自分が良いと思う音の
結論が出てしまっている。
そうした音色の面白さも多分にある今作ですが、何よりもベーシックなディストーションが非常に良い音だなと思います。そのために意識していることはありますか?
いわゆるブラウン・サウンドと言っていいのかな。オールドのマーシャルにアンプ直、シールド1本だけでつなぐという、それがやっぱりいいと思っているのでそれを録りたいと思ってます。
マイキングなど、録り方は毎回変えていますか?
マイクはいつも“クジラ(SENNHEISER MD421-Ⅱ)”とSHUREのSM57、それとオーディオテクニカのリボンマイクという、3本をミックスして録ってます。割合は421が一番多くて、リボンマイクはローの膨らみを出す感じ。
ブレンドしているんですね。
あと今回大きかったのが、録音した場所が違うんですよ。2004年あたりから数年間使っていた練馬のスタジオがあるんですが、そこはリズムの音が良いので気に入っていて、何作か録ったんです。でも一時期そこが録音スタジオではなくなったので僕らも場別の場所で録っていたんだけど、その後また録音スタジオに戻ったので今回はベーシックをそこで録ったんです。だから音が太くて、なおかつキレのいい感じになったなと思います。その後のダビングは普段のスタジオですけどね。
使ったギターやアンプなどはいつもと同じものですか?
いつもと同じですね。SGと50Wのマーシャル1987です。
何か新兵器はありましたか?
いやあ、今までも散々新しいものを使おうと思ってスタジオには持っていくんですけど、結局使わない(笑)。もう自分が良いと思う音の結論が出てしまっているので、それを越えられないんですよね。今回もクリーン・トーンのために違うアンプを持って行ったりもしたんですけど、やっぱりなんか違うな……と。
確固たる音があるのは素晴らしいことだと思います。違うアンプというのは、例えばどんなものですか?
フェンダーのブルース・ジュニアや、マーシャルのコンボ・タイプ(SC20C/SV20C)。音はすごく良いんだけど、どうしても“コンボの音”なので。でもマーシャルのコンボはダビングで使いましたね。
エフェクター関係はどうでしょうか?
新しいものはコーラスくらいですけど、ソロではいろいろ歪みを使いましたよ。スタジオを変えたことでリズム・トラックのギターがエッジの効いた感じで録れたので、同じアンプ直のソロだと音が一緒になっちゃうというか、抜けてこなかったんですよね。だから少し音質を変えたいなということで、いつも以上に歪みのエフェクターを使ってます。
なるほど、録る場所を変えるとそういう影響もあるんですね。
そうなんです。ビルダーの方とエフェクターを作って本を出したことがあるんですけど(和嶋慎治 自作エフェクターの書「歪」)、その時のディストーションも使いました。回路はほぼRiot Distortion系なんですけど、良い音するんだよね。あとはチューブスクリーマー系。これも自分で作ったやつで、たぶん回路はフルドライブ系です(笑)。あとこれは自信作なんですけど、先ほどの本の時に開発したオーバードライブがあって、チューブスクリーマー系の歪みにワウのインダクター回路をブレンドしたペダルを作ったんですよ。そうすると中域を膨らませられるというか、マイケル・シェンカーみたいな音が作れるという。直列ではなくブレンドなので、少しだけワウの感じを出したりもできるんです。あとは自作のビッグマフ系。歪みはそんな感じだったと思いますね。
では最後に、今後の活動について教えて下さい。
まだまだこういう世の中ですが、皆さん対策をしてライブをやり始めているので、僕らもやろうということで1年半ぶりにようやくツアーをやることになりました(人間椅子公式HP)。久々なので楽しみですね。
最新作
『苦楽』 人間椅子
徳間ジャパンコミュニケーションズ/TKCA-74961/2021年8月4日リリース
―Track List―
01.杜子春
02.神々の行進
03.悪魔の処方箋
04.暗黒王
05.人間ロボット
06.宇宙海賊
07.疾れGT
08.世紀末ジンタ
09.悩みをつき抜けて歓喜に到れ
10.恍惚の蟷螂
11.至上の唇
12.肉体の亡霊
13.夜明け前
―Guitarist―
和嶋慎治