Interview | ビートりょう(THE BOHEMIANS)【前編】魂の『essential fanfare』全曲解説 Part.1 Interview | ビートりょう(THE BOHEMIANS)【前編】魂の『essential fanfare』全曲解説 Part.1

Interview | ビートりょう(THE BOHEMIANS)【前編】
魂の『essential fanfare』全曲解説 Part.1

約2年ぶり、通算10枚目のフル・アルバム『essential fanfare』をリリースした山形県出身のロック・バンド、THE BOHEMIANS。今作は王道の50〜60年代ロックンロールと90年代以降のJ-POPをミックスしたポップでカラフルな楽曲が並んでおり、プロデュースを務めた山中さわお(the pillows)も太鼓判を押す、バンドを代表する1枚となった。今回はバンドの中心人物であるビートりょうにアルバムの全曲解説を(その場で)依頼。インタビュアーが同じく山形県出身ということもあり、トレードマークのES-335を抱えながら饒舌に語ってくれた。

取材・文=小林弘昂 人物写真=星野俊


ギターはロックンロール・ミュージックの主役ではない。
歌に寄り添う楽器です。

今作『essential fanfare』はTHE BOHEMIANS通算10枚目のアルバムなんですね。前作『the popman’s review』から2年ほど間が空きましたが、どういう内容にしようと?

 最初はアルバムを2枚出す予定だったんですよ。1枚は全国流通するメインのアルバムで、もう1枚はライブ会場と通販限定にして、自分たちの好きなうるさいだけのパンク・アルバムにしようっていうコンセプトで。それで並行して2枚分作っていたんですけど、作っているうちにコンセプトが特になくなって、“何でもいいから良い曲を作ろう”という感じになってきて、その時にできた良い曲を全部持ってきたのが今回の『essential fanfare』ということですね。

今作もレーベル・オーナーであるthe pillowsの山中さわおさんがプロデュースを務めていますが、どんな感じで作業が進んでいったんですか?

 曲がいっぱいあったので、さわおさんは“とりあえず全部一通り聴かせて。それで良い曲をアルバムに入れていこうよ”という感じでしたね。そのあとの作業はいつもと同じで、スタジオで録った曲をさわおさんに聴いてもらって、“この箇所はこっちのほうが良いんじゃない?”みたいな作業をしていきました。

前作『the popman’s reviw』は全曲りょうさんの作詞作曲でしたっけ?

 基本はそうで、1曲だけ平田(ぱんだ/vo)君が歌詞を書きました。今回は平田山崎(山崎はビートりょうの名字)の曲が11曲中10曲で、1曲だけ本間(ドミノ/k)が作っていますね。

本間さんはどの曲を?

 6曲目の「VINYL PRESS STONE」。あとの10曲は平田山崎の2人名義です。レノン=マッカートニー、ジャガー/リチャーズ方式で、どちらが作っても連名っていう。どの曲をどっちが作ったかはクイズにしたいというか、お客さんの楽しみにしておきたいんですよね。なので今日は隠しながら話します。

曲作りはどのように?

 自分に限って言えば、家でリズムから何から全部を多重録音したデモをガッツリ作っちゃう。それをメンバーに聴いてもらって、“こんな感じでいきたい”っていうのが多いですね。

今作はコードも展開も多い曲がたくさんありますよね。

 これまた僕に限ってコードが好きで。コードで曲を作っていくのが好きというか、コード命みたいなところがあるから。ムッシュかまやつさんも“コードから曲を作っていく”って言ってましたし。

りょうさんの好きなコード進行は?

 何々進行っていう色んな名称があるんでしょうけど、わかんない(笑)。“しんこう”って、こっち🙏じゃないですよ? 月山(山形県中央部にある火山)のなんとかじゃないですよ。

山岳信仰(笑)。

 でも好きなコード進行はね、なんぼでもあります。例えばCを基調とするんだったら、C→G→Gm→Aみたいな。これ、僕は“サザン&マーシー・コード”って呼んでるんですけど、「明るい村」とかでもこんな感じのポップな進行を使っていますよ。

そういうコードの勉強はしてきたんですか?

