Interview|THE CHARM PARK気鋭SSWが贈る『THE CHARM PARK×WOWOW SPECIAL LIVE』 Interview|THE CHARM PARK気鋭SSWが贈る『THE CHARM PARK×WOWOW SPECIAL LIVE』

Interview|THE CHARM PARK
気鋭SSWが贈る『THE CHARM PARK×WOWOW SPECIAL LIVE』

繊細なコード・ワークから流麗な指使いの大胆なソロまで幅広い表現で魅せるアーティスト、THE CHARM PARK。彼がWOWOWとタッグを組み、コンセプチュアルなライブ・パフォーマンスを行なうことが発表された。『THE CHARM PARK×WOWOW SPECIAL LIVE』と題された本プログラムの放送は4月20日(火)深夜0時〜を予定。気になる内容は、60年代、70年代、80年代、現代と、各時代を象徴するシチュエーションに合わせてTHE CHARM PARKの音楽が鳴り響く……というコンセプチュアルなもの。各時代の空気感を見事に切り取った映像演出に合わせて、特別にアレンジを施したバージョンで披露されるというのだ。編集部はさっそく撮影現場に潜入取材を敢行! 音楽好きならば思わずニヤリとしてしまう素敵なアレンジが随所に仕込まれたスペシャル・ライブについて本人に話を聞いた。

取材=尾藤雅哉 アーティスト・機材写真=吉岡希鼓斗 ライブ写真=勝永裕介

今回、“音楽は他者と通じ合う言語”に
なり得るんだと強く実感しました。

今回の収録ライブは、60年代から70年代、80年代、そして現代まで、それぞれの時代を象徴するシチュエーションの中で演奏するというユニークな内容ですね。

 最初にWOWOWから“90分のライブをやってほしい”というオファーをいただいた時に、“視聴者を惹きつけるためにどんなパフォーマンスをしたらいいんだろう?”ということをすごく考えました。その時に、まだ僕のことを知らない方に興味を持ってもらい、なおかつTHE CHARM PARKの音楽を楽しんでもらうためには、既存のステージをそのまま収録するのではなく、“テレビの特性を生かした収録ライブならではのパフォーマンスをしたい!”と思ったんですよね。そこで、過去から現代まで “音楽が時代を超えていく”というテーマを提案して。結果としてかなり大がかりな収録になってしまったので、スタッフさんは大変だったと思うんですけど、こうやって実現していただいてすごく嬉しいです。映像の演出も時代感を忠実に再現していただくので、放送される日が本当に待ち遠しいんですね。

おもしろい試みですよね。演奏する際に各時代で参考にしたミュージシャンはいましたか?

 60年代で象徴的なバンドと言うと、もちろんビートルズですよね。あとは、ティールマン・ブラザーズというインドネシアのロックンロール・バンドです。数日前にアメリカのテレビ番組に出演したライブ映像をYouTubeで観たんですけど、とてもおもしろかったので彼らをオマージュしたパフォーマンスを取り入れてみました。70年代パートにはサイケ・ムーブメントの象徴としてジミ・ヘンドリックスやビー・ジーズ、アース・ウィンド&ファイアーなんかの要素が入っています。80年代は、個人的にジャーニーとヴァン・ヘイレンが象徴的だと思いますね。もっとマニアックなアーティストもいるんですけど、それはまたの機会にしようかと思っています(笑)。

既存の楽曲を各年代に合わせてアレンジを変えて披露するというのはCharmさんにとってチャレンジになったのでは?

 とても良い勉強になりましたね。僕の曲が生まれたのは2010年代ですけど、それをいろんな時代のアレンジで演奏してみるという試みは、自分の中でも素晴らしいチャレンジになったと思います。EDMの要素を取り入れた「Turn It Around」を一番古い60年代風にパフォーマンスしてみたり、逆に「アタック」は原曲からそんなにアレンジを変えないままで60年代の雰囲気に合う感じがして、ちょっと不思議な感覚でしたね。自然と時代を超えていた感じというか。「マジック」も最初から70年代の雰囲気にピッタリとハマりました。その逆に、年代と合わなさそうな曲をあえて選んだりもしたんですよ。原曲とは違った雰囲気に仕上がったので、僕自身も楽しみながら演奏できました。バンド・メンバーとのリハーサルが2日間しかなかったので、自分の頭の中にあるイメージを具現化できるか心配な面もあったんですけどね。でも、音楽好きなメンバーが集まっているのでイメージをすぐに共有することができました。今回の企画を通して“音楽って他者と通じ合う言語になり得るんだな”って強く実感しましたね。

なるほど。アレンジする上でこだわったところは?

 まずは各年代の世界観に合った雰囲気とサウンドを作りたいと思っていました。ライブ音源のミックスは毎回自分でしていて、音質までこだわっているので、ぜひそこもチェックしてほしいです。

ギターはソロだけでなく、
コードでも歌える素敵な楽器。

演奏曲のセットリストはどうやって決めたのですか?

 頭の中に3分の1くらいイメージがあったので、それをもとにバンド・メンバーに相談しながら決めました。アレンジを変えてやってはみたけど、今回のセットリストに入らなかった曲もありましたね。

ちなみに90年代が入っていないのは……?

