最近ハマってるのは
“ヘロヘロした感じ”ですね。
奥村さんは、“ギター・サウンド・コーディネーター”としてもクレジットされていますが、音に関するディスカッションはどういうことを話すんですか?
私が“こういう音がいいんです”っていう参考の音源を渡したり、“こういう音で~”って説明したりして、そこからざっくり音を作っていただくんですよ。で、“あ、ここはそういう感じじゃなくて、もうちょっとヘロヘロな感じで”とか、スタジオで会話して詰める感じですね。
自分で音色作りをすることは?
“ここの音はこだわりたいけど、スタジオの時間がないからどうしよう?”って時は、ラインでもマイクでも録っといて素材を確保して。それをあとでいじったりとか、そういうことはよくやります。「AH!」なんかは後エディットでやったと思いますね。あとは、「豆台風」とかもラインで録ったのを後日エディットしました。
ほかにラブサマちゃんがエディットした曲は?
「豆台風」と「I Told You A Lie」は私がやりました。それを送って、ミックスしてもらったと思います。あと、「ミレニアム」は私がほとんど弾いていて、「サンタクロースにお願い」も私がけっこう自分でエディットしたり弾いたりしてます。
そのエディットは何のソフトを使うんですか?
AmpliTubeとTHRと、Cubaseに元から入ってる“VST Amp Rack”っていうSteinbergのプラグインでほとんどやってます。
サウンド面について、ギターの音に関してこだわっているポイントは?
曲によって違うんですけど、最近ハマってるのは“ヘロヘロした感じ”ですね。そのちょっと前は“ファズでエイヤー!”って感じでしたけど。
“ヘロヘロ”というのは、具体的にはどういった音色?
私が最近ヘロヘロ感を出すのにやってるのは、コーラスやBitCrusher(Steinbergのプラグイン・ディストーション)とか、そういう変なのをかましてますね。あとは、クランチにしてフェイザーなどのモジュレーションをちょっとかけたり。
「AH!」の裏で鳴ってるのは、フランジャーっぽいモジュレーションがかかっていますよね。
「AH!」のオブリガート的なリフは、80年代アメリカのパキーンとした華やかな感じのイメージで。あの頃のギターって、コーラスがかかり気味じゃないですか。それをやろうかなと思って、コーラスをかけてますね。あとは、「I Told You A Lie」なんかはホントにヘロヘロですし、「ミレニアム」も“あんまり覇気がない感じの曲にしたい”と思ってたので、全編をとおして弾いているリードも、けっこう“ヘロヘロに弾きたいな”と思ってやりました。
「ミレニアム」はアルペジオのリフが2番からフリーなオブリに発展しますが、こういう展開はどのように考えていくんですか?
それこそ曲ごとに違うんですよね。「ミレニアム」は、静かに徐々に汗をかいていくようなイメージで、最初は“5月のそよ風の中、歩道を歩いてます”みたいな感じなんですけど、アウトロにかけて“ちょっと額に汗かいてたな”みたいに徐々に盛り上がっていくようにしたかったんです。だから徐々に音数を増やして、一番最後でファズを踏んで。頭から一番最後までの大きいクレッシェンドみたいなイメージで作りました。
逆に「LSC2000」とかは、イントロでガッツリ掴む感じですよね?
これは“バチコーン!”みたいな感じで作りましたね。たしか大さんが弾いたのかな? このフレーズは私のギター練習から生まれたもので。メトロノームに合わせた基礎トレーニングみたいのって、つまんないな~と思っていて。で、“私が好きな練習用トラックを作ってやった方が、絶対練習するな”と思って、ペンタトニック・スケールで弾ける練習用トラックを作ったんですよ。それで“とりあえず、ペンタ・スケール弾いてみるか”と思ってやったら、“ん! 天才的なリフができた!”って(笑)。この曲はそのリフから作りました。
ボイスメモ……聴かせたいな、
ヤバいですよ?
セルフ・ライナーノーツには、“「心ない人」でファズを10台重ねた”と書いてありましたね(笑)。
あれは、ファズをつないだギターを10本重ねたっていうことなんです。もうすごかったですよ。“壁にしたい”って言って、L100、L80、L60、L40、L20、C、R20……に全員いる感じで。
それは、全部別トラックとして、1本1本録っているんですか?
そうです。コピペとかじゃなくて。怖いですよね、本当に(笑)。
(笑)。そういうサウンドにしようというアイディアはどのように生まれるんですか?
“その曲がどうなったらかっこよくなるのか”って想像して、“この曲の歌詞は、こういうことを歌ってるんだったら、背景は重々しいほうがいいな”とか。そういうのをお風呂からCubaseにいくまでの間で考えて、デモにしてますね。でも、Cubaseでデモを作ってる間に、“これだとしっくり来ないな”って思うこともあるので、そこから足し引きしていく感じなんですよね。なので、自分でちょっと想像したものに近付けていく作業という感じですね。
ところで、ギター・ソロもお風呂で考えるんですか?
そうですね。ボイスメモ……聴かせたいな、ヤバいですよ? 「アトレーユ」のボイスメモも“タラーラララ、チャーラッテレレ~、テレレー、テレーレレーレ、テレレ、ティーテッテ、ここからダブる!”みたいに、全部歌ってメモしてますから。
インプロヴィゼーションで挑むことはほとんどないんですか?
ギター・ソロは歌メロを作る時と同じ感じで考えるので、アドリブは全然ないですね。オブリガートとかだと、例えばBメロがエンドレス・リピートするようにインとアウトを打っておいて、そこをずっと録音しながら何度もアドリブで弾いたりはしますね。“あ、今のバシッとは来なかったけど、半分だけよかったから保留ね”みたいにして、ずっと録音してます。
最後に、ラブサマちゃんがギターに求める役割を教えてもらえますか?
曲によって求めるギターの音が違うので、一貫して“これを求めている”というのはないかもしれないですね。ですけど、やっぱりギターが一番キャッチーな楽器だとは思っているんです。自分がギタリストだからそう思うんだと思いますけど。だから、ギターを聴いた時に、“ハッ!”としてくれたらいいなって思いますね。
LOVELY SUMMER CHAN’s GEAR
GUITARS
PEDALS & OTHERS
最新作
『THE THIRD SUMMER OF LOVE』 ラブリーサマーちゃん
コロムビア/COCP-41239(初回限定盤)/2020年9月16日リリース