 するわけないじゃないですか、僕が(笑)。同じ地元だからわかるでしょ? あんなとこにいて。

今はわからないですけど、少なくとも僕らが山形にいた10代の頃は、本当に音楽不毛の土地でしたからね……。

 そうそう。でも、強いて言えばビートルズのアルバムを聴いて、スコアを買ったりして。そういうのは勉強になってるんだと思いますけどね。あとはMr.Childrenの弾き語りコード集も買って、それからも影響を受けました。勉強っていうか、そういうのをコピーして身についたものだと思います。

あと、バッキングもオブリを入れずに弾く曲が多く、よりシンプルになったなと感じました。

 シンプルが一番ですよ。僕はCDが完成形だと思っていなくて。キース(リチャーズ)も言ってるんですけど、“曲っていうのは成長していくもんだ”って。だって20代の時に作った曲を70代になってもやるわけですからね。ああいうやり方こそがロックのあり方だと思うから、ライブで“こっちのほうが良いな”ってなったら、僕はそっちにしていく派。ただ、これはリスナーとしては困るんですよ(笑)。エアロスミスの「Walk This Way」とか、あのソロが良いのにライブだと違うという(笑)。飽きてくるのかもしれないですけど、代表曲っていじりがちじゃないですか。

りょうさんも「THE ROBELETS」とかはライブでフレーズを変えまくってますよね。

 そうそう。変えるというか、僕の場合は弾けてないだけという時もありますけど。でも、さすがにアルバムを10枚も出すと、リハで“ちょっと久しぶりにこの曲やろう”っていう話になっても、誰1人弾けない時があるんですよ。誰も覚えてなくて、平田君も歌えないという。

自分の曲をコピーしなくちゃいけないと(笑)。

 それがね、嫌いじゃないんですよね。

まぁ、それがキッカケで新しいアレンジが生まれることもありますし(笑)。では、今回のレコーディングでの使用機材は?

 ギターは2019年に買ったこのギブソン・カスタムの59年リイシューES-335と、去年買ったリッケンバッカーの12弦ギター、76年製450/12の2本だけで。

ES-335は前作をリリースしたあとに購入したんですよね。

 そうそう。一緒に買いに行ったよね(笑)。335のデビュー音源は去年出したシングル「スーパーソニックロッケンロール」で、12弦もカップリングの「Mr. 12弦マン」でデビューして。

ギターが変わって、何か新しい発見はありましたか?

 自分のものなので、気持ち的にやりやすくはなりましたよ(笑)。前に使ってた70年代の335は借りものだったので、なんだかんだ思いっきりは弾けなくて。それに音が良いし、弾いていて気持ち良かったです。

アンプは変わらずAC30 6TBで?

 そうですね。the pillowsの真鍋(吉明)さんからお借りしているAC30で。たぶん2017年くらいから使ってますね。

今回もそんなにエフェクトは使ってないですよね。

 トレモロとディレイは使いましたけど、そのくらいで。それでも使ったほうだと思うんですけど、世の中的には全然使ってないんでしょうね(笑)。基本的にギターは伴奏楽器ですからね。僕、ギターはロックンロール・ミュージックの主役だと思ってないんですよ。でもギタリストはバンドの主役で、僕はTHE BOHEMIANSの主役だと思って弾いてますけど、ギターはロックンロール・ミュージックの主役ではない。歌に寄り添う楽器です。

