2022年10月8日(土)に御茶ノ水RITTOR BASEで行なわれた『ギタリストのためのシステム構築セミナー』。今回はその模様をレポートしよう。フリーザトーン代表の林幸宏氏が講師を務め、ギタリストのエフェクター・ボードにフォーカスしたシステム構築のイロハを、約2時間にわたってたっぷりと教えてくれた本セミナー。アーカイブ動画も公開しているため、見逃した人も復習したい人もぜひご覧あれ!
取材/写真=伊藤雅景
実践的なシステム構築術が学べたスペシャル・セミナー
これまでに数多くのペダルボード/サウンド・システムを構築してきたフリーザトーンの代表=林幸宏氏による『ギタリストのためのシステム構築セミナー』が、2022年10月8日に御茶ノ水RITTOR BASEで開催された。イベント・プログラムは以下のとおり。
- ノイズ対策について
- ノイズの種類とタイプ別の対策法
- 電源ケーブル&パッチ・ケーブルの配線について
- ペダルボードの使いやすいレイアウトのコツ
- ペダルボード診断コーナー
- Q&Aコーナー
フリーザトーンが制作したペダルボードを使用しながら解説がスタート。実際にテスターを利用してアンプと身体の電位差を測定し、それによる影響や改善方法を説明したほか、ギターからノイズを発生させてその原因を解説したりと、実演を交えながらわかりやすく教えてくれた。ちなみにセミナーで使用したストラトキャスターは林氏の私物だ。
また、プロ・ギタリストのシステム・メンテナンスの現場で林氏が使用している道具の紹介や、コストの掛からないペダルボードのクリーニング術など、誰もがすぐに実践できる“タメになる”情報もレクチャーしてくれた。
1時間ほど林氏がトークをしたのち、本セミナーの目玉でもある“ペダルボード診断コーナー”へ。自身のペダルボードに対する林氏からのアドバイスが聞ける、この貴重なチャンスにエントリーしたのは3名。それぞれの個性的なペダルボードを林氏に見てもらいながら、悩みを相談しアドバイスを受け取る中で、自然とマニアックな“ボード談義”がくり広げられることとなった。
最後は林氏へのQ&Aコーナー。最前線で活躍するプロに相談できるという貴重な機会に、次々と質問が飛び出してきたが、皆さんの悩みもさすがマニアック。濃厚な質疑応答を終え、無事セミナーは閉幕となった。
改めて講師を務めていただいたフリーザトーン林氏、ご参加いただいた皆さん、楽しい時間をありがとうございました!
After Talk〜編集部伊藤のお悩み相談
さて、ここからはオマケのコーナー。林氏にアドバイスをもらおうと、公私混同で自分のペダルボードを持参した筆者(ギター・マガジン編集部・伊藤)。セミナーで気になったことも含めて、イベント終了直後の林氏に追加でインタビュー(個人的な悩み相談)しちゃいました……!
可能な限り電源周りのケーブルは結束バンドを使って固定しましょう
ペダルを入れ替えるたびに、毎回ピッタリな長さのパッチケーブルを用意することが難しいので、ある程度の余裕がある長さのケーブルを流用してしまっています。どのようなデメリットがありますか?
伊藤さんのボード(記事下部写真)で使われているケーブルくらいの長さであれば問題ありません! フリーザトーンでも、ペダルの入れ替えが頻繁なプレイヤーには少し余裕をもった長さのパッチケーブルを使ったりします。
ただ、パッチケーブルやシールドが長くなっていくことで“音の芯”が失われていく可能性が出てきてしまうんです。ギター・サウンドにはそういった“音の芯”が重要だと考えているので、パッチケーブルの長さに余裕を持たせる時は、なるべく太いケーブルを使うようにしています。フリーザトーン製ですと、CU5050がオススメですね。
フリーザトーンが組んでいるボードにはペダルを置く場所にだけ、メスのマジックテープが貼られていますよね。全面マジックテープ素材のボードを使わないのはなぜでしょうか?
マジックテープ素材はゴミが溜まりやすいんです。それが個人的にあまり好きじゃないっていうところもあります(笑)。あと、演奏する会場の湿度やスモークの影響で、すぐにベタベタになってしまうんです。なので何も配置されていない部分はいつでもすぐに拭きやすいように、不必要な箇所には貼らないようにしています。
ペダルにマジックテープを貼る際に決めていることはありますか?
