Interview|佐々木亮介&アオキテツ(a flood of circle)ロックの極限美を探し求めた15年。 Interview|佐々木亮介&アオキテツ(a flood of circle)ロックの極限美を探し求めた15年。

Interview|佐々木亮介&アオキテツ(a flood of circle)
ロックの極限美を探し求めた15年。

作曲者の“ここは譲りまへんでぇ~”みたいな匂いを察するセンサーが働く
── アオキテツ

「星屑のレコード」はジャジィですよね。

佐々木 そうなんですよね。THE BACK HORNとは思えないⅡ-Ⅴ-Ⅰ。

アオキ でも、もらったデモの中で“一番バンドのデモやな”って感じでしたけどね。

佐々木 そう。コードはジャズっぽいけどめっちゃ歪んでるギターで入ってたんで、“あ、これがTHE BACK HORNイズムなのかな”と思ってそこは忠実にやっています。“クリーンなギターでポローンと弾いて、このトーンをわからせる”みたいなのが常套手段な気もしたんですけど、そこはあえてパワーを出しまくるっていう。

基本のコード感は佐々木さんが担っていて、そこにテツさんは1本でコード・バッキングからオブリまで弾いていきます。テツさんは佐々木さんのギターに対してどういう感じにでアプローチしていくんですか?

アオキ 基本的に一筆でいきたいので、曲を通して聴いて“隙間が生きそう”っていうところはそのままにしてますね。最近はあんまり埋めないように弾いているかな。省エネに生きていきたいんで(笑)。

逆にギターを入れるタイミングは、どういうタイミング?

アオキ 歌と歌の合間ですね。この曲に関しては特にそう。最近の曲“ギター弾き過ぎでしょ”って思うんですよ(笑)。

(笑)。たしかに複雑なアンサンブルは増えてる気がしますね。この曲のソロはわりとメジャー・スケールが主体でメロディ優先な感じですが、どんなイメージ?

アオキ あれは完全にSCOOBIE DOのマツキタイジロウを憑依させようと頑張った結果ですね。形から入るタイプなんで、ES-335を使って。これは家で頭から最後まで浮かんだので、そのまま家で録音しました。

「夕暮れのフランツ 凋まない風船」は、G→DといったあとのC7がすごくthe pillowsっぽいなと感じました。

佐々木 そこがめちゃくちゃ(山中)さわおさんですよね。あと、イントロのリフの絶妙な力の抜けたオルタナっぽい感じっていうか、ああいうのはやっぱさわおさんのシグネチャーっていう感じがします。

C7にいった時、佐々木さんのコードが少し歪んでいるので、テンション感が抑えめになっていますが、それに対するテツさんのアプローチでセブンス感を強調している印象がしたんですよね。

佐々木 すごい渋いところを……でもそこは全然ナチュラルにやってますね。ただ、たしかにあそこのセブンスが一番特徴的だから、感じ取りながらやってただけかもしれない。

今回、作者側へ寄せる部分と自分らしさのバランスについてはどのように考えていましたか?

佐々木 俺は、その人に頼んだ意味的にもメロディはなるべくそのままやろうと思ってたから、やっぱり俺たちらしさはサウンドかな……。自分の弾き方で自分のサウンドであれば、曲提供してもらっている関係としてバランスがいいかなとは思ってたので、あまりメロディを極端にいじったりはしてないですね。

テツさんは?

アオキ もらったデモを聴いてて作曲者の“ここは譲りまへんでぇ~”みたいな匂いを察するセンサーが働くんで、そこはそのままにしていて。あとはけっこう好きに弾いてますね。

センサー(笑)。

アオキ ただ、ギター・ソロに関しては完全にご褒美なんで、誰が何と言おうと好きに弾いてます。

“シンプルなのに印象深い何か”を模索したい
── 佐々木亮介

後半は楽曲提供アーティストたちの曲をカバーしていますが、選曲はどう進めていったんですか?

佐々木 メンバーにやりたい曲を聞きつつ、それぞれとの関係性や思い出からストーリーを考えて選んでいきましたね。

提供曲の演奏よりもカバーのほうがよりAFOCらしさを意識する必要があると思いますが、原曲に印象的なギター・フレーズが多いですよね。

アオキ そうですね。しかも、3ピースもいればソロ・アーティストもいるし、ギターが2人いるバンドがthe pillowsくらいですからね。だから、ほっぽり出された気分です。

(笑)。自分たちらしさと原曲のイメージはどのように意識してギター・アレンジを進めていきましたか?

