ザ・レゾナンス・プロジェクトの新作『Ad Astra』で世界に轟く、Yas Nomuraのヘヴィ&テクニカルなギター ザ・レゾナンス・プロジェクトの新作『Ad Astra』で世界に轟く、Yas Nomuraのヘヴィ&テクニカルなギター

ザ・レゾナンス・プロジェクトの新作『Ad Astra』で世界に轟く、
Yas Nomuraのヘヴィ&テクニカルなギター

HYDEのアメリカ・ツアーのサポートなどもあり、国内外で注目を集めるギタリストとなった米ロサンゼルス在住の日本人ギタリスト、Yas Nomura。

彼とラン・ジャオ(d,k)によるプログレッシブ・メタル・デュオ=ザ・レゾナンス・プロジェクトが、2ndアルバム『Ad Astra』をリリースした。セルフタイトルの1st作に引き続き、複雑でテクニカルなフレーズも音楽的に表現するYasの手腕が光る1枚だ。

ギタマガWEBでは、彼が一時帰国した際に、使用機材の撮影とインタビューを敢行。ミュージシャンとしての歩みから新作でのフレーズメイクまで、たっぷりと語ってもらった。

取材/機材写真=福崎敬太 ライブ写真=Litchi

メタリカの「Master of Puppets」を聴いて、“やべぇ”って……(笑)

初登場ですので、まずはギターを始める経緯から教えて下さい。

 最初は兄が聴いていた倉木麻衣、ORANGE RANGE、スピッツとか、ポップスから音楽に興味を持って。音楽は聴いていて気持ち良いものだと漠然と思っていましたね。

 それで中学の時に、Janne Da Arcが好きな友達が“ベースを始める”って言い出して。俺もギターには興味があったので“じゃあ俺も始める”ってなったんです。

 最初は家にあった親のアコギを弾き始めて。自分で弾き語りのコードとかを勘でやってみようと思ったんですけど、まったくわからなかった。2〜3週間くらいで諦めて“先生が必要だ”っていう話をしたら、弟がピアノを習っていた音楽教室にギターの先生もいたので、その人に習い始めましたね。

その先生がメタルとかを教えてくれたそうですね。

 そうです。メタリカの「Master of Puppets」を弾いていて、やべぇって(笑)。漠然と興味があっただけだったので、あんなのは聴いたことがなくて。衝撃でした。

当時はどんな曲を弾いていましたか?

 最初に教わったのがデフ・レパードの「Animal」でした。あとはメタリカは色々とコピーしましたし、Janne Da Arcもコピーしてみたり。で、そこからアーチ・エネミーに興味を持つんです。当時、ニコニコ動画で「Nemesis」が流行っていて、“かっけぇ!”ってなって。最初のリフとかを中3の時にコピーしましたけど、速すぎて全然弾けなかったですね。

19歳でアメリカの音楽専門学校、MIに行きましたが、そこからどのようにプロとしてのキャリアをスタートさせたんですか?

 最初は学校を卒業したら日本に戻ってこようと思っていたんですけど、渡米して半年も経たないうちに“しばらくアメリカにいよう”って思ったんです。卒業した時はセッション・ミュージシャン志望で、クレイグスリスト(Craigslist)っていう掲示板みたいなサイトでギグを探してましたね。ギャラがなかったり、しょうもない仕事もやりましたよ(笑)。

今の自分のプレイスタイルを築き上げる中で重要だったミュージシャンは?

 プレイスタイルだけで言ったら、ジョン・ペトルーシ、アラン・ホールズワース、あとはマイケル・ランドウとかも好きですね。ショーン・レインもパット・メセニーも好きだし、学校でスコット・ヘンダーソンとアレン・ハインズに習っていたので、その影響も大きいです。

 あとは鍵盤も好きで、フロスト*のジェム・ゴドフリーのソロをコピーしたり、ティグラン・ハマシアンっていうピアニストも音楽的には影響を受けてます。

Yas Nomura
Yas Nomura

リズムと合わせるところと、崩すところをMIDIで微調整していきました

最新作『Ad Astra』の制作の流れについて聞かせて下さい。

 コロナ禍の直前にラン(ジャオ/d,k)とコリン(クック/g)とジャムっていた時に、適当に弾いていたコードの感じがカッコ良くて、そこにランがリズムをつけて作っていったのが「Macrocosm」で。それを作っている途中で一瞬止まって、また始まったという感じでしたね。

基本的にはデータのやり取りで作っていった感じですか?

 最初はデータのやり取りでしたけど、それだけだと色んなパートを作っちゃって収拾がつかなくなって。それで少し止まったんですよ。そこから俺もランも曲を考えていて、再開してからは一緒に作っていった感じですかね。

「Gem」はYasさんの楽曲ですが、どのように作っていきましたか?

