ハイトーンのボーカルとキャッチーなメロディック・パンク・サウンドが、多くのロック・ファンから支持されている04 Limited Sazabys(以下、フォーリミ)。彼らが、“土壌”という意味のアルバム『SOIL』(2019年)、“種”と名づけられたシングル「SEED」(2019年)を経て、『Harvest』(=収穫)と題した新作アルバムを完成させた。久々に発表されたアルバムのギターについて、HIROKAZ(g)と、RYU-TA(g)に話を聞いた。
取材=尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング) ライブ写真=ヤマダマサヒロ(HIROKAZ)、藤井拓(RYU=TA)、瀧本JON…行秀(HIROKAZ&RYU-TA)
いつもどおりのフォーリミを出すことに重きを置いて制作に臨みました
──RYU-TA
4年ぶりとなる新作アルバムは、どのような作品にしようとイメージしていましたか?
RYU-TA 新しいことをやるよりも、“いつもどおりのフォーリミを出す”ことに重きに置いて制作に臨みました。その結果、自分たちが前作からの4年間にやってきたことの集大成になるような作品が完成したと思います。
HIROKAZ バンドでも“そろそろアルバムを作らないと……”みたいな雰囲気はありましたけど、具体的な内容についてはほとんど話し合っていなくて。ただ改めて振り返ると、「fade」と「Just」を作ったことで、進むべき方向性が決まった感じがします。フォーリミらしい“ポップでソリッド”な部分をこの2曲で表現できたので、そこからは“どうやってアルバムの収録曲に振り幅を持たせていくか”ってことを意識しながら制作を進めていきました。
疾走感溢れるメロディック・パンク・ナンバーで構成された1枚に仕上がりましたね。すべての曲が3分前後というのもポイントかと思いました。
HIROKAZ そうですね。曲の尺をあまり長くしないように、普段から無駄なパートをなるべくカットしていることも大きいのかなと思います。
RYU-TA あと、聴いている人を“飽きさせない”ということも意識していましたね。曲の収録順やライブのセットリストもそうですけど、曲の“つなぎ”を考えながら作っていて。アルバムで言えば、「Every」から「Keep going」の流れとか。
楽曲はどのように作り込んでいったのですか?
HIROKAZ 基本的には、データのやり取りで作り込んでいきました。たまにスタジオに集まった時も、“ここのフレーズをちょっと変えてみようか”みたいな話し合いだけで終わることもありましたね。
RYU-TA 曲のベーシックに関しては、ライブと同じように、僕とベース(GEN/vo,b)、ドラム(KOUHEI)の3人で一緒に録るんですけど、長年の信頼関係があるので、僕としては“ギターがいい感じにリズムにハマっているか”を意識しながら演奏しました。
HIROKAZ 僕は、リード・ギターのフレーズを最後に入れなければならないので、レコーディングが終わるギリギリまで試行錯誤をしていましたね。8割くらいは事前に作り込んで、残った2割でその瞬間のマジックを求めていく、みたいな。あと、なんだかんだレコーディング当日にアレンジが変わったりするので、それにも対処しなければいけないという。
データのやり取りで曲を作るメリットは?
RYU-TA 作業スピードの速さですね。もう5~6年は、この方法で曲を作ってきたので、今ではスタジオに入って作曲するよりも効率がよくなっていると思います。
アルバムを聴くと、様々な“歪み”を曲ごとに使い分けている印象を受けました。音の好みに変化はありましたか?
RYU-TA 最近は、ギター本体のボリュームをちょっと絞った音が好きになってきましたね。昔の自分は、音を歪ませ過ぎていたのかもしれないなって。
HIROKAZ 僕の場合、その時のテンションで、自分の好きな音がどんどん変わっていくんですよ。今回もマーシャルのJMPやボグナーのEcstasyとか、色んなアンプを使ったんですけど……今はレコーディングを終えてから手に入れたソルダーノのアンプの音が凄く気に入っています。パンチのある歪みで、音抜けも良くて。でも……結局、最後はマーシャル系のアンプに戻ってしまうんですけどね(笑)。
いつも“ボーカルになった”気持ちでフレーズを作っています。
──HIROKAZ
「Keep going」は、コードワークと単音リフのコンビネーションが耳に残る曲です。どのように作り込んでいきましたか?
