マンソン・ギター・ワークス共同オーナーが語る、マシュー・ベラミー(ミューズ)とブランドとの関係 マンソン・ギター・ワークス共同オーナーが語る、マシュー・ベラミー(ミューズ)とブランドとの関係

マンソン・ギター・ワークス共同オーナーが語る、
マシュー・ベラミー(ミューズ)とブランドとの関係

ヒュー・マンソンが英デヴォンに立ち上げた、マンソン・ギター・ワークス。ブランドの立ち上げメンバーであり、現在はミューズのマシュー・ベラミーとともに共同オーナーを務めるのが、エイドリアン・アッシュトンという人物だ。今回はエイドリアンに、ブランド経営の相棒でありシグネチャー・アーティストでもあるマシューと、マンソン・ギター・ワークスとの関わり方について話を聞いた。

Word by Amit Sharma. This article is translated or reproduced from Total Guitar #363, September 2022 and is copyright of or licensed by Future Publishing Limited, a Future plc group company, UK 2022. All rights reserved. 翻訳=トミー・モリー Photo by Neil Godwin/Total Guitar Magazine/Future via Getty Images

マットのオリジナルのデロリアンに搭載したZ. VEXのファズ・ファクトリーはかなり初期のものでした

マット(註:マシュー・ベラミー)が新しいギターのコンセプトを持ってきた際、どういった流れで話が進んでいくのでしょうか?

 マットのアイディアを具現化する作業にここ10年携わっているのは、私たちを代表するルシアーのティム・スタークです。彼らはプロジェクトについて話し合うことから始まり、そこにはマットのテクニシャンを務めるクリス・ホワイトマイヤーが加わることもあります。そこで得られたアイディアからクリエイティブな側面を現実化し、それでいて本当にグレイトでプレイしやすい楽器へと導くことが焦点となります。

 ワイルドなギターでよく目にすることですが、そういうギターはステージでプレイヤーの足を引っ張ることになります。私たちはこのことを常にポリシーの核としてとらえていて、どんなワイルドなことをしたとしても、根底としてグレイトなギターであるべきと考えています。

 今朝も私はマットと一緒にいて、様々なモデルが並んだラックを眺めていました。どのギターもかなりユニークで個性がありますが、どれをラックから手に取っても、マンソンのギターらしい弾き心地が得られます。それが私たち全員にとって大切なことなのです。

マンソンといえばカオスパッド内蔵ギターを思い浮かべる人も多いと思いますが、これはどのようにして実現させたのでしょうか?

 あれは実際にカオスパッドが丸ごとギターの中に入っているわけではなく、スクリーンのガラスが入っているだけなのです。これはかなり早い段階、すなわちヒュー・マンソンがロン・ジョイスと作業を行なっていた時から考えられていた設計でした。ロンはエレクトロニクスのグレイトな設計者でありエンジニアでもあります。こういったエレクトロニクスを実際の楽器に組み込むうえで、ロンはかなり大きな働きをしてくれています。この設計の話は彼の素晴らしさを表す良い例で、元々のインスピレーションは“カオスパッドをギターの中に組み込んでほしい!”ということでしたが、現実はそれとは少し異なる結果となりました。

 面白いことにマンソンのギターを目にし、実際にカオスパットの内蔵を自身のギターでトライした人たちがいました。しかし我々は、ロンによってカスタム製作されたボードや回路を組み込んでいるのです。起点となるアイディアを得ることは大切ですが、それを実践的かつ使いやすい形で実現化させるために、チームを組んでエンジニアリングを行うことが重要なのです。10分ごとにバッテリーを新品に交換してなんていられないですからね。

ほかにもMXRのPhase90とZ. VEXのFuzz Factoryの内蔵がリクエストされましたよね? ここで最もチャレンジングだったのはどういったことでしょうか?

 マットのオリジナルのデロリアン(註:映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』からインスパイアされたアルミニウム製カバーのギター)に搭載したZ. VEXのFuzz Factoryは、かなり初期のものでした。それに彼はMXRのPhase90も搭載したがったので、最もチャレンジングだったのはこれらを共に組み込みながらノイズを最小限に留めることでした。

 Fuzz Factoryは単体で使ってもとんでもない機材ですが、ギターに組み込んでプレイヤーがそのサウンドを操作するとなるとかなり型破りなものとなります。製作可能なものではありましたが、たくさんのリサーチや、技術、そして究極的にはグレイトなチームが必要で、実際に私たちにはそれができたのです!

マットは手頃な価格のギターを作ることにとても関心があります

あなたたちはブティック・ブランドと認識されていますが、カスタム製作のブティック・ギターだけでなく、手頃な価格設定の製品もラインナップしていて、市場の幅広いレンジをカバーしていますね。

 そのとおりです。マットは手頃な価格のギターを作ることにとても関心があります。彼のイギリス製のシグネチャーは3,500ポンド(註:2022年10月時点で約60万円)くらいしますが、そのほかにも様々な価格帯で提供しています。また、コルト(Cort)とライセンス契約を締結したMETAシリーズでは、600ポンド以下で流通を可能にしました。また、これらのライセンス生産品のレンジが今年はかなり伸長しましたね。

 そしてマットのオリジナル・デロリアンのレプリカであるDL-ORシリーズについて、初めて重点的に展開していくことを決意しました。私たちは600〜6,000ポンド、そしてそれ以上にいたるまで幅広い価格帯でこれを作り、すべてナイスでソリッドなものを展開しています!

そのほかに、マットがビジネスとして考えていることはありますか?

 私たちは彼から素晴らしいインプットを受け続けています。彼は、たまたまやってきて会社を思いつきで購入したような人ではありません。マンソンは現在マットと私によって所有していて、彼が筆頭オーナーですが、私たちは共にグレイトな関係を保っています。

 また、マットは疑いようもない世界的アーティストですし、作曲をしたり音楽や楽器の限界を押し広げるうえでとても才能溢れる存在です。彼は“ピックアップを数個搭載した、サンバーストでスタンダードなギターを作り続けよう!”なんてことを言うために私たちを選んだわけではありません。正直なところ、彼がアーティストとして私たちの会社にもたらすものはプライスレスです。私とチームは、彼のアイディアを具現化し実践性を与えるためにいるのです。この体制は本当にうまくいっています。私たちは新しい製品についてすでに話し始めていて、市場に投入する予定ですが……現時点ではあまり多くのことをお伝えはできません(笑)。今言えるのはそれがギターではないものになるということです!

マットは新しいペダルについて取り掛かっていると教えてくれましたが……。

 (笑)。これはかなりエキサイティングなことです。今日試奏と試聴をしましたが、生まれてくるサウンドにとても興奮しました。グレイトで小さな商品となりますが、リリースになるまでもうちょっとお待たせすることになりますね。