 コード進行があったほうが良いと思って、B△7からF♯△7を基本として間にBmを入れたりしていて。あと、たまたま13拍子になったので、ドラムのパターンを4・4・3・3と3・3・3・3、最後だけ3・3・3・3と3・3・3・3・2っていうグルーピングで考えましたね。

めちゃくちゃ数えたんですけど、全然わからなかったです(笑)。

 数えないほうが良いです(笑)。で、タッピングはまた別のグルーピングで考えていて。4・4・4・4みたいにしてしまうとダサくなってしまうので、崩すようにしてますね。このあたりはティグランとかに影響を受けてます。まぁアニマルズ・アズ・リーダーズとか、モダン・プログレの人はみんなそういうふうに考えていると思いますけど。

 で、ドラムもタッピングと合わせたリズムにすると、グチャグチャになっちゃうので、別のパターンを考えたんですよ。

タッピングの部分はポリリズミックには聴こえますが、そのあとのメロディの部分は変拍子を感じず自然に聴けるように仕上がっています。

 そこはめちゃくちゃ苦労しましたね。最初はリズム・パターンに合わせてやっていたんですけど、そうすると“合わせちゃってる感”が出ちゃって、歌っている感じがなかったんですよ。

 俺はだいたい鼻歌でメロディを作るんですけど、今回はそれとMIDIを使って作ったんです。で、リズムと合わせるところと、崩すところをMIDIで微調整していって。めちゃくちゃ時間がかかりましたね(笑)。

「Prophercy」は途中に入ってくる「Donna Lee」のリックでハッとさせられます。これはどういったアイディアで生まれたものですか?

 これはランのアイディアですね。R+R=NOWっていうロバート・グラスパーがやっているプロジェクトのライブをランと観にいった時に、「Resting Warrior」っていう曲をやっていて。

 それは15拍子なんですけど、アルバムを聴かずに観に行っていたから、“これ、何拍子だ?”ってなって。この曲を改めて聴いて、ランが15拍子の曲を作ったんですよ。

 で、よくジャムる時に俺がウォーミング・アップ的な感じで俺が「Donna Lee」を始めるんですけど、たぶんそこから“ジャズといったら「Donna Lee」”っていう感じで入れたと思うんですよね(笑)。

Yasさんのためのアテ書きみたいな感じですね(笑)。

 本当はどういう意図で入れたかはわからないですけど、ちゃんとハマっているのが凄いですよね。前作の「Neo Thangka」もランが作った曲なんですけど、それにも『ザ・シンプソンズ』のテーマ曲(ザ・シンプソンズ・テーマ)が引用されてたりするんですよ。

コリン・クックは唯一無二のフレーズを持っている人

前作『The Resonance Project』でもマテウス・アサトやフェリックス・マーティンが参加していましたが、今作もゲストが多く参加しています。特にギタリストについて聞かせてもらいたいのですが、まず「Dawn」に参加しているマテウス・アサトはどんなギタリストですか?

 MIで一緒で、在学中からネットでバズっていたんですよね。当時から仲が良くて、彼のバンドにベースに参加したのも、友達だからっていう感じで。ギタリストとしては……凄いですよね。それこそ影響を受けた1人です。特にコピーをしたわけではないですけど、インスピレーションを受けています。

「Macrocosm」を一緒に作ったコリン・クックは?

 今はスタンリー・クラーク(b)のバンドでやっているギタリストですね。コリンはジャズ畑の人だけど、メシュガーとかメタルが大好きで。

コリンのインスタグラムは、以前だとジャズ系のものが多かったんですが、最近はかなりヘヴィなプレイをアップしていますよね。

 最近はメタルのほうがやりたいんだと思います(笑)。もともとメタルが好きで、ジャズにいった感じらしくて。彼はフレージングが凄いんですよね。唯一無二で自分のフレーズを持っている人で、彼と会う前と比べて、会ったあとでは俺のフレーズも絶対に良くなっている。

「Ad Astra」はジョシュア・デ・ラ・ヴィクトリアが参加しています。彼はどのようなプレイヤーですか?

 彼はマット・ガーストカ(アニマルズ・アズ・リーダーズ/d)とヴィクトリアっていうバンドをやっていて、たしかコリンの紹介で会ったんですよね。サムピングがめちゃくちゃうまいんですよ。それを教えてもらったりして。

 「Ad Astra」の途中にサムピングのフレーズがあって、そこをジョシュアに頼もうと思ったんです。でも、そこだけ弾いてもらうのもおかしいから、ソロとかも弾いてもらった感じですね。難しいリズムのうえで、良いメロディを音楽的に弾いてくれました。

Yas Nomura

パフォーマンスを大事にするようになれました

YasさんはHYDEさんのアメリカ・ツアーでサポートもしていますが、その経緯は?

