Interview|ラブリーサマーちゃん 『THE THIRD SUMMER OF LOVE』で見えた“ギター愛” Interview|ラブリーサマーちゃん 『THE THIRD SUMMER OF LOVE』で見えた“ギター愛”

Interview|ラブリーサマーちゃん 
『THE THIRD SUMMER OF LOVE』で見えた“ギター愛”

最近ハマってるのは
“ヘロヘロした感じ”ですね。

奥村さんは、“ギター・サウンド・コーディネーター”としてもクレジットされていますが、音に関するディスカッションはどういうことを話すんですか?

 私が“こういう音がいいんです”っていう参考の音源を渡したり、“こういう音で~”って説明したりして、そこからざっくり音を作っていただくんですよ。で、“あ、ここはそういう感じじゃなくて、もうちょっとヘロヘロな感じで”とか、スタジオで会話して詰める感じですね。

自分で音色作りをすることは?

 “ここの音はこだわりたいけど、スタジオの時間がないからどうしよう?”って時は、ラインでもマイクでも録っといて素材を確保して。それをあとでいじったりとか、そういうことはよくやります。「AH!」なんかは後エディットでやったと思いますね。あとは、「豆台風」とかもラインで録ったのを後日エディットしました。

ほかにラブサマちゃんがエディットした曲は?

 「豆台風」と「I Told You A Lie」は私がやりました。それを送って、ミックスしてもらったと思います。あと、「ミレニアム」は私がほとんど弾いていて、「サンタクロースにお願い」も私がけっこう自分でエディットしたり弾いたりしてます。

そのエディットは何のソフトを使うんですか?

 AmpliTubeとTHRと、Cubaseに元から入ってる“VST Amp Rack”っていうSteinbergのプラグインでほとんどやってます。

今作のテーマ・カラーは、オレンジとホワイトのストライプ。ということで、BOSSのOS-2とTC ElectronicのPolytune3でストライプを作ってパシャリ。

サウンド面について、ギターの音に関してこだわっているポイントは?

 曲によって違うんですけど、最近ハマってるのは“ヘロヘロした感じ”ですね。そのちょっと前は“ファズでエイヤー!”って感じでしたけど。

“ヘロヘロ”というのは、具体的にはどういった音色?

 私が最近ヘロヘロ感を出すのにやってるのは、コーラスやBitCrusher(Steinbergのプラグイン・ディストーション)とか、そういう変なのをかましてますね。あとは、クランチにしてフェイザーなどのモジュレーションをちょっとかけたり。

「AH!」の裏で鳴ってるのは、フランジャーっぽいモジュレーションがかかっていますよね。

 「AH!」のオブリガート的なリフは、80年代アメリカのパキーンとした華やかな感じのイメージで。あの頃のギターって、コーラスがかかり気味じゃないですか。それをやろうかなと思って、コーラスをかけてますね。あとは、「I Told You A Lie」なんかはホントにヘロヘロですし、「ミレニアム」も“あんまり覇気がない感じの曲にしたい”と思ってたので、全編をとおして弾いているリードも、けっこう“ヘロヘロに弾きたいな”と思ってやりました。

「ミレニアム」はアルペジオのリフが2番からフリーなオブリに発展しますが、こういう展開はどのように考えていくんですか?

 それこそ曲ごとに違うんですよね。「ミレニアム」は、静かに徐々に汗をかいていくようなイメージで、最初は“5月のそよ風の中、歩道を歩いてます”みたいな感じなんですけど、アウトロにかけて“ちょっと額に汗かいてたな”みたいに徐々に盛り上がっていくようにしたかったんです。だから徐々に音数を増やして、一番最後でファズを踏んで。頭から一番最後までの大きいクレッシェンドみたいなイメージで作りました。

逆に「LSC2000」とかは、イントロでガッツリ掴む感じですよね?

 これは“バチコーン!”みたいな感じで作りましたね。たしか大さんが弾いたのかな? このフレーズは私のギター練習から生まれたもので。メトロノームに合わせた基礎トレーニングみたいのって、つまんないな~と思っていて。で、“私が好きな練習用トラックを作ってやった方が、絶対練習するな”と思って、ペンタトニック・スケールで弾ける練習用トラックを作ったんですよ。それで“とりあえず、ペンタ・スケール弾いてみるか”と思ってやったら、“ん! 天才的なリフができた!”って(笑)。この曲はそのリフから作りました。

ボイスメモ……聴かせたいな、
ヤバいですよ?

セルフ・ライナーノーツには、“「心ない人」でファズを10台重ねた”と書いてありましたね(笑)。

 あれは、ファズをつないだギターを10本重ねたっていうことなんです。もうすごかったですよ。“壁にしたい”って言って、L100、L80、L60、L40、L20、C、R20……に全員いる感じで。

それは、全部別トラックとして、1本1本録っているんですか?

 そうです。コピペとかじゃなくて。怖いですよね、本当に(笑)。

(笑)。そういうサウンドにしようというアイディアはどのように生まれるんですか?

