Interview|デレク・トラックスが語る“音色へのこだわり” Interview|デレク・トラックスが語る“音色へのこだわり”

Interview|デレク・トラックスが語る“音色へのこだわり”

ひと月ずつリリースされる前代未聞のコンセプチュアルな4部作『アイ・アム・ザ・ムーン』を完成させたテデスキ・トラックス・バンド。ギター・マガジン2022年8月号では、ギタリストのデレク・トラックスにこのプロジェクトについてのインタビューを敢行した。今回はその中から、繊細で美しいサウンド・コントロールの極意を語ったパートを抜粋してお届けしよう。 

質問作成・文:青山陽一 インタビュー・翻訳:トミー・モリー Photo:David McClister
*本記事はギター・マガジン2022年8月号掲載のインタビューから一部抜粋/再編集したものです。

ピックアップは長い間使っていると何かを失なってしまうところがある。

レコーディングではどんなアンプを使用しましたか?

 メインで使ったのは64年製のフェンダー・デラックス・リバーブ。いくつかのソロではツイード・デラックスも使ったかな。あと、エコープレックスをつないだヴァイブロヴァーブとオールドのデラックスを同時に鳴らしたこともあった。こうするとサウンドに広がりを得られるんだ。そういう実験はけっこうやっていたね。

 あと60年代か70年代製のレスリーのギター・アンプというのがあって、それもいくつかの曲で使った。別のヘッドをつないで、キャビネットとしても使ったりね。オルガンみたいにスピーカーの回転スピードを変えながらプレイできて、楽しかったよ。リズム・パートや空間っぽいサウンドをプレイする時に役に立ったな。

2019年の日本公演ではSGにオープン・タイプのハムバッカーを載せていましたが、最近はまた違うようですね?

 ビンテージのPAFをセットで載せていて、今はこれがしっくりきている。前はオープン・タイプだったけど、ビンテージへのリスペクトもあるし、カバーをはずさずに使うことにしているよ。過去にはずした形跡があるものは躊躇なく取っちゃうけど。現行品だったら、カバーを付けたりはずしたりは飽きるまでやっているよ(笑)。

そういったパーツ交換の実験もよくやっているんですか?

 頭の中で聴こえていたサウンドと違うなと感じると、けっこうやるね。ピックアップもそうだし、アンプの真空管やスピーカーを換えたり。ピックアップは長い間使っていると何かを失なってしまうところがあって、それを“枯れる”って表現する人もいるけど、僕は交換しちゃうことが多いな。ほかのギターにマッチしなかったピックアップをギター・テックのボビー・ティスに頼んで付けてもらったり……こういう探求は、常にやり続けるものだと思うんだ。

どんなチューニングでも時間をかけて学ばなきゃ。

ペダルは一切使わずに、ギター側のボリュームやトーンだけでクリーンからディストーションまでをクリエイトするあなたの音色コントロール術にはいつも感服します。幅広い音を手元だけで作る秘訣はありますか?

 ボリューム・ノブの操作だけでもかなりのことができるよ。僕のギターのボリューム・ポットは0から10まで均等に音量が上がっている仕様にしているんだけど、これは僕の機材調整の中でも特に重要だね。場所によって変化の量が違う、例えば7~10あたりで急激に音量が変わるポットもあるけど、あれは好みじゃないかな。コントロールできる音色の幅が狭くなってしまうんだ。こういうことを知って、上手く調整しながら快適にプレイできるようにすることが大事だよね。

アンプもセッティングは1つだけですよね。

 アンプはそれぞれ、自分のプレイに対するスウィート・スポットというものが違ってくる。スタジオとかでアンプのボリュームを上げ過ぎると、過剰なコンプレッションが出て良いフィーリングが得られないから、ボリュームを絞って息遣いが聴こえるくらいにするんだ。絞り過ぎるとただのクリーンになっちゃうから、自分の求める働きをしてくれるスウィート・スポットを探すことがポイントだよ。真空管アンプはどんな部屋で鳴らすかによっても影響を受けるしね。そういう微調整は常にやらないとダメなんだ。まあ、たまにはアンプをラウドに鳴らしてフィードバックさせるようなサウンドも面白いんだけどね(笑)。

ギター・マガジン2022年8月号
『スタジオ・ギタリストの仕事』

ギター・マガジン2022年8月号の表紙特集は『スタジオ・ギタリストの仕事』。あらゆる音楽を支える職人たちの名仕事に迫ります! 目印はコーネル・デュプリー!

作品データ

『アイ・アム・ザ・ムーン:I. クレッセント』
テデスキ・トラックス・バンド

ユニバーサル/UCCO-1235/2022年6月3日リリース


『アイ・アム・ザ・ムーン:II. アセンション』
テデスキ・トラックス・バンド

ユニバーサル/UCCO-1236/2022年7月1日リリース


『アイ・アム・ザ・ムーン:III. ザ・フォール』
テデスキ・トラックス・バンド

ユニバーサル/UCCO-1237/2022年7月29日リリース


『アイ・アム・ザ・ムーン:IV.フェアウェル』
テデスキ・トラックス・バンド

ユニバーサル/UCCO-1238/2022年8月26日リリース

―Guitarists―

デレク・トラックス、スーザン・テデスキ