ブルース界の若き巨人、クリストーン・“キングフィッシュ”・イングラムのシグネチャー・ギター“Kingfish Telecaster Deluxe”が、先頃フェンダーより発売された。彼のために特別にカスタマイズされたハムバッカーを搭載し、故郷であるミシシッピ州クラークスデールの夜空をイメージしたという紫色のフィニッシュで包まれたこのテレキャスター・デラックスについて、キングフィッシュ本人に直撃インタビュー!
質問作成=福崎敬太 インタビュー・翻訳=トミー・モリー 写真提供=フェンダーミュージック
フェンダーから素晴らしい機会をもらったんだ。
光栄に思わないはずがないさ。
『662』をリリースした時にインタビューをさせてもらって以来です。あのあとにグラミー受賞と大活躍され、私たちも誇らしくなりました。
ありがとう。感謝しているよ!
今日はあなたの新しいシグネチャー・モデルであるフェンダーのKingfish Telecaster Deluxeについて聞かせて下さい。以前のメイン・ギターはストラトキャスターでしたし、やはりバディ・ガイとの共演のイメージも強いので、てっきりシグネチャー・モデルを作るならストラトキャスターだと思っていました。テレキャスター・デラックスを選んだ理由は何だったのでしょうか?
俺のサウンドはハムバッカーにあって、これは弾いていて最も快適に感じるピックアップなんだ。だから第一にハムバッカーのギターであることを求めたんだ。
完成したギターを初めて見た時の感想を教えて下さい。
すぐに好きになったよ。ギターっていうのは、まずはルックスの良さとプレイのしやすさがなきゃダメだ。大事なのは、ネックの快適さと目を喜ばせてくれること。間違いないね。
フェンダーからシグネチャー・モデルを出したブルース・ギタリストはレジェンドばかりです。そこに並んだ感想は?
本当に凄いことだよ。こんなにリスペクトを集めている会社から素晴らしい機会をもらったんだ。光栄に思わないはずがないさ。
フェンダーの他のアーティスト・モデルを弾いたことはありますか?
96年製のバディ・ガイのモデル、ロバート・クレイのモデルのストラトキャスターを持っているし、ジミ・ヘンドリックスのモデルもけっこう素晴らしいよね。
ジミ・ヘンドリックスやバディ・ガイのモデルは、貼りか1ピースかの差はあれども、メイプル指板ですよね。その一方であなたのモデルはローズウッド指板ですが、このスペックにした理由は?
かつてはメイプルのほうがラウドなサウンドのような気がしていたけど、最近はその限りではないことに気づいた。ローズウッドのほうがどことなく指にシックリきていて、これもプレイの快適さにつながっているんだ。
以前は白いボディとゴールド・パーツのテレキャスターを使っていましたし、Chertoff Custom Guitarsが手がけたレス・ポールのようなスペックのTLタイプも使っていましたが、Kingfish Telecaster Deluxeはその中間のような印象です。目指したのはどういったギターでしたか?
ハムバッカーであることはマストだったけど、確かに君の指摘するとおり、使ってきたそれらのギターのハイブリッドであることは認めなくちゃならない。そもそも今例に挙げてくれたギターたちはクラシック57をモディファイしたピックアップを搭載していて、そのサウンドに俺は惚れていたんだ。
そしてフェンダーは、それにかなり近いカスタム・ワウンドのピックアップ(Custom Kingfish Humbucking)を手作りで作ってくれて、めでたくシグネチャー・モデルに搭載させることとなった。そしてテレキャスターのボディっていうのも、快適にプレイできるものだから必然的に選ぶことになったんだ。
このギターってユニークだし、
今まで脚光を浴びることのなかったタイプのギターなんだよ。
開発の際、フェンダー・チームにはどのようなオーダーを出したのでしょうか?
まず、ダークなパープルのフィニッシュにしてもらったね。で、2つのピックアップには、オーバードライブ・サウンドを得られつつも、かなりピュアなサウンドも得られるものをリクエストした。
ブリッジはアジャスト・マティック・タイプにして、ストップ・テイルピースを付けてもらった。これらの組み合わせから生まれるフィーリングが好きなんだ。こうすることで、イントネーションがしっかりと取りやすく、そしてグッドなサステインが得られるんだよ。あと、弦の交換がしやすいのもポイントだね。それに従来の(テレキャスター用)ブリッジだと、弾いているうちにいつの間にかネジの緩みでサドルの駒が下がっちゃうことがあるだろう? それが避けられるのも良いところだね。
指板のラジアスが12インチと、フェンダーの現行標準スペックの9.5インチよりもフラットなのは意外でした。このラジアスを指定した理由は単に弾きやすいからだと思うのですが、その弾き心地を教えて下さい。
コードを快適にプレイできるよう、弦高はかなり下げたかったんだ。それで12インチならネックが薄く感じることもなく、中間的な厚みでプレイしている感覚になる。ジャズっぽいスタイルからロックなものまで自由にプレイできるんだ。
シグネチャー・ギターと同時に“Kingfish Signature Pickup Set”も発表されました。このピックアップのセットは、Kingfish Telecaster Deluxeに搭載されているK&クラウン・ロゴが刻印されたものとスペックは一緒なのでしょうか?
そうだね。ルックスだけが異なるポイントで、スペック上は俺のシグネチャーのものと同じはずだよ。フェンダーのほかのモデルに搭載して楽しんでくれても良いんだぜ(笑)。
やはりハムバッカーのサウンドがあなたには重要だったのだと思いますが、このピックアップはどのようなサウンドを目指して開発しましたか?
