Interview | キョウスケ&ロマンチック☆安田(爆弾ジョニー)【前編】等身大のセルフ・タイトル作『爆弾ジョニー』 Interview | キョウスケ&ロマンチック☆安田(爆弾ジョニー)【前編】等身大のセルフ・タイトル作『爆弾ジョニー』

Interview | キョウスケ&ロマンチック☆安田(爆弾ジョニー)【前編】
等身大のセルフ・タイトル作『爆弾ジョニー』

前作『H1OPE』から約1年、爆弾ジョニーがセルフ・タイトルを冠したアルバム『爆弾ジョニー』を昨年11月にリリースした。今年1月に各種サブスクリプション・サービスでの配信が決定したタイミングで、キョウスケ(g)とロマンチック☆安田(k)のインタビューをお届けしよう。“等身大の作品”と語る本作はどのようにして生まれたのか、彼らの友人でもある編集部の小林が取材しました。※本人の強い希望により、ロマンチック☆安田の写真は小学生の時のものを掲載しています

取材・文=小林弘昂 ライブ写真=一色華


せっかくメンバーがいるんだから、
良いアイディアが出てくるだろうと思って。
──キョウスケ

キョウスケ(g)
キョウスケ(g)

今作『爆弾ジョニー』は、前作『H1OPE』から約1年ぶりのリリースということで。

キョウスケ 『H1OPE』を録り終わってすぐくらいの段階で「東京」と「マリア」があったから、“それを録りたいよね”っていう話になって。1年ぶりですけど、前の作品の段階から構想はあったんじゃないかな。

安田 あと『H1OPE』の制作の最終段階の時に、りょーめー(vo)が“次はセルフ・タイトルがいい”みたいに言ってた記憶があります。コンセプトは決まってなかったんですけど、セルフ・タイトルっぽい、等身大な感じなのかもしれない。そう感じました。

2020年の秋くらいから「マリア」はライブで演奏してましたもんね。

キョウスケ 「マリア」と「東京」は、録ったのもけっこう前だったんじゃないかな?

安田 2021年の3月かな。ほかの曲は6月にまたレコーディングして。

キョウスケ その2曲が先にあって、もうそれありきで録って出したいという話になったので、ほかの曲はそれに付随してきた感じですかね。だんだん集まっていって、“じゃあまたレコーディングしなきゃね”ってなった気がします。

安田 あと最後の「123356」。あ、“ワン・ツー・スリー・スリー・ご・ろく”って読みます。これはりょーめーの曲で、もう3〜4年前に録ってあったんですけど、いわゆる“お蔵”になっていて。でも、出したかったから今回許可をもらって、ご厚意により収録させてもらって(笑)。だから「123356」と「マリア」と「東京」が最初のイメージにあったと思われます。

そう考えると、そこに安田君の“脳内架空アニメ・タイアップ”の「ピーチ♡いちごアメ」が入ってくるのは恐怖を感じます。

安田 あれも計画されていたんですよね。2020年の年末に“昔の爆弾によくあったコメディ・タッチの曲が欲しい”となったんですけど、そういうのは札幌の実家から東京に出て、日々の暮らしにいっぱいいっぱいになったせいで作れなくなってしまって。

上京してからは自分を救うための曲を作っていたと。

安田 20歳の時はああいうのは簡単に作れましたけど、もう作れなくなっていて。2021年1月6日がデモを出す最初の締め切りだったんですけど、どうしても曲ができなかったので、先に架空のアニメの設定を全部作って、そのあとに曲を作りました。オレの小さい声と、ライン録りのエレキ・ギターの音だけのデモが1月6日にメンバーのもとに届いています。それは「ピーチ♡いちごアメ(Naked Silent Kiss ver.)」っていいます。

ビートルズの『Let It Be…Naked』みたいな感じでリリースしましょうよ。

安田 ネイキッド・バージョンでね。そうだ、“ボーナス・トラックで付けるか”みたいなことを言ってたけど忘れてた。今思い出した……。

それは忘れちゃダメですよ!