 “その曲がどうなったらかっこよくなるのか”って想像して、“この曲の歌詞は、こういうことを歌ってるんだったら、背景は重々しいほうがいいな”とか。そういうのをお風呂からCubaseにいくまでの間で考えて、デモにしてますね。でも、Cubaseでデモを作ってる間に、“これだとしっくり来ないな”って思うこともあるので、そこから足し引きしていく感じなんですよね。なので、自分でちょっと想像したものに近付けていく作業という感じですね。

ところで、ギター・ソロもお風呂で考えるんですか?

 そうですね。ボイスメモ……聴かせたいな、ヤバいですよ? 「アトレーユ」のボイスメモも“タラーラララ、チャーラッテレレ~、テレレー、テレーレレーレ、テレレ、ティーテッテ、ここからダブる!”みたいに、全部歌ってメモしてますから。

インプロヴィゼーションで挑むことはほとんどないんですか?

 ギター・ソロは歌メロを作る時と同じ感じで考えるので、アドリブは全然ないですね。オブリガートとかだと、例えばBメロがエンドレス・リピートするようにインとアウトを打っておいて、そこをずっと録音しながら何度もアドリブで弾いたりはしますね。“あ、今のバシッとは来なかったけど、半分だけよかったから保留ね”みたいにして、ずっと録音してます。

最後に、ラブサマちゃんがギターに求める役割を教えてもらえますか?

 曲によって求めるギターの音が違うので、一貫して“これを求めている”というのはないかもしれないですね。ですけど、やっぱりギターが一番キャッチーな楽器だとは思っているんです。自分がギタリストだからそう思うんだと思いますけど。だから、ギターを聴いた時に、“ハッ!”としてくれたらいいなって思いますね。

LOVELY SUMMER CHAN’s GEAR

GUITARS

Fender American Professional Jazzmaster
【フェンダー・アメリカン・プロフェッショナル・ジャズマスター】現在メインで活躍するジャズマスターは、2017年に入手した1本。ピックアップは常にセンターで、トーン、ボリュームはフルで使うそう。

Ovation Celebrity CC257
【オベーション・セレブリティCC257】ギターを始めた時から愛用する、オベーション・セレブリティ・シリーズのCC257。当時はインターネットでコード進行を検索し、このギターで弾き語りをしていたとのこと。

Fender Telecaster(Made in Japan)
【フェンダー・テレキャスター】高校入学祝いに買ってもらった初めての自分のギター。見た目を気に入り購入したものの、自身の音楽性と合わなくなりメインの座から降りた。1995〜1996年製のUシリアルのため、ラブサマちゃんのバースデー・ビンテージかも?

Yamaha FS-720S
【ヤマハFS-720S】アコースティック・ギターのメインとして使用しているのは、ヤマハのエントリー・モデルFS-720Sだ。比較的小柄なボディ・サイズなので、小柄なラブサマちゃんにもフィットするのだろう。

Yamaha No.G-100
【ヤマハNo.G-100】おもに作曲の時に使用しているというクラシック・ギターの名器、ヤマハNo.G-100。単板スプルース・トップにフィギュアドのメイプル・バックも美しい1本だ。

LSC ORIGINAL MOSRITE TYPE
【LSCオリジナル・モズライト・タイプ】自作キットでイチから制作中の1本は、ジョニー・ラモーンズのモズライトMark II Jr.をモチーフにしたもの。ボディのオレンジ・フィニッシュなど、すべての工程をひとりで行なっている。制作風景はラブサマちゃんInstagramをチェック!

PEDALS & OTHERS

LOVELY SUMMER CHAN’s Pedalboard
ラブリーサマーちゃんのペダルボード。基本的にはこのボード上の必要なものをピックアップして使う。左上から時計回りにBOSS/DSD-3(サンプラー/ディレイ)、MXR/Super Comp(コンプレッサー)、BOSS/OS-2(オーバードライブ/ディストーション)、BOSS/BD-2(オーバードライブ)、ProCo/RAT2(ディストーション)、TC Electronic/Polytune3(チューナー)、Danelectro/D-1 FAB Distortion(ディストーション)、Z.Vex/Double Rock!(オーバードライブ)、SKS AUDIO/DEEP RED(ディストーション)、D-CUSTOM/Distron(ディストーション)、TC Electronic/HALL OF FAME(リバーブ)。

ボードからははずされていたが、たまに使うという3台。左からBOSS/RC-30(ルーパー)、HOTONE/VOW PRESS(ボリューム・ペダル)、エレクトロ・ハーモニックス/BIG MUFF Pi(ファズ)。

YAMAHA THR5
【ヤマハTHR5】デモ制作などの宅録作業で使用しているTHR5。そのままオーディオ・インターフェースとして使うこともあれば、デスク上でマイキングして録音することもあるという。

最新作

『THE THIRD SUMMER OF LOVE』 ラブリーサマーちゃん

コロムビア/COCP-41239(初回限定盤)/2020年9月16日リリース