ラウドにスクリームしてほしい時にはそのとおりのサウンドが得られて、その一方でレイドバックするようなクリーンでスムーズなプレイだってできるものにしたかった。エッジの効いたものとスムーズなサウンドのハーフ&ハーフといった具合だね。
今回のシグネチャー・ピックアップは4芯構造のケーブルとなっていて、電気回路を改造することでハムバッカーをシングルコイルとして扱うことも可能です。しかし今回のシグネチャー・ギターのほうではそういう機能がないようですが、これは今後の拡張性を考えて設計したのでしょうか?
俺はハムバッカーのサウンドが好きだけど、エアリーなフィーリングやサウンドも好きだから将来的にはプッシュ/プル型のポットに交換してシングルとしても使えるようにするかもしれない。でも今のところはストレートなセットアップにしておこうと思うんだ。
あなたの理想とするハムバッカー・サウンドのレジェンドは誰ですか?
そりゃアルバート、フレディ、B.B.の3人のキングたちさ。そしてゲイリー・ムーアもオーバードライブさせたハムバッカー・サウンドという意味でははずせない存在だ。彼らはすぐにでも思い付いてしまうレジェンドたちさ。
ブリッジ側のピックアップはネック側に比べて若干出力が強めになっていますね。
俺はソロをプレイする時はブリッジ側を使うことがほとんどだから、ちょっとだけ出力を高めにすることで、クレイジーにスクリームできるようにラウドにさせているんだ。
テレキャスター・デラックスの魅力は各ピックアップのボリューム&トーンを個別に設定できることだと思います。ミックス具合も調節できますし。ネック・ピックアップ、ブリッジ・ピックアップ、ミックス、それぞれでお気に入りのコントロール・セッティングを教えて下さい。
基本的に全てフルテンなんだ。ただライヴでスムーズなトーンでプレイしたい時には、ミドルを選択してそれぞれのトーンを少し絞ることもあるかな。
色々と細かな部分を話してもらいましたが、あなたが思うこのギターの最大の特徴は?
フェンダーはあまりハムバッカーのギターを作ってこなかったと思うし、このギターってやっぱり彼らにとっても異端なギターだと思う。レス・ポールらしさがありながらもテレキャスターであり、ある意味オールインワンだよね。それでいて大枠からしてそのどちらとも異なっていつつも、フェンダーらしさがある。それだけこのギターってユニークだし、今まで脚光を浴びることのなかったタイプのギターなんだよ。
このギターなら何だってプレイできるさ。
できないことなんてないんだ!
バディ・ガイのストラトキャスターやスティーヴー・レイ・ヴォーンのストラトキャスターなど、ブルース・レジェントたちのギターにはストラトキャスターが多い印象です。テレキャスター・デラックスでブルースをイメージする人は少ないと思いますが、あなたがそうなるのだと信じています。このギターとの未来をどのように思い描いていますか?
このギターは時間をかけて俺にとってのルシール(B.B.キングの愛器)みたいなギターになっていくさ。このギターが、たくさんの写真を通じて多くの人たちの目に触れてほしいと思っているよ。
あなたの身近なミュージシャンたちからのレスポンスはどうですか?
まだ誰にも見せていないのだけど、近いうちにバディ・ガイ、ケニー・ウェイン・シェパードと一緒にツアーに出る予定だから、彼らに披露してその感想をもらったら教えてあげるよ。
2人ともテレキャスター・プレイヤーではないので、彼らが認めたら本物ということですね!
ぜひそうなってほしいね(笑)。たぶん気に入ってくれるさ!
このギターを使った新作の予定はありますか?
これからスタジオでのレコーディングが色々とあるし、徹底的に弾きまくる予定だよ。今まで以上にスムーズだったり、エッジーなソロのプレイが聴けたなら、そいつは間違いなくコイツだね。
最後に、Kingfish Telecaster Deluxeが気になっている日本のギタリストたちにメッセージをお願いします!
このギターなら何だってプレイできるさ。ラウドにラフにプレイするのはもちろん、スムーズなジャズっぽいプレイだってできてしまう。もしメタルをプレイしたいヤツがいたとしても、ぜひ手に取ってもらいたいね。このギターでできないことなんてないんだ!
Fender
Kingfish Telecaster Deluxe
【スペック】
Body Material: Alder
Body Finish: Gloss Urethane
Neck: Roasted Maple, “V” Shape
Neck Finish: Satin Urethane with Gloss Urethane Headstock Face
Fingerboard: Slab Rosewood, 12” (305mm)
Frets: 21, Medium Jumbo
Position Inlays: White Pearloid Dot (Slab Rosewood)
Nut (Material/Width): Bone, 1.685” (42.8mm)
Tuning Machines: Fender® Vintage-Style
Scale Length: 25.5” (648mm)
Bridge: Adjusto-Matic™ with Anchored Tailpiece
Pickguard: 3-Ply Black/White/Black
Pickups: Custom Kingfish Humbucking (Bridge), (Middle), Custom Kingfish Humbucking (Neck)
Pickup Switching: 3-Position Toggle: Position 1. Bridge, Position 2. Bridge and Neck, Position 3. Neck
Controls: Volume 1. (Neck Pickup), Volume 2. (Bridge Pickup), Tone 1. (Neck Pickup), Tone 2. (Bridge Pickup)
Control Knobs: Skirted Black Plastic with Numbered Indicators
Hardware Finish: Nickel/Chrome
Strings: Nickel Plated Steel (.010-.046 Gauges)
Case/Gig Bag: Deluxe Molded Case (Included)
【希望小売価格】
324,280円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
KINGFISH TELECASTER DELUXE 製品情報(fender.com)
https://www.fender.com/ja-JP/electric-guitars/telecaster/kingfish-telecaster-deluxe/0115600787.html