安田 データが残ってたら出そうかな。今回キョウスケが作った曲は「B級映画」です。何曲か候補がある中から選びました。

キョウスケ “どんなのがいいかな?”って2〜3曲持って行ったんですけど、「B級映画」はオレ的にもそんなに手応えなくて。

安田 (笑)。

キョウスケ メンバーの反応もそんなにで。

安田 (笑)。

キョウスケ “どうしようかな?”って思って。この時期は本当に曲が書けなくて、なんとか出してっていう感じだったんです。あとスタジオでもみんなにぶん投げたところが多かったかな。

安田 コード進行とメロディと歌詞は全部決まってたけど、アレンジはほぼなし、みたいな。ベースラインとかイチから作ったしね。

キョウスケ 今回は“そうしてみたいな”とは思ってたんだよね。

安田 特に最初に明言することなく丸投げだったので、“ヤバい、全然見えてないもの持ってきた!”と思ってましたけど、そういうことらしいです。

なぜ今回はアレンジをメンバーに任せてみようと?

キョウスケ 今までは作り込んだものを持って行って、“これやってよ”っていうパターンが多かったんですよ。でも“それは自分1人でやればいいじゃん”って考えるようになったし、せっかくメンバーがいるんだから、良いアイディアが出てくるだろうと思って。だからバンドありきで書けた曲かなぁ。“この感じだったらたぶん小堀君(b)のベースが生きるな”とか、“タイチ(d)の違う感じを引き出せるかな”っていうのをイメージしながら書いてみました。個人的に爆弾史上一番リズムが効いてる曲だなと(笑)。

安田 ギターに関しては、サビのリバースがかかってるフレーズがめちゃくちゃ良い。

キョウスケ 歌詞が“巻き戻し”だの言ってるから、そういうのを入れたろうと思って。

安田 あのフレーズで2本くらい重ねてるよね?

キョウスケ そうそう。

安田 それがすごかった。

キョウスケ 良い感じにハマってくれて。

安田 爆弾らしからぬハイテク。あとソロがゴリ難航しました。こういう曲は普通クリーンにするじゃないですか? でもイマイチで、逆に超歪ませようってことで、今剛さんが弾いた宇多田ヒカルさんの「Automatic」のアウトロみたいにしようとライン録りでRATのモデリングを試してみたり。アコギは“SMAPみたいになる”っていう理由で避けてたんですけど、結局アコギのソロが一番良かったので、それを採用しました。

この曲のギターは?

キョウスケ テレキャスとアコギです。アコギはギブソンのHummingbird。

この1年間、新しいインプットはありました? 安田君は前回のインタビューで“TWICEから勇気をもらってロバート秋山さんに挑みたい”と話していましたが。

安田 TWICEは当初ほどの勢いはなく。もちろん今でも大好きですが。

えっ、マジですか? 2021年のTWICEは『Kura Kura』から『Doughnut』まで超良い曲いっぱいリリースしたのに……ONCE(TWICEのファン)失格ですよ。

安田 あと11月に車を買いまして。

それは書いてもいいんですか?

安田 大丈夫です。“お金がないのに車を買った”って書いておいて下さい。お金を持っていると思われるので。車があることで行動範囲も変わってくるだろうし、楽器も持って行けるし、男として“エンジン”を持つっていうのは大事。

キョウスケ (笑)。

安田 “エンジン持ってる男”みたいな、古風な感じで。2022年以降、車を持っていることが効いてきてもらわないと困ります。高いお金を出して買ったので……。

キョウスケ君は?

キョウスケ 働いている環境もあるんですけど、音とか機材に対する向き合い方は相当変わった感じはあります。

安田 キョウスケは楽器のリペアとか製作の仕事をやっていて。

キョウスケ そう。この1年通して考えていたのは“ギターの立ち位置”で。最近の曲を聴いていると、本当に“ギターっぽくない”のが求められているというか。そこに対してずっと悩んでいるけど、“ギターがどういう風にあったらいいのかな”っていうのを考えていた1年だったかなぁ。だからギターをそうするためにも、“ベースはもっとこうあってほしい、そういう音像のほうがいい”っていうことをすごく相談しました。

安田 2021年の12月にも今作に入っていない曲をレコーディングしましたし、そういう意味では制作の1年でした。2021年の前半は世の中的にライブが全然なかったですからね。

キョウスケ “ライブをやろう”っていうテンションにもならなかったしね。曲作りが難航した一番の要因だったかもしれない。“作ってどうするの?”みたいな。

作ったあとに披露する場がないというか。

キョウスケ そうそうそう。

安田 だからレコーディングしようっていう話になったのかも。2022年も早いタイミングでリリースがありそうなので、そういう意味では良い方向にいったかもしれないですね。……これインプットの話か?