ペダル裏面の上下 or 左右の2箇所に貼るということですね。ペダルを剥がしたり張り替え直したりするのが大変になるので、一面に貼ることはないです。それに強度が強すぎるとプレイヤー自身がペダルを移動させる際に、爪や指を痛めてしまう原因になってしまうこともあって……。なのでフリーザトーンのマジックテープの強度は、強過ぎず、片手でペダルが取れる。でもボードを垂直にしてもペダルがずれないっていう絶妙な強度を狙っています。
ただ、その強度だと気温が高い時期にはボードからペダルがはがれ落ちてしまうので、ペダルボードの蓋にスポンジ入れて持ち運んでもらうようにしています。ペダルがはずれたりすることでお悩みの方はぜひ試してみて下さい。それだけでも全然違いますよ。
セミナー用に準備されたペダルボードでは、ACアダプターの余ったケーブルは結束バンドでまとめていましたが、DCケーブルの余りも同じようにまとめて問題ありませんか?
大丈夫です。DCケーブルでは安定した電圧を供給しているだけなので、小さくまとめることでのデメリットはありません。まとめないでプラプラな状態でどこかに引っ掛けてしまったり、何かの拍子で踏みつけてしまうことのほうが圧倒的にリスクが大きいので、電源関係は極力まとめておくようにしましょう。
また、パワーサプライのジャックに接続されたDCケーブルが、ペダルを踏んだ際に振動して、“ガサッ”といったノイズが出てしまう可能性もあります。これは精神衛生上にも良くないですよね。
それと、ライブのステージは音量が大きいのでDCケーブルをしっかりと固定していないと、その振動で音に”濁り”が発生してしまうこともあるんです。レコードプレーヤーみたいなイメージですね。ターンテーブルが丈夫じゃないと、余分な振動が音に混ざってしまうような。なので、可能な限り電源周りのケーブルは結束バンドを使って固定しましょう。
イベント終了後の追加インタビュー、ありがとうございました!
新製品情報
FREE THE TONE
SLK-SLIM(ソルダーレススリムキット)
【キット内容】
・SL-SLIMブラグ 10個
・SL-SLIMプラグ用キャップ 10個+予備2個
・SL-SLIMプラグ用皿ネジ 10個+予備2個(皿ネジ10個はプラグに止めて出荷されます)
・CU-416ケーブル 3m
・ソルダーレススリム作製マニュアル
【発売日】
2022年10月21日
【問い合わせ】
フリーザトーン https://www.freethetone.com/
林 幸宏(はやし ゆきひろ) プロフィール
1968年生まれ。三重県出身。1991年に芝浦工業大学卒業後、楽器/プロ・オーディオ関連企業にて、楽器/プロ・オーディオ機器の設計やメンテナンス、ミキシング・コンソールの設置、レコーディング・スタジオのシステム設計などを経験。
1991年から1997年までは技術者としての活動だけでなく、ギター・テックとしてレコーディングやライブ現場でのキャリアを積む。1997年、大手電機メーカーに入社後、音響ホール向けカスタム・ミキサーの設計、デジタル・コンソール、デジタル・アンプなどの開発・設計を担当。
2002年、(有)フリーザトーンを設立、代表として就任。日本の著名ミュージシャンのシステム設計を幅広く手がけ、FREE THE TONEの名を業界に広める。2011年、(有)フリーザトーンのオーナーおよび代表取締役に就任。現在に至る。
フリーザトーン:https://www.freethetone.com
『回路図で音を読み解く! ギター・エフェクターとアンプの秘密がわかる本 』
林 幸宏(著)
品種 | 書籍 |
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仕様 | B5変形判 / 224ページ |
発売日 | 2022.04.22 |
ISBN | 9784845637492 |
『ギタリストとベーシストのためのシステム構築マニュアル』
林 幸宏(著)
品種 | 書籍 |
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仕様 | A5判 / 176ページ |
発売日 | 2013.01.23 |
ISBN | 9784845621866 |
『ギタリストとベーシストのためのシステム構築Q&A』
林 幸宏(著)
品種 | 書籍 |
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仕様 | A5判 / 192ページ |
発売日 | 2015.02.13 |
ISBN | 9784845625482 |