Interview|細井徳太郎(SMTK)ジャズとノイズの狭間 Interview|細井徳太郎(SMTK)ジャズとノイズの狭間

Interview|細井徳太郎(SMTK)
ジャズとノイズの狭間

“テクニックじゃなく感情だ!”って、
信じたいじゃないですか。

機材の話も聞かせて下さい。メイン・ギターは少し変わったTLタイプのようですが。

 実はこれ、グヤトーンなんですよ。LG-20Tというモデルだったと思います。60年代製ですが、全然高価なギターではないですね。

▲Guyatone LG-20T

グヤトーンでしたか! おそらく3~4万円ほどでしょうか。

 まさに3万円でした。このアルバム、3万円のギターで演奏してます(笑)。ほとんどオリジナル・パーツで、ペグやピックアップ、アームなどは全部純正品のままなんですよ。ただ、ネックはすごく変な形だったので削ってもらって、ブリッジは腐食していたのでマスタリー製に変えました。結局、20万円くらいのギターになっちゃった(笑)。

本体よりもブリッジ単品のほうが高いですね(笑)。なぜグヤトーンをメインで使おうと?。

 実は君島(大空)がオススメしてくれたんですよね。“これ、徳ちゃん似合いそうだね!”って。でも買ったら買ったらで君島は僕に勧めたことを覚えてなかったです(笑)。

(笑)。気に入っているポイントは?

 音のピークが普通のギターと違っていて、よくわからないところにピークがあるんですよ。特に高音域が面白くて、表現が難しいんですが、くぐもってるけど異様なパワーを感じて好きなんです。

わかります、ハイエンドなギターには出ない独特の魅力がありますよね。ただ演奏性やオクターブ・チューニングの問題などがあるのでは?

 それが意外と、当初からオクターブ・チューニングは大丈夫だったんですよ。弾きやすさに関しては、こいつはナット幅(弦間)が狭くて確かに最初は全然弾けませんでしたね。でも慣れたらオモチャみたいというか、軽い力で弾けていい感じです。

アルバムでもメインとして使いましたか?

 ほとんどこのギターで、クリアじゃない感じの音は全部そうです。逆にクリアな音や、めっちゃ歪んでる感じの音はBlade GuitarsのDurangoというギターで弾いてます。高音域がピキピキで、歪みもちゃんと乗るんですよ。「Love Has No Sound」とか「Genkai Mentaiko」はそっちですね。今回のアルバムでは使っていないんですが、ほかのギターとしてはWestvilleのフルアコと、あとT.And Joodeeという日本のブランドのgem Bというフルアコを持ってます。ハード・バップをやっている頃はかなり使っていましたね。前作(『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』2020年)でも弾いていて、このフルアコをめちゃめちゃに歪ませてました(笑)。

▲Blade Guitars Durango

珍しいギターが多いですね! ストラトやES-335など、いわゆる王道なギターはあまり興味がないですか?

 いや、欲しいです(笑)。でも高いのと、自分はテクニックな部分でほかのギタリストと比べて一番ではないというか、むしろ劣っているなと思うんですよね。でも“テクニックじゃなくて感情だ!”とか、タイミングとかアイディアとか音色とか、そういうことって信じたいじゃないですか。僕はそこで勝負できると信じてギターを弾いているので、逆に普通のギターを弾くとテクニックがないのがバレちゃうのかなと。

いやいや、全然そんなことはないと思います(笑)。ちなみにアンプやエフェクター類などはいかがでしょうか。

 アンプは全部スタジオのマーシャルを借りましたね。エフェクターは色々使いましたが、Empress EffectsのMultidriveは特に活躍しました。これは面白くて、ファズとディストーションとオーバードライブを自由に組み合わせられて、なおかつ、それが重ねがけじゃなくて同時に出るんですよ。例えばオーバードライブをクリーンにして、ファズをめちゃ歪ませると、クリーンとファズの音が1つのアンプから同時に出るんです。

ユニークな機能ですね。メインの歪みという感じですか?

 いえ、メインの歪みはT-RexのMudhoneyで、Multidriveはそこに加えて歪みの量と質を変える感じですね。歪みがちょっと分厚くなるとか、遠くなるとか、輪郭がハッキリするとか、そういう微妙な味付けにすごく使えるんですよ。歪みペダルで言うと、ほかにはEarthQuaker DevicesのLife Pedal V2でめちゃめちゃに歪ませたりとか、モディファイしたRoger MayerのAxis Fuzzも使いました。

自分のバックボーンをたくさん表現したい。

細井さんはSMTKを始めほかにも色んな活動をしていますが、今後の活動方針は?

 基本的には好きなことをやりたいなと思っています。もちろんSMTKもすごく好きだから、色んなライブハウスやフェスに出てバチコーンってギターが弾けるように、そういう強さを伸ばしていきたいですね。例えば歪みの強さを出したり、音のパンチを出したり、そういうSMTK的なギタリストの伸び方もしたい。その一方で、もう少し小規模な場所での即興演奏とか、そういう現場ならではのアイディアや雰囲気を大事にした演奏もしていきたいなと思っています。あと、自分のEPも9月に出します!

それは楽しみですね!

 ちなみに、君島もギターを弾いてくれていて、これがまたカッコいいんですよ。SMTKとは違ってめちゃめちゃポップなアルバムですし作詞して歌ったりもしていますが、それも自分が好きなことの1つなんです。そうやって自分のバックボーンや感じてきたことをたくさん表現できるギタリストになっていきたいです。

リリース情報

9月15日に細井徳太郎の1st EP『スカートになって』がリリース!

―Track List―

01.スカートになって
02.八月の光(feat.君島大空)
03.したっけ
04.エンガワ
05.呼吸:Ⅰ.火の中の水
06.呼吸:Ⅱ.砂漠のノイズ
07.呼吸:Ⅲ.心臓

最新作

『SIREN PROPAGANDA』 SMTK

APOLLO SOUNDS/ウルトラ・ヴァイヴ/APLS2107/2021年7月14日リリース

―Track List―

01.Headhunters(feat.Dos Monos)
02.マルデシカク(feat.TaiTan)
03.Diablo(feat.没 a.k.a NGS)
04.Genkai Mentaiko
05.Minna No Uta
06.Ambitious pt.1(feat.Ross Moody)
07.Ambitious pt.2(feat.Ross Moody)
08.Love Has No Sound

―Guitarist―

細井徳太郎