キョウスケ “1年間どうだったか?”じゃん(笑)。

安田 キョウスケは楽器を作っていたこと、オレは車を買ったことがインプットっちゃあインプット。

キョウスケ DIYのインプットが増えましたね。

「ピーチ♡いちごアメ」は
一応「紅蓮華」を目指したんですけどね。
──ロマンチック☆安田

ロマンチック☆安田(k)
ロマンチック☆安田(k)

それとキョウスケ君は機材も変わって。

キョウスケ そうですね。極端に変わったわけじゃないですけど、ブラッシュアップしていったっていう感じかな。カスタムショップのテレキャスターを買ったり、アンプ・ヘッドも導入したり。だから今作は前作との音の違いを楽しんでもらえるかもしれないな。エンジニアさんとかレコーディング・スタジオの力もありますけど。

レコーディングで使った機材は?

キョウスケ エレキはレス・ポールとテレキャスター。アンプはSHINOS & LのROCKETっていうモデルです。アンプのツマミはだいたいGAINが8時、TREBLEが1時、BASSが2時、REVERBが9時、MASTERがMAXだった気がするな。MASTERは10に近ければ近いほど良いと思ってるので(笑)。

安田 同じ! めっちゃわかる。

キョウスケ あとはボリュームの調節をGAINでやる感じ。基本的にMASTERを10にして使いたいと思っていて、レコーディングでは絶対にそうします。そのアンプは自分用に改造していて、GAINツマミを引っ張るとミッド・ブーストされるんです。

安田 テレキャス用?

キョウスケ いや、テレキャス用ってわけでもないんだけど、このアンプはMIDDLEが付いてないから。

安田 VOXっぽい回路?

キョウスケ そう。

安田 だよね。ミドルが“ガンッ!”ってくる感じじゃない。

アンプのリバーブはかけっぱなしで?

キョウスケ そうです。リバーブはあっても良いと思ってる派なので。オケ中だと“リバーブかかってるな”っていう感じはしないかな。

安田 たしかに。

キョウスケ ギター単体で聴いたら“ちょっとリバーブかかってるな”って感じると思うんですけどね。あとはビンテージのマーシャル1987も借りて使いました。すごく高いやつ。「マリア」はマーシャルで。

ROCKETも1987も、アンプ自体はクリーン?

キョウスケ そうですね。強く弾いたらクランチになるくらいかな。

安田 アンプじゃないですけど、Line 6のHX Stompがけっこうレコーディングで活躍してましたよ。

キョウスケ 使いました。ビンテージ機材はすごく良いと思ってるんですけど、現代感も多少はないといなたくなっちゃうので、ほどほどにデジタル要素が欲しくなるんですよね。

HX Stompはどんなエフェクトで?

キョウスケ 同じ構成の中でディレイを3つ同時にかけたりしていて、1つは付点8分で、もう1つは付点4分で、最後の1台でコントロールして、みたいなことをやったり。コンパクト・エフェクターを並べれば同じことはできるんですけど、それが1台で収まるのはすごく便利。オレは静かな曲でディレイをかけたくて、フワッと広がりが出るし、ギターっぽくない感じになるのかなと思って、そういうのはこだわったかな。あとは再生しているレコードの針をグッと押した時に音程が下がるじゃないですか? ああいう揺れ方がするコーラスのモードがあって、「B級映画」で使ってみました。

安田君は今回ギターを弾いてるんですか?

安田 「猫」と「ピーチ♡いちごアメ」で。「ピーチ♡いちごアメ」のベーシックは全部オレで、キョウスケはソロだけです。

「ピーチ♡いちごアメ」で使ったギターは?

安田 キョウスケのテレキャスですね。その日レス・ポールがあったらレス・ポールにしていたと思いますけど。アンプはスタジオにあったBognerのEcstasy。それとラウドな音楽をやってるギタリストはローを切るために、ハイゲイン・アンプにTube Screamerをかますじゃないですか?

マストドンのブレント・ハインズとか、昔のカーク・ハメットとか、そうする人が多いかもしれないですね。

安田 TSの代用で、スタジオにあったマーシャルのBlues Breakerを使いました。昔ジョン・メイヤーが使ってたモデル。そしたら“みんなが想像する普通のラウド・ロックの音”が出てきてウケました。すごくキレイな音なんですけど、特に何かを訴えかけてくるものはなかったな。でも収まりが良い!

