アーニー・アイズレーへのインタビューが実現!新作でのビヨンセやEW&Fとの共演、ギターのこだわりを語る アーニー・アイズレーへのインタビューが実現!新作でのビヨンセやEW&Fとの共演、ギターのこだわりを語る

アーニー・アイズレーへのインタビューが実現!
新作でのビヨンセやEW&Fとの共演、ギターのこだわりを語る

アイズレー・ブラザーズがソウル/R&Bファン歓喜の新作『Make Me Say It Again, Girl』をリリースした。1975年の『The Heat Is On』に収録された名曲をタイトルに据え、さらにその表題曲にはビヨンセがゲスト参加! そしてアース・ウィンド・アンド・ファイアーとの共演など話題性も抜群だが、何よりアーニー・アイズレーのセクシーなギター・プレイが素晴らしい。今回、リモートでのインタビューに快く応じてくれたアーニーに、新作にまつわるエピソードをたっぷりと語ってもらった。

文/質問作成=福崎敬太 インタビュー/翻訳=トミー・モリー Photo by Erika Goldring/Getty Images

アコースティック・ギターはボーカルとギターの距離感を縮める

今日は貴重なお時間をありがとうございます。あなたのようなレジェンドとお話しできて嬉しいです!

 たった1つだけ残念なのは、俺が日本語が喋れないことだ。もし喋れたらと願うところだけどね。

我々はギターに関する言語を共有しておりますので、問題なしです!

 そのとおりだね!

最新作『Make Me Say It Again, Girl』は素晴らしい作品でした! 今日は新作の話やそれ以外にもたっぷりとお話を聞かせて下さい。

 All right! 任せてくれ!

まずビヨンセとの「Make Me Say It Again, Girl」には驚きました。彼女はディスティニーズ・チャイルドの1stアルバム(『Destiny’s Child』/1998年)に収録された「Second Nature」で同曲をサンプリングしていますし、凄くドラマチックな共演ですね。

 そもそも彼女は俺たちのファンでね。彼女の母であるティナ(ノウルズ)が俺たちの大ファンで、ビヨンセだけじゃなく家族全員に、アイズレー・ブラザーズを聴かせていたんだ。ビヨンセは幼い頃から聴いていたこともあって俺たちのことをよく知っていてくれたよ。

共演はどのような経緯で実現したのですか?

 ロナルド(アイズレー/vo)が“ビヨンセはアイズレーの曲に参加することに興味がないかな?”とティナの電話にメッセージを残したんだ。彼女は5分後に“イエス! ビヨンセはやるわよ!”と興奮気味に返事をくれたね(笑)。こうしてビヨンセはこの曲でデュエットを披露してくれて、彼女は見事に歌い上げてくれた。この曲を聴いたことのない多くの世代の人にとっても新しいものとなったことだろう。

 そして、俺が書いてビヨンセが歌ったこの曲は、リリースしてから5週連続でビルボード・チャートでナンバーワンとなったんだ。1959年に俺たちが「Shout」をリリースして以降、どの年代でもチャートに送り込んできたアーティストなんて俺たち以外にいなくて、歴史上マイクが発明されて以降、こんなことをやってのけた人なんて俺は知らないよ(笑)。

この曲は1975年の『The Heat Is On』に収録されています。オリジナルはどのように生まれたのでしょうか?

 そもそもこの曲は、1974〜75年頃に俺とロン(ロナルド)が“もっと自分たちらしく歌えるような曲が欲しいよね”と話し合っていたところから始まったんだ。「Fight the Power(Part 1 & 2)」、「For the Love of You(Part 1 & 2)」、「Sensuality (Part 1 & 2)」をまだ作る前だね。

 そこで俺はアコースティック・ギターを手に取って“Make Me Say It Again, Girl~♪”と歌い始めたら、ロンは“それだよ! それを求めていたんだよ!”と言ってきた。俺たちは曲を完成させて『The Heat Is On』に収録し、それがあの時代に大々的に受け入れられたんだ。

今回のバージョンはオリジナルよりも、12弦アコースティック・ギターの煌びやかな響きがゴージャスに感じました。

 ビヨンセに送ったテープの段階で、俺が6弦と12弦の両方をプレイしているのが聴けたはずだ。ただ、世の中に出ている音源の中ではそこまでフィーチャーされていないかもしれないが、アコースティック・ギターは6弦、12弦ともにずっとレコーディングで使ってきたんだよ。ビヨンセ側のチームが音源を聴いてくれた時、彼女たちはそのサウンドを気に入ってくれたようだったね。

ソウル・ミュージックでのアコースティック・ギターの使い方はアイズレー・ブラザーズの楽曲がピカイチだと感じています。あなたやアイズレー・ブラザーズの音楽にとってアコースティック・ギターはどのような存在ですか?