RYU-TA アニメ『弱虫ペダル LIMIT BREAK』の主題歌なんですけど、サビに向かってパワフルに突き進む“ドライブ感”を意識しながら作っていきました。
HIROKAZ “ドッシリとした疾走感がありつつも、軽すぎないイメージで”と言われていたので、細かいフレーズで構築したギターというよりは、オクターブ奏法を取り入れながら、“わかりやすさ”を重視したリード・ギターを弾こうと思っていましたね。
「Honey」は、疾走するバンド・アンサンブルにキャッチーなメロディが乗ったロック・ナンバーです。
HIROKAZ 個人的に「Honey」は、今回のアルバムの中で一番キーになっている曲だと思います。パワー・ポップ感のある曲なので、 RYU-TAには“コードをかき鳴らしてほしい”と頼みました。ほかの曲とは少し系統が違うと感じていたので、ギターは普段使っているハムバッカーが載ったRYU-TAのシグネチャー・モデル(ESP製“一角”)ではなく、あえてシングルコイルのギターで弾いてもらったりして。より曲の個性が際立つようなアレンジに仕上げました。
そうなんですね。どんなギターを使いましたか?
RYU-TA たしかP-90が載ったGibsonのSG Specialです。
HIROKAZ それに対して僕は、骨太なリード・ギターにしたいと思ったので、NavigatorのLPタイプで弾いています。
「fade」は、歌メロのバックで聴こえるタッピングが耳に残りました。曲のフックとなる印象的なフレーズは、どのように作っているのですか?
HIROKAZ バンド・サウンドの中で上モノのフレーズを弾くのが僕の役割なんですけど、いつも“ボーカルになった”気持ちで作っています。頭の中に鳴っているメロディをギターに落とし込んだり、“この音が合うかな?”って色んなパターンを試してみたり。そうなると自分の手癖との戦いにもなってくるので……けっこう煮詰まります(笑)。“もうオクターブ奏法は使っちゃったよ”みたいな感じで。
ただ「Just」に関してはあまり変なことは考えず、ストレートに自分の手癖をぶち込みました。それこそ5~6年前までは、“新しいことやらなきゃいけない”みたいな気持ちがあったので、イントロからアウトロまでのフレーズを全部変えて弾いていたんです。
でも『SOIL』(2018年)を作ったあたりから、吹っ切れた感じがあって。今は、どんな形であれ“自分らしさ”が出せたら、それでいいかなと思っています。
聴いたらすぐに“HIROKAZのギターだ”とわかる個性が魅力
──RYU-TA
“自分らしさ”という言葉がありましたが、お互いにどのような魅力を持ったギタリストだと思いますか?
RYU-TA ちょっとヘンテコなフレーズだったり……聴いたらすぐに“HIROKAZのギターだ”とわかる個性が魅力ですよね。僕には作れないフレーズだなって、いつも思っています。
HIROKAZ RYU-TAは、ちょっと渋めなマイナー・コードの使い方が得意なんですよ。「kiki」のギター・ソロはRYU-TAが弾いているんですけど、コード進行の時点で“この曲のソロはRYU-TAだな”って。ああいう叙情的なフレーズは、凄く特徴的だと思います。
その「kiki」は、ギターだけでも踊れるようなカッティング・ワークと、骨太なロック・リフのコントラストが印象的でした。
RYU-TA あの曲では、歯切れのいいカッティングで踊れるグルーヴを意識しましたね。ちゃんとミュートして、音を“切る”ところが重要というか。
HIROKAZ この曲のBPMは、フォーリミにとっては凄く“遅い”んですよね。普通の人にとってはミドル・テンポでも、僕らからしたらバラードのようなスロー・テンポに感じるので……まだちょっと慣れない(笑)。基本的に、BPMが195から220くらいの曲ばかり弾いていますから。
“速さ”というのも、フォーリミにとって重要な要素なのでしょうか?
HIROKAZ そうですね。ライブのことを想定しながら色んなタイプの曲を作っていく中で、最終的に落ち着いたのがBPM200前後なんです。今では、それ以下のテンポになってくると、演奏していて少し物足りなく感じてしまうんですよね(笑)。
表題曲の「Harvest」は、アコギの弾き語りで始まり、途中でバンド・アレンジに変化する曲です。この構成になった理由は?