 1番の理由は“時間”ですね。アレンジを作り込んだり、収録する時間が足りなかったり……。もちろん最初の企画の時点では90年代も入っていて、ニルヴァーナかレディオヘッドっぽい感じでやろうと思っていたんですよ(笑)。

アレンジを作り込んでいく上で、アンサンブルの中心に考えていたことは?

 もちろんリズムも大事ですけど、僕がアレンジする時に軸として考えているのが“ギターの音作り”なんです。ギター・サウンドによっておのずとリズムも決まるような気がしていて。例えば80年代だったら、ある程度ハイゲインなドンシャリなサウンドにちょっとデジタル・リバーブをかけて弾いてみると、それがバンドにも伝わって自然とその時代特有のアレンジが導き出されるような気がするんです。あとリフを弾く時の右手のアクセントでも時代感は表現できると感じました。ほかにも60年代だと、テンションを入れたコードの響きだと時代の雰囲気が出なかったので、あえてオープン・コードにしてみたり、7thを入れずにトライアドだけで雰囲気が出せるようにアプローチしてみました。ギターを通していろんな発見がありましたね。

現在、Charmさんはギターという楽器に対してどのような印象を持っていますか?

 僕にとって本当に欠かせない楽器ですね。作曲はもちろん、打楽器としてリズムも作れるし、サックスみたいにメロディアスなソロも弾けるし、コードで伴奏もできる万能な楽器で大好きです。いろんな表現ができるのはギターならではの特徴だし、アンサンブルの中で主役にも脇役にもなれる。しかも弾き語りのように1人でも音楽を成立できるのも強みだと思います。最新作の『Bedroom Revelations』(2021年)では、あえて“ギタリストのCharmはガット・ギターだけしかプレイしない”という制限を設けてみたんですよ。自分の首を絞めている気もしますけど(笑)、この作品にはそれくらいのバランスが合っている気がしたんですよね。

楽曲の中でギターをいろんな役割で使用しているんですね。その使い分けに関してはどのように考えているのですか?

 ミュージシャンとしての僕の中には大きく分けて、“ギタリスト/アーティスト/プロデューサー”という3つの要素があるんです。プレイヤーとしてギターを弾く自分、“こうやって表現したい”というアーティストの自分、全体の音像を俯瞰して冷静にプロデュースする自分、みたいな。その3つがお互いにギブ&テイクをしながら、曲に対してちょうどいいバランスを考えて音楽を作り込んでいるような気がします。

ちなみにCharmさんは大橋トリオさんにサポート・ギタリストとして参加したり、ASIAN KUNG-FU GENERATIONを始めとするさまざまなアーティストへ楽曲提供をしたりしていますね。その経験は自身の音楽表現に対してどのような影響がありましたか?

 より自分の曲を客観視できるようになったのかもしれないですね。“この曲の中で自分がどうやって目立つか?”ってことよりも、“素晴らしい音楽”として成立させることのほうが大事というか……それは誰かが教えてくれたわけでもなく、自分で発見できた気がしています。楽曲提供も同じで、完成した音源を聴いた時に自分の我を出さなくても結果として“出てしまう”ことがわかったので(笑)、そんなに無理をしなくてもいいんじゃないかな? って思うようにもなりました。

“時代を超えて歌い継がれていく音楽”とはどんなものだと思いますか?

 言葉では説明しづらいんですが……音源に込められた“熱さ”が重要な気がします。例えば僕の好きなレッドボーンというネイティブ・アメリカンのバンドの「Come and Get Your Love」(1973年)は、音源から演奏者の人間的な魅力がすごく伝わってくるんですよ。そういう部分が聴き手に伝わったからこそ、音楽が後世に残っているんじゃないかなって感じます。歌がいろんな楽器の音と一緒に鳴らされて“ひとつの塊”になって響くのはバンド・マジックによるものだし、音楽が時代を超えていくための正解の1つなんじゃないかとも思うんですよね。

これから先の未来、ギターで表現できる音楽の魅力はどんなものだと考えていますか?

 僕にとってギターは一番歌いやすい楽器なんです。しかも自分の声じゃなくても“歌う”ことができることが大きな特徴だと思うんですよね。単音で弾くソロだけでなく、コード・ワークでも歌うことができるじゃないですか。そんな表現ができる楽器って素敵だと思うし、これから先の未来もなくならないと思います。あとギターってサウンドホールがお客さんのほうに向いているじゃないですか。そうやって音を前に飛ばせるという特性も含めて、ギターは音楽を人に届けるための楽器だと思っていて。だからこそ僕自身はこれからのギターという楽器の進化が楽しみだし、僕もその進化に少しでも関われるように良い曲を作っていきたいと考えています。

最後にスペシャル・ライブを観る人へ向けて一言お願いします!

 いろんな時代の音楽をアレンジするうえでギターで表現できる幅の広さが本当におもしろくて……。今回の企画で改めて楽器を演奏する楽しさを再確認できましたね。リスペクトの気持ちを持っていろんなミュージシャンをオマージュした演出はぜひ観てほしいです。あとは時代ごとに弾き方を変えたり、手にする楽器にもこだわったので、ぜひTHE CHARM PARKのギターにも注目して楽しんで下さいね。

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