やっぱりザ・フーですよ。
ロックと言えばフー。

ではここからは、りょうさんにアルバムの全曲解説をお願いしたく……。

 全曲解説!? あくまでギタリスト的な視点になるかもしれないですし……いや、ならないかもしれない。

では、1曲目の「the legacy」から。

 ついこの間、MVも撮りましたけど(取材日は8月12日、MV撮影は7月29日)。

この曲は完全にザ・フーですね。

 おっ、マジ? 自分では全然思わなかった。……いや、フーでしかないんですけど。やっぱりフーですよ。ロックと言えばフー。一言で言えば“ザ・フー”っていう感じの曲。この曲のデモができたのは去年だったかな。やっぱり“ジャカジャーン!”命というか、ロックンロールは“ジャカジャーン!”で、そういう曲がやりたかったというか。まぁ、こういう曲になりがちですけど(笑)。で、この曲キーがGなんですけど、実はレコーディングでは1音下げチューニングにしてロー・コードのAで弾いたんですよ。

え、そうなんですか?

 もともとはレギュラーのAで作ってたんですけど、レコーディングが近くなった時に“平田君にはキーが高いんじゃないか”っていうことが判明して。僕はEのフォームで上昇していく6、2、1弦の開放を使った「I Can See For Miles」のピート・タウンゼントっぽいことがやりたかったから、“え、Gになるのか……”みたいになって。

レギュラー・チューニングのままキーがAからGに変わると開放弦が使えなくなると。

 そう。それでチューニングを1音下げたんですよ。だからこの曲をもしコピーする人がいるんだったら、1音下げのAでやったほうがいいっていうことで。

ライブではどうするんですか?

 開放弦が使えないのでニュアンスが変わりますけど、もうレギュラーのGでやるしかないですね。このためだけにギターを持ち替えるのもアレですし。この間、新代田FEVERで初披露して、その時はレギュラー・チューニングで弾いたんです。

2曲目「the reasons」はハネたビートが特徴的で、THE BOHEMIANSっぽさが表われています。

 そうですね。モータウン・ビートで、“やっぱりロックンロールと言えばこれだろう!”というリズムです。この曲は山形の『ピヨ卵ワイド』(YBC山形放送が制作する平日夕方の情報番組)のエンディング・テーマになるそうですけど、山形はインタビュアーの小林君の地元でもあるということで。

はい(笑)。「the legacy」も「the reasons」も、最後にギター・ソロを弾いてますよね?

 ちゃんと言っておくと、どっちもソロは入れる予定じゃなかったんです。実はさわおさんのプロダクションなんですよ。

“入れろ”、と。

 入れろと(笑)。「the legacy」はエンディングもイントロと同じ終わり方にする予定だったんですけど、さわおさんが“え、ギター・ソロないの?”と。「the reasons」もそんな感じだったかな。基本的に僕はギター・ソロがなくてもいい人なので、全然そのままでよかったんですけど……入れることになりました。

でも良い感じのフレーズですね(笑)。この2曲のソロはどう考えていったんですか?

 プリプロの前、さわおさんと曲決めをする段階で“「the legacy」のキーを下げたほうがいいんじゃない?”となっていて、さらに“ソロも弾いたほうが良いんじゃないか?”みたいなタイミングだったので、その場で考えた気がします。で、「the legacy」に関しては、ソロはレギュラー・チューニングなんですよ。だからけっこう土壇場で作りました。“人生現場処理”。僕の好きな言葉。

好きなスケールってあります?

 僕が好きなのはロン・ウッド的なやつ。例えばAだったらマイナー・ペンタも挟みつつ、Aのロー・コード周辺のメジャー・ペンタで進んでいくんですよ。あと、ブライアン・メイみたいなメジャー・スケールも「Bohemian Rhapsody」をコピーしたから影響があるかもしれない(笑)。それくらいしかないですね。

では、スケールもガッツリ勉強したというわけでは……。

 するわけないじゃないですか、僕が(笑)。でも、やればよかったと思ってます。去年の自粛期間はYouTubeでそういうギター・レッスン系の動画をいっぱい観ていました。ああいうのは面白いですよね。

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