コンパクトなボディに対して、音の抜け方や造形としてのあり方をどう両立させるかを考えました。そこで、小さな穴の集合によって1つの開口を作る方法を試し、このサウンドポートをTraceportと呼んでいます。奏者が自分の音を纏うような感覚もイメージしながら設計しています。

Singular / G1 SemiSolid-Traceport(表面)
Singular / G1 SemiSolid-Traceport(表面)
Singular / G1 SemiSolid-Traceport(裏面)
Singular / G1 SemiSolid-Traceport(裏面)

山田 EFLOは造語で、“淀みがない”という意味のエフォートレス(Effortless)と、“流れ”のフロウ(flow)の組み合わせです。ショップで25年弱いろいろな楽器を触ってきて感じたことを総動員して、今はまだないドリーム・ギターを作ろうと思ったのがきっかけで、これ1本あれば、様々なシーンで淀みなくアジャストできるギターをプリセットしました。

ブリッジはフローティング・トレモロの可能性を近年感じており採用、加えてこれまでstilbluで培ってきたミニ・ハムバッカー開発の経験を活かしてEFLO専用のミニハムをデザインしました。片方のコイルの線径を変えて、結果的にコイルの体積が変わるため完全なハム・キャンセルにはならず、シングルコイルっぽさを残しているほか、アジャスタブルにしているところにも工夫があります。前述したトレモロや細めのネック・プロファイル、大き目のヘッドなどが、弦振動の際に鞭が大きくしなるイメージで、生音が遅くなるよう設計しました。

一方で、電装系では出音が速くなるようにしています。フロントは太くも速い音色でメロウにもなる。一見ホロウ・ボディのような飽和感も含みつつも、少しシングルコイル寄り。センター・ポジションはトレモロからも連想するシャキッとしたシャープな音色に、リアは生音の遅さが生きるような粘りとバイト感が出るようにし、トーンはフロント/リアそれぞれにあるため、フロントは開放、リアを少し絞って弾くのが僕の好みのプリセットです。

stilblu / EFLO Medium Aged - Ice Blue Metallic (Open Pore)(表面)
stilblu / EFLO Medium Aged – Ice Blue Metallic (Open Pore)(表面)
stilblu / EFLO Medium Aged - Ice Blue Metallic (Open Pore)(裏面)
stilblu / EFLO Medium Aged – Ice Blue Metallic (Open Pore)(裏面)
stilblu / EFLO Medium Aged - Faded Cherry (Open Pore)(表面)
stilblu / EFLO Medium Aged – Faded Cherry (Open Pore)(表面)
stilblu / EFLO Medium Aged - Faded Cherry (Open Pore)(裏面)
stilblu / EFLO Medium Aged – Faded Cherry (Open Pore)(裏面)
左から、stilbluの山田浩幸氏、Nishgaki Guitars/Collecteraの西垣祐希氏、Singularの北出斎太郎氏。
左から、stilbluの山田浩幸氏、Nishgaki Guitars/Collecteraの西垣祐希氏、Singularの北出斎太郎氏。

同じ楽器でも
弾く人によって出る音は全然違う。
──北出斎太郎

改めて、aciraの理念の1つである“シグネチャー”について、さらにみなさんの考えを教えてください。

北出 同じ楽器でも弾く人によって出る音が全然違うし、僕が作った楽器にも関わらず、宮地くんが弾いたのを聴いて“あれ? この楽器ってそんな音が出るの!?”なんて感じたこともあります。シグネチャー・トーンからは、そういった気づきをもらえましたね。

西垣 それで言うと、僕と上田さんで同じベースに同じ弦で、各々好きなセットアップをして宮地に弾いてもらったんですけど、全然違う楽器になりましたね。その楽器自体が持つ特性やサウンドの方向性はありますけど、そこに異なるバックグラウンドを持った人間の手が入ることにより、同じ楽器だから同じ結果になるっていうのはありえない。それなら、マイナスの要素を消そうとするのではなく、自身が良いと思ったものをやりきることが自身のシグネチャーになるし、製作者としても納得できるものになる。

各々が良いと思うことを思いっきりやって、“これ超良いんだぜ!”っていうものを出し合えばそれだけで面白いですし、aciraにもそういう性質があると思っています。

山田 そういう意味だと、僕は自分のシグネチャーというのはあまり意識していないですね。普段はショップをやっているので、接客時はお客さんの潜在的な欲求を引き出してフィットするものを提示したり、なければ自分たちのところでオーダーしてもらったりするんですが、お話をうかがっていると、自分たちが提案するスペックではやらないような要望をされることも多い。

色使いなども、僕の考えだと“それはどうかなあ”と思うようなものもあるんですが、それはあくまでも僕の感覚。実際にやってみて“こういうパターンもありだな”と気づかされたこともすごく多いんです。それが新しい製品の礎になることもあるし、アップデートになることもありますね。

acira LIVE & SHOWCASE Vol.2

acira LIVE & SHOWCASE Vol.2

<公演情報>
【Live】
2026年11月14日(土)Rittor Base
Open 16:30 / Start 17:00

●チケット ※SOLD OUT
・前売り……6,000円
・当日券……7,000円
※ご来場者にお土産付き

●出演
小沼ようすけ、KAN、笹井BJ克彦、須川崇志、西村ケント、藤井伸昭、藤本一馬、宮地遼

【Showcase】
2026年11月15日(日)Rittor Base
Open 11:00 / Close 16:00

●チケット ※好評発売中
・前売り……1,000円
・当日券……2,000円
※ご来場者にお土産付き

●出展ブランド
Collestera, Nishgaki Guitars, Singular, stilblu, Wood Custom Guitars

●詳細はこちらから
https://www.acira.jp/