RYU-TA 最初に、GENからiPhoneのボイスメモで録った弾き語りのデモが送られてきて。それを生かしてやってみようって感じでしたね。
HIROKAZ そのあとメンバーで話し合って、“弾き語りからテンポの速い2ビートにしたら面白いんじゃないか”ということになり、あのアレンジに落ち着いたという流れですね。
フォーリミの教科書みたいなアルバムに仕上がりました
──HIROKAZ
レコーディングで使用した機材について教えて下さい。
HIROKAZ 家にある色々なギターを使いたくなっちゃうんですけど、今回はNavigatorのLPタイプが活躍しました。ESPのシグネチャー・モデルの“レオン”は、ピックアップをBare Knuckle PickupsのAftermathに交換して使っています。おもにリアがメインですけど、フレーズによってフロントを含めたすべてのピックアップを使って弾いていますね。アンプは、BognerのEcstasyやMarshallのJMP、Two-Rockなんかも使いました。
RYU-TA 僕は、ESPのシグネチャー・モデル“一角”がメインですね。このギターをMarshallのJVMや、Mesa/BoogieのMark-Vにつないで、曲によって、色々と使い分けています。僕の場合、ギターとアンプで音を作っているので、音色のバリエーションを出すためにも4チャンネル仕様のアンプがどうしても必要になってくるんですよね。Mesa/Boogieは、特にクリーンの音が気に入っています。
今の2人が考えるフォーリミらしさとは、どんなところだと感じていますか?
HIROKAZ メロディック・パンクを軸にしつつも、「swim」(2015年)みたいなポップで明るいイメージや、「monolith」(2019年)のように2ビートでちょっとエモいソリッドな表現、今回の「Honey」のような可愛らしい曲もできる。そういった様々なサウンドにきちんと対応できている絶妙なバランス感が、うちららしさなのかなと思っています。
RYU-TA “自分たちはどのジャンルでもできる”というのを、あえて見せているところもあって。名古屋で活動していた頃から、“周りにいるメロディック系のバンドとは違うことをやろうぜ”と話していたんですよ。そこを追求していったことで、今のような幅広い表現につながっているのかなと思います。
最後に作品制作を終えて、一言お願いします。
RYU-TA 4年間も待たせたアルバムの曲たちが、これからのツアーでどれだけ育ってくれるのか、そして僕らも今回のアルバムの曲をライブで演奏することでどれだけ好きになれるのか、というのを今から楽しみにしています。
HIROKAZ 『Harvest』は、フォーリミの教科書みたいな感じのアルバムに仕上がっていて、本当に聴きやすいと思います。このアルバムから聴き始めても全然遅くないので、ぜひ聴いてみてほしいです。
LIVE INFORMATION
Harvest tour 2022
【スケジュール】
2022年11月03日/小樽GOLD STONE
2022年11月05日/帯広MEGA STONE
2022年11月06日/旭川CASINO DRIVE
2022年11月10日/郡山Hip Shot Japan
2022年11月12日/盛岡club change WAVE
2022年11月13日/秋田club SWINDLE
2022年11月16日/浜松窓枠
2022年11月17日/神戸太陽と虎
2022年11月19日/周南RISING HALL
2022年11月23日/金沢EIGHT HALL
2022年11月24日/長野CLUB JUNK BOX
2022年11月26日/甲府KAZOO HALL
2022年12月01日/鹿児島CAPARVO HALL
2022年12月02日/熊本B9 V1
2022年12月04日/長崎DRUM Be-7
2022年12月08日/京都MUSE
2022年12月10日/岐阜club-G
2022年12月11日/豊橋club KNOT
※すべて対バン公演となります。
Harvest tour 2023 〜one man series〜
【スケジュール】
2023年01月16日/Zepp Haneda
2023年01月17日/Zepp Haneda
2023年01月20日/Zepp Sapporo
2023年01月22日/仙台GIGS
2023年01月26日/Zepp Osaka Bayside
2023年01月27日/Zepp Osaka Bayside
2023年02月01日/KT Zepp Yokohama
2023年02月03日/新潟LOTS
2023年02月05日/高松festhalle
2023年02月06日/BLUE LIVE HIROSHIMA
2023年02月08日/Zepp Fukuoka
2023年02月15日/Zepp Nagoya
2023年02月16日/Zepp Nagoya
【チケット】
詳細はツアー特設ページをご覧下さい。
https://www.04limitedsazabys.com/feature/harvest
作品データ
『Harvest』
04 Limited Sazabys
日本コロムビア/COCP-41837/2022年10月12日リリース
―Track List―
01.Every
02.Keep going
03.Glowing
04.fade
05.Finder
06.Predator
07.Jumper
08.Honey
09.Cycle
10.hug
11.Galapagos II
12.kiki
13.Harvest
14.Just
15.F.A.L(Bonus track)※CDのみ収録
―Guitarists―
HIROKAZ、RYU-TA