キョウスケ 本職でラウド・ロックをやってない感じが出てて、すごく良いと思った(笑)。

安田 だから“なんちゃってアニソン感”がすごく出たのかも。

キョウスケ 安田君がそういう曲を書く時って、良い感じに“なんちゃって”になるというかね。すごく良いことだと思ってる。

安田 あぁ〜。本気の人が本気でセッティングしたらもっと“ガツッ!”とした音が出ていたのかもしれないけど、オレが適当にやったら適当に良い感じの音が出た。それとイントロのアルペジオだけめちゃくちゃ難しかったので、チューニングを変えて弾いています。

キョウスケ そうなの(笑)?

安田 クリーン・トーンだから難しくて。それはスタジオにあったMesa/Boogieの一発のコンボ・アンプを使ったんですけど、“へぇ〜、こんなんあるんだ”みたいな気持ちで弾きました(笑)。この曲はギターよりもコーラスと掛け声が命ですから。

“Oi!”ですね。

安田 これのルーツはアレですよ、TWICEとかのK-POPアイドルのライブでのオタクの掛け声。まぁ、日本のアイドルもそうなんですけど。

でもONCEやARMY(BTSのファン)の掛け声は本当にすごいですよね。

安田 そのオタクの掛け声を曲に組み込んでみたかったという。この曲の元ネタはTWICEの「FANCY」ですね。「FANCY」のイントロのオタクの掛け声です。

メンバーの名前を叫ぶところですね。

安田 そうそう。こういうのって良い曲じゃないとギャグとして成立しないんですよ。本当に面白いことをしなきゃいけないから、ミュージシャンの“ぬくぬくとした部分”を捨てなければならない。

チューニングはドロップDで?

安田 ギターは間奏だけドロップDにして、たくさん歪ませています。ベースは丸ごとドロップD。

ギター・ソロにリング・モジュレーターっぽい音が入ってますよね?

キョウスケ そうですね。あのイメージは東京事変の「群青日和」。

あのフレーズはオクターブ・ファズとフェイザーらしいですね。

キョウスケ あ、そうなんですね(笑)! そういう異質な感じになったらいいなっていうのでHX Stompで何パターンか音を作って、“こういう方向でいいんじゃない?”みたいになって録ったかな。

安田 それで言うと「ピーチ♡いちごアメ」は一応「紅蓮華」を目指したんですけどね。……まっっっっったく到達してないですけど。だからドロップDとBognerで。

あぁ〜、PABLOさんっぽい感じを目指したんですか。

安田 PABLOさん、めちゃくちゃリスペクトしています。マジでカッコ良い。

っていうか安田君、「紅蓮華」フルコースで聴いたことあるんですか? この前まで『鬼滅の刃』すら知らなかったじゃない?

安田 いや、「紅蓮華」サビしか知らないんですよね。アニメ自体もあんまり観たことなくて。架空のアニメの設定を細かく作ったんですけど、本当にアニメのことを知らないから全部なんちゃって。

良いんだか悪いんだか……。

安田 1枚絵だけなんですけどMVを作って、その絵は頑張った!

いや、安田君は描いてないじゃない(笑)!

キョウスケ 正しくは“頑張ってくれた”だよ(笑)。

安田 オレは描いてないけど、“チームとして頑張った”っていうことを言いたかった。

みんなの力で、ですね。

安田 デザイナーと1回ちゃんと打ち合わせして、その時に観たことないアニメのタイトルを10個くらい並べて、“こういうイメージで、日常系みたいなやつにしたい”ってお願いして。で、女の子はかわいいキャラを好きに描いてもらって、“「男の子は作画が崩壊していてほしい」っていう要望がタイチとりょーめーからきています”っていうのを伝えたら、かなり完璧な絵が仕上がりました。主人公の男の子が迷彩柄のズボンを穿いているところとか。

それはもうデザイナーさん1人だけの力ですね。というか主人公の男の子、あれ完全にタイチ君でしょ(笑)。

安田 タイチなんですよね。タイチじゃないけど(笑)。そのMVにあらすじとかキャラ設定とかバーっと書いてあるんですけど、文字量が多すぎて文字が小さくなっちゃったので、頑張って観て下さい(笑)。

作品データ

『爆弾ジョニー
爆弾ジョニー

ライブ会場&通販限定販売/2021年11月4日リリース

―Track List―

01.東京
02.マリア
03.Ultra KOBORI
04.ピーチ♡いちごアメ
05.いいじゃん!
06.猫
07.B級映画
08.123356

―Guitarists―

りょーめー、キョウスケ、ロマンチック☆安田