 アコースティック・ギターはボーカルとギターの距離感を縮めるための素晴らしい楽器だと思う。アコースティック・ギターには、前面に押し出すことで耳を惹き付けるような効果があって、それはナチュラルな状態のサウンドでも実際よりもラウドに聴こえるようなところがあるからなんだ。人の声にも似たようなところがあって、だからこそ両者は親和性が高いんだ。それに、何よりも俺はそのサウンドを愛しているんだよ。

今回使ったアコースティック・ギターは?

 マーティンの6弦、ギルドの12弦、テイラーのアコースティック・ギターを使ったかな。マーティンは確かD-28で、ナイスな暖かみのあるトーンが得られて、コードや単音のどちらを弾いてもクリアなサウンドが得られるんだ。「The Plug」を始めとした2、3曲で6弦をプレイしたはずだね。

 あ、ほかにもオベーションを、丸みのあるバックとルックスが気に入って使っているね。ギターは全部で30本くらい持っていて、その内の8~10本くらいがアコースティックなんだ。

大好きなEW&Fの連中が遊びに来ていて、俺たちの部屋にいたんだよ

スウィッチのカバーである「There’ll Never Be」は、アース・ウィンド・アンド・ファイアー(以下:EW&F)とのコラボです! これはファンクやソウル・ミュージックが好きな我々にとって素敵なお知らせでした。2021年4月にネット番組『Verzuz』で共演していますが、あれがきっかけですか?

 たぶんあれがきっかけだったのだろうね。俺たちがアルバムの制作をちょうど始めたくらいに、『Verzuz』でEW&Fと共演してみないかという話をもらったんだ。面白いことだと思ったし、俺たちは彼らの大ファンで、彼らも俺たちのファンだったんだ。

70年代当時から交流はあったのですか?

  1975年に「Fight the Power(Part 1 & 2)」を出した頃に俺たちはツアーに出ていて、オーケリー(アイズレー/vo)とロナルドはスイートルームに泊まっていた。ライブ後にホテルに戻ったら、部屋から“That’s The Way Of The World~♪”って歌っているのが聴こえてきたんだ(笑)。“ちょっと待て! 俺たちはアイズレー・ブラザーズだぞ!”ってなったね(笑)。俺たちが大好きなEW&Fの連中が遊びに来ていて、俺たちの部屋にいたんだよ。

それはエキサイティングなエピソードですね。ちなみにギタリストとして、EW&Fのアル・マッケイという素晴らしいプレイヤーのことは意識していましたか?

 健全な競争関係みたいなものはなかったかな。俺は“曲を聴く”傾向があって、ギターのパートを聴く時は曲のために何をしているのかに注目していたからね。

 俺たちの「Voyage to Atlantis」、「Footsteps in the Dark (Part 1 & 2)」、「Fight the Power(Part 1 & 2)」、「Take Me to the Next Phase (Part 1 & 2)」といった楽曲たちにはそれぞれのスタイルがあり、俺は自分のプレイスタイルを何かに閉じたことはなかった。「Groove with You」にだって特徴的なパートがあるだろう? 「That Lady」とは違うものかもしれないが、アーニーらしさがどの曲にもあって、しっかりとヒット曲になっている。俺は曲を第一にプレイしていて、曲ができてから“ギタリストとしてどんなことをしたいか”を考えるんだ。

「There’ll Never Be」のギターはスウィッチの原曲のフレーズにかなり近いですが、あなたによるプレイなんですよね?

 そうだね。全部この曲のパートとして必要なものだったんだ。楽曲の骨格として、オリジナルでプレイされていたフレーズが重要だったんだ。

ここまで近いアレンジで弾いたというのは、この曲のギター・フレーズ自体が好きだったのですか?

 まぁそうなんだが、それよりもEW&Fの邪魔をしないことをまず考えたんだ。彼らのアイデンティティをそのまま出させたいと思ったんだよ。カルロス・サンタナとレコーディングを行なった時、彼は“互いに自分のプレイをすれば良いんだよ”と言ってくれて、その言葉どおり互いのプレイをして、笑みを浮かべながら見合っていた(笑)。そうやって彼とプレイするのはいつでも楽しいし、俺のフェイバリットなプレイヤーだよ。

2017年の共作『Power Of Peace』の時ですね。サンタナがお気に入りのプレイヤーということですが、あなたはホセ・フェリシアーノの影響でドラマーからギタリストに転向したんですよね?

 そう、ホセ・フェリシアーノのバージョンの「Light My Fire」によってギターへの興味が沸いたんだ。俺は12歳の時にドラマーとして始まり、14歳の時に兄弟たちと最初のライブをフィラデルフィアで行なった。一度キーボードにもトライしたし、エレキ・ベースも弾いた。実際に「It’s Your Thing」でベースをプレイしているのは16歳の頃の俺だよ。

えっ? そうなんですか!!

 そして1968年の9月に、俺は最初のギターを手に入れたんだ。真剣に学んだ曲を1つ挙げるなら「Light My Fire」ということで異論はないさ。「That Lady」を作った時点で俺は4年半くらいプレイしてきたところで、かなり速いペースで体得していった気がするね。あの曲の頃にやっと自分はギター・プレイヤーと呼べるところに立っていた気がするよ。ギターはグレイトな旅だし、プレイを通じて自分自身を表現できていて俺はこの楽器に感謝しているさ。

ギターとプレイヤーには運命的なつながりがある

さて、今作で使ったエレキ・ギターはZEAL(註:フェンダーカスタムショップ製の特別なストラトキャスター)だけですか?