 HYDEさんと一緒にやっているギタリストの方たちが参加できなくて探していたみたいで。NOCTURNAL BLOODLUSTのNatsu(d)さんが音楽学校の先輩で、俺を推薦してくれたんですよね。

 L’Arc〜en〜Cielは凄く好きで、音楽を始める前からめちゃくちゃ聴いていましたよ。ネトゲをやりながら、ラルクとJanne Da Arcしか入ってないプレイリストを延々と聴いてたり(笑)。

(笑)。小さい頃から聴いていたアーティストと一緒に演奏をして学んだことはありますか?

 エンターテイナーとして学ぶことが多かったですね。最初に“ギターを弾けるのはわかるけど、パフォーマンスはどう?”って聞かれて。パフォーマンスを見せるために、色んなアーティストのステージングを勉強しましたね。

 これまで音にばかりフォーカスしてきたので、魅せることへの意識が変わりました。ちゃんと弾くことは当然として、パフォーマンスを大事にするようになれましたね。

さて、今作の使用機材についても教えて下さい。

 「End of Time」、「Gem」、「Void」はJP7 KOA BFR。で、エキゾチックのXSCを「Macrocosm」のソロで弾いていて、「Prophecy」と「Ad Astra」のソロでシャーベルのガスリー・ゴーヴァン・モデルを使いました。あとはアイバニーズの8弦で弾いてます。

 アンプはレイニーのVC30をリードで使っていて、それ以外はSTL Tonesっていうプラグインですね。

今作でギタリストにおすすめの楽曲は?

 個人的に良かったと思うのは、「Prophecy」のソロですね。あとは「End of Time」のソロ。もろ(ジョン)ペトルーシで、それは狙ってやっているんですけど、あれはうまく楽曲にマッチしたなって思います。ギタリストとしては、「Gem」や「Void」はテクニックを詰め込もうって思ったので、弾きがいがありますね。

最後に今後の活動の展望を聞かせて下さい。

 とりあえずフュージョン系で自分のソロ・アルバムを作りたいとは思っています。あと、まだ言えないんですけど、新しいバンドも始まるんですよ。それはベーシストなんですけどね(笑)。2024年には始まっているのかな……? だから、今年中になんとかソロ作を作りたいですね。

Ernie Ball Music Man/JP7 BFR

Ernie Ball Music Man/JP7 BFR(前面)
Ernie Ball Music Man/JP7 BFR(背面)

Yasが渡米してすぐにギター・センターでオーダーしたジョン・ペトルーシ・モデル=JP7 BFR。購入当時が円高だったこともあり、現在よりもかなり安く入手できたそうだ。

ピエゾ・ピックアップを搭載しているのが特徴の1つだが、レコーディングでクリーン・サウンドを録る時に少しブレンドする程度の使用頻度。最新作では「End of Time」、「Gem」、「Void」のリード・プレイなどで起用された。

Effect Pedals

Effect Pedals

日本でのライブ用にアメリカから持参したエフェクター。左から接続順どおりに、Ibanez/TSV808(オーバードライブ)、Maxon/SD9(オーバードライブ)、J. Rockett Audio Designs/Allan Holdsworth Signature OD/Boost(オーバードライブ/ブースター)。

SD9単体でコンプ的に使うほか、歪ませる時はSD9とTSV808を組み合わせ、さらに歪みが欲しい時はAllan Holdsworth Signature OD/Boostのオーバードライブ・チャンネルを加える。また、以前までTSV808とSD9の順番が逆だったが、この接続順にすることで“ハイの抜けが良くなった”そうだ。

作品データ

The Resonance Project『Ad Astra』ジャケ写

Ad Astra
The Resonance Project

P-VINE/PCD-25358/2023年2月24日リリース

―Track List―

  1. Ad Astra (feat.Joshua De La Victoria)
  2. Gem (feat.Hadrien Feraud)
  3. Prophecy (feat.Aaron Janik)
  4. Void
  5. Macrocosm (feat.Colin Cook & Joey Izzo)
  6. Dawn (feat.Mateus Asato)
  7. Lux Aeterna
  8. End of Time (feat.Dino Jelusick)
  9. End of Time (Instrumental Version) [日本盤限定ボーナストラック]

―Guitarist―

Yas Nomura、マテウス・アサト、コリン・クック、ジョシュア・デ・ラ・ヴィクトリア