佐々木 AFOCのツアーで対バン相手の曲をカバーするのはよくやっているので、“ライブでやるイメージ”っていうのは基準として考えてましたね。例えばユニゾンの「WINDOW開ける」の分厚いコーラスも、バンドの演奏としてライブでできるくらいにしたり。それをやっていくと、過去の経験上すごくAFOCらしくできるので、それが一番テーマとしてあったかな。“ライブっぽくやれば、自然とAFOCらしさが出てくる”というか。でも、人の曲をコピーするのって、一番成長するなって思いますね。

自分からは出てこないフレーズへのチャレンジという点ですかね?

佐々木 それもありますね。ただ、そもそもギターを始めた時って人の曲しかやってないわけじゃないですか。その時期の経験値で、みんなその後を生き延びていて。で、そこからもコピーし続けてる人って、めちゃくちゃ成長してると思うんですよ。でも、たいていどこかでやめちゃうんですよね。“新しいのは興味ない”って言うのが楽になってきたりするから。だから、こうやってカバーをやってるのって、バンドの経験値としては超デカいと思うんですよ。カバーして違うことを経験するって、超大事だなって思いますね。

なるほど。今回のカバーでギター的に難しかった曲はありますか?

佐々木 一番はTHE BACK HORNの曲。テンポをめちゃくちゃ速くしたから、リフが大変だった(笑)。

その「コバルトブルー」はイントロのリフからサビをモチーフにしたオブリに入っていきますけど、あのアイディアはどう生まれたんですか?

佐々木 “ギター2本でやる意味”っていうのを大事にしたいと思っていて、“もしこれがAFOCの曲で、俺が思い付いた曲だったらこうするな”っていうアイディアなんです。パワー・コードの上にリードを乗せるっていう、2本いたら大体そうしちゃうと思うんですけど。逆に、THE BACK HORNのこだわりの強いファンからは“ああ、ここで弾いちゃうんだ”って思われるかもしれないけど、“俺ら的には絶対にこうしちゃうだろうな”っていうタイプのアレンジにしてますね。

テツさんが難しかった曲は?

アオキ 俺はユニゾンの「WINDOW開ける」。あれ、拍の取り方が全部裏なんですよね。それがレコーディングの前日までわかってなくて。最初は“タタタウ、タタタウ”だと思っていて、“これ、ンタタタだよ”って言われてからめちゃくちゃ成長しましたね(笑)。技術というよりは、その仕組みを理解するのに手こずった感じですね。

佐々木 ユニゾンらしい一工夫してある部分というか。シンプルなタタタ、タタタっていうグランジっぽいアルペジオだと思いきや、1拍ズレてるだけで全然世界が裏返っちゃうっていう。でも、あれがないとつまんないんだよ。そこが素晴らしい。

では最後に、15周年を迎えた今、改めて今後の展望を聞かせてもらえますか?

佐々木 バンドとしては次のアルバムを作っているので、今回の経験はかなり活きそうだなって今思っていて。『2020』っていう去年のアルバムとその前の『CENTER OF THE EARTH』が、テツが入って今のAFOCのスタイルになってきた作品ですけど、俺の中では三部作のイメージがあるんですよ。なので次作で前2作から続く“シンプルなAFOC”を掘り下げようっていうモードを、それ以上ないくらい完結させたい。“シンプルなのに印象深い何か”を模索したい感じがありますね。あとはソロとかギター・バンドじゃないことにも色々トライしたいかな。メンフィスのロイヤル・スタジオの人たちと“遠隔レコーディングをしよう”みたいなを話をしていて、アメリカに行けるようになる前にやりたいとは思ってます。そうすると“AFOCではやんなくていいか”と思ってたようなことにチャレンジするのこと出てくると思うので、今年はそれを楽しみたいなと、野望としては思ってますね。

それは実現を楽しみに待ってます! テツさんはどうですか?

アオキ たぶんAFOCの15年っていう歴史の中で、俺が一番音がデカくてシンプルなギタリストだと思うので、それを突き詰めていきたいですね。

音のデカさって、やっぱ正義ですよね(笑)。

アオキ そうですね。音ちっちぇわりに一杯弾いてる人とか見てたら“ひねり潰してやるぜ!”と。かかってこいって感じです。

佐々木 言うねぇ(笑)。

作品データ

『GIFT ROCKS』
a flood of circle

テイチクエンタテインメント/TECI-1740/2020年8月11日リリース

―Track List―

01. まだ世界は君のもの
02. LADY LUCK
03. I’M ALIVE
04. 星屑のレコード
05. 夕暮れのフランツ 凋まない風船
06. WINDOW開ける
07. メリールー
08. BLACK BANANA
09. コバルトブルー
10. About A Rock’N’Roll Band

―Guitarists―

佐々木亮介、アオキテツ