 そうだね。フェンダーのカスタムショップが作ってくれたもので、3本持っているんだ。フェンダーが生み出した最も美しいストラトキャスターたちとなったね。“ZEAL”の文字が稲妻のような形で指板に入れられていて、“Z”の横にハミングバード(ハチドリ)がいる。指板にはドットマーカーが一切なくて、12フレットに2匹の鳥がいるだけなんだ。ボディがバラでデコレートされた白いZEALは3弦と4弦の間にダイヤモンドを埋め込んでいて、背面にもバラが彫刻されている。

ハミングバード・インレイを有する、ZEALのうちの1本。
ハミングバード・インレイを有する、ZEALのうちの1本。

ほかに使ったエレキ・ギターはありましたか?

 なかったね。俺はいつもZEALだけを使っているんだ。かつてカルロス・サンタナにプレイしてもらった時、“このギターが「私を弾いているのは誰よ?」って言っているぞ!”と言われたよ(笑)。俺たちはともに、ギターとプレイヤーには運命的なつながりがあると思っていて、カルロスはちょっとプレイしたら“このギターはアーニーのだろう?”という感じで返してきた。ライブで俺がプレイするのはZEALだけで、ほかのエレキ・ギターをプレイすることはないね。

今回のレコーディングでアンプやペダルなどの機材はどういったものを使いましたか?

 ワウを使ったし、ファズ、フランジャー、ロトヴァイブ、レスリーといったものを使ったけど、スタイルを確立したギタリストなら何を使おうとも自分らしいスタイルになるものだ。俺たちはボーカル・グループとしてのアイデンティティもあるけど、楽器のプレイでもアイデンティティを持っているんだ。

用いられたペダルについてモデル名を教えて下さい。

 RAT、Big Muff Pi、Cry Babyを使ったかな。ただ重要なのは何を使ったかじゃなくて自分らしいサウンドになっていることだ。カルロス・サンタナとスタジオに入った時、彼は何を弾いても彼のサウンドだった。ファズがなくても彼のサウンドだとすぐにわかった。俺にも同じことが言えて、今までどのアルバムでも様々な楽器をプレイしてきたけど、そのすべてで俺たちしいサウンドを作ってきたよ。

最後に、日本のファンへメッセージをお願いします!

 日本に近いうちに行けることを俺は願っているし、今までも日本の文化を肌で触れて楽しんできた。言葉、物事の進め方、それらのすべてから世界はたくさんのことを学べるはずさ。電車が来たらみんな整列するし、乗る時だってほかの人の邪魔にならないようにする。

 昔、妻と日本の学校の横を通った時、駐輪場に停めてあったすべての自転車に鍵がかけられていなかったんだ。アメリカじゃ考えられないことで、“この文化には何か特別なものがある!”と驚いたものだった。“これは君のものじゃないのだから放っておきなさい”という考え方が浸透しているわけで、世界中の人たちが見習うべきだと思ったね!

 一度そっちで誕生日を迎えたことがあったのだけど、みんなで“Happy Birthday to You~♪”って歌ってくれたんだ。嬉しくて何人かに話しかけたのだけど、彼らは急に日本語で喋り出したんだよ(笑)。結局は言語の壁があって、通訳してくれる人を介して会話をしたら笑顔で“ありがとう”って返事をもらえてはいる。やはり自分で文字も読みたいし会話もしたいと思わせられる国、社会、文化を君たちは持っている。アメリカという国に住んでいるとそれがとても素晴らしいことのように思えて、どうしても追いつきたい気持ちになるんだ。

 新幹線に乗って窓から眺めた田舎の風景も楽しめたし、回転させて仲間でワイワイ騒げるボックス席も俺のお気に入りだ。そして日本人の美しさは目の中を覗き込めば伝わってくるよ。

 みんなに神の御加護があること、長く生き、そして健やかな日々が訪れることを願っている。そしてすぐにでも君たちのためにプレイしたいよ。See you soon!

アーニー・アイズレー

作品データ

Make Me Say It Again, Girl
アイズレー・ブラザーズ

配信/2022年9月30日リリース

―Track List―

  1. Make Me Say It Again, Girl (ft. Beyoncé)
  2. Long Voyage Home
  3. The Plug (ft. 2 Chainz)
  4. Sexy Face
  5. My Love Song
  6. Great Escape (ft. Trey Songz)
  7. Last Time
  8. Keys To My Mind (ft. Quavo & Takeoff)
  9. There’ll Never Be (Ft. Earth, Wind and Fire & El DeBarge)
  10. Disappear
  11. Consolidate
  12. Right Way
  13. Friends and Family (ft. Snoop Dogg)
  14. Biggest Bosses (ft. Rick Ross)

―Guitarist―